Select Language

イーサリアム(ETH)のPoS移行を促進するディフィカルティボムのリスクが高まる

イーサリアム(ETH)のPoS移行を促進するディフィカルティボムのリスクが高まる

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.08.09 00:32
イーサリアム(ETH)のPoS移行を促進するディフィカルティボムのリスクが高まる

update 2022.08.09 00:32

現在のイーサリアム(ETH)は、送金速度が低いという問題を抱えています。そこで、より効率的なブロックチェーンへの転換を目指して、ETH2.0の開発が進められています。ETH2.0はブロック生成方式としてPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用しているのが特徴で、省電力で高い送金能力が実現すると期待されています。

2022年、ETH2.0への完全移行が近づいてきました。しかし同時に、ディフィカルティボム問題も現実味を帯びてきています。すなわち、既に送金速度低下の兆候が出ています。

ディフィカルティボムとは

ディフィカルティボムとは、イーサリアムブロックチェーンのマイニング難易度を意図的に大幅上昇させるプログラムです。これが実行されるとマイニング難易度が徐々に高まり、ネットワークに参加するマイナーの収益を圧迫します。

現行のイーサリアムは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用しています。すなわち、マイニング難易度が上昇すると、ブロックを生成するための消費電力やコンピュータリソースが増加します。その結果、マイナーは利益を得づらくなります。マイニング難易度が極端に上昇すれば、あまりにコストが大きくなるため、誰もマイニングしなくなると想定されています。

この仕組みが採用された理由は、ETH2.0移行後に従来のETHを確実に停止させるためです。ディフィカルティボムが発動してマイニング難易度が極端に上昇すると、従来のETHでマイニングしてもコストが高すぎて損します。結果として、マイナーは全員ETH2.0に移行します。

point PoSに移行する必要性

イーサリアムは、手数料の高騰や取引の遅延などに苦しめられています。PoSへの移行は、その解決策のひとつだと考えられています。ETH2.0はPoSを採用しており、その送金能力は、現行の1秒あたり約15件から最大10万件にまで向上すると見込まれています。

開発の遅れとディフィカルティボム

しかし、イーサリアムは開発が期待通りに進んでいません。このため、ディフィカルティボムの発動も先送りされてきました。過去の先送りを振り返りますと、以下の通りです。ムーア・グレイシャー(Muir Glacier)アップグレードで、ディフィカルティボム発動を400万ブロック(およそ611日間)延期しました。また、アロー・グレイシャー(Arrow Glacier)アップグレードで2022年6月まで延期しました。

この先送りを実行するには、以下の手続きが必要です。すなわち、コミュニティに先送りを提案し、採用され、プログラムを作り、イーサリアムにそのプログラムを追加してハードフォークするという手続きです。時間も手間もかかりますし、ETH保有者に注意喚起しなければなりません。しかし、ETH2.0が公開される前にディフィカルティボムが本格的に実行されると、ブロックが作られなくなってETHの利用価値がなくなり、価格が暴落してしまいます。そこで、この先送り手続きは必須の作業です。

ちなみに、ハードフォークとは、ブロックチェーンを分岐させて新しいブロックチェーンを作ることを指します(下図)。従来の利用者全員が新しいブロックチェーンに移行すれば、古いブロックチェーンは機能を事実上停止します。

イーサリアムの歴史を振り返りますと、2015年にコミュニティが運営方針を巡って分裂し、イーサリアムクラシック(ETC)が誕生しました。ディフィカルティボムは、コミュニティの分裂を回避するのに役立ちます。

ハードフォークとディフィカルティボム
point ディフィカルティボムの存在意義

ディフィカルティボムの存在意義には、もう一点、「開発の最終期限を設定する」という意味もあります。期限があると、それに向けて開発活動が活発になります。期限がないと、いつまでたっても開発が完了しないという事態もあり得ます。

ETH2.0開発状況(2022年6月)

なお、2022年6月、イーサリアム開発者のティム・ベイコ氏は、アップグレード「マージ」の開発は2022年6月までに完了しないと発言しています。また、迅速に開発を進めなければ、再びディフィカルティボムを延期する必要があると伝えています。

一方、イーサリアム開発者のプレストン・ヴァン・ルーン氏は、もし全てが計画通りに上手く行った場合、2022年8月にマージが完了すると予想しています。その上で、ディフィカルティボムの予定を変更しなくても良いのなら、できるだけ早く開発完了を目指すべきだと言及しました。

point マージとは

マージとは、イーサリアムにおける5段階アップグレードのひとつです。ETH2.0のテストネットワーク「ビーコンチェーン」とメインブロックチェーンを統合して、PoSを本格稼働させることを目的としています。

ちなみに、マージの完了が2022年8月で、ディフィカルティボムの発動は2022年6月。すなわち、順調に開発が進んでも間に合いません。しかし、マイニング難易度は突然急上昇するのでなく、徐々に上昇します。よって、発動後まもなく開発が完了するなら、開発を優先するのが合理的な可能性があります。

ベイコ氏やルーン氏の発言から、マージの開発は遅れていることがわかります。当記事執筆時点(2022年6月)においてディフィカルティボムの延期は決まっておらず、開発の遅れが拡大すると、送金が困難になると考えられます。実際、既にイーサリアムの送金速度は徐々に遅くなっており、ツイッター等で話題になっています。

ETHの送金速度の推移

下のグラフは、1つのブロックを作るのに必要な時間を示したものです。一番右を見ますと、わずかに時間が伸びている様子が分かります。すなわち、送金速度が少し遅くなっています。これは、過去の送金遅延に比べて小さな動きです。しかし、放置すると所要時間が大幅に伸びることは明らかなため、わずかな動きでもユーザーは敏感になっています。

イーサリアムのブロック生成時間

画像引用:Etherscan

ETH2.0への移行は最終局面へ?

ETH2.0への移行は、最終局面を迎えています。そして、マージの開発とディフィカルティボムは、ETH価格に影響を与えます。そこで、ETHを保有している場合は、価格推移と併せてこれら2つの動向にも注目するのが良さそうです。また、イーサリアムの問題が大きくなると、イーサリアムキラーとして期待されている仮想通貨にも影響があるかもしれません。こちらも注目できます。


Date

作成日

2022.06.13

Update

最終更新

2022.08.09

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨USUALの将来性は?RWA活用のステーブルコインプロトコルを解説

仮想通貨USUALは、ステーブルコインプロトコル「Usual」のガバナンストークンです。Usualは、BlackRockなどからRWA(現実資産)を集約してステーブルコインを発行し、その収益をコミュニティに再分配するプロトコルとして注目を集めています。
update2024.11.20 20:00

Milton Marketsが2024年11月より最大100%分入金ボーナスを開催

Milton Marketsで期間限定の100%入金分ボーナスキャンペーンが開催されます。当記事では100%入金分ボーナスの概要や、注意点を中心に解説していきましょう。
update2024.11.20 19:30

スマホ版MT4のやさしい使い方ガイド~iPhone&Androidの基本操作~

この記事では、優先的に押さえておきたいMT4アプリの機能を5つのグループにまとめ、iPhone版とAndroid版での使い方を解説します。「基本操作を手っ取り早く確認したい!」という方はぜひご活用ください。
update2024.11.20 19:00

ZoomexがクリプトバトルZを開催!毎週開催の取引大会で現物USDTやボーナスを獲得

2024年11月1日、海外取引所のZoomex(ズーメックス)が、取引大会シリーズ「クリプトバトルZ」を開催しました。ラウンドごとの特典総額は3,480ドル相当です。当記事では、クリプトバトルZの詳細や参加方法、注意点を解説します。
update2024.11.15 20:00

ゴールドラッシュXMは本当に儲かるのか?ほぼ破綻リスクゼロのEAの実力は

ゴールドラッシュXMのランディングページで謳われている「1ヵ月で取引資金が2倍に」、「破綻リスクはほぼゼロ」という宣伝文句に違わぬ実力が備えられているのか、フォワードテスト・バックテストを実施して検証しました。
update2024.11.14 20:30

Titan FXがブラックフライデーキャンペーンを開催!取引でキャッシュバックが付与

Titan FXが、2024年11月25日(月)からブラックフライデーキャンペーンを開催します。今回のキャンペーンでは、FX通貨ペア銘柄またはゴールドを1ロット取引するごとに500円のキャッシュバックが付与されます。
update2024.11.14 20:00

XMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小!どのくらい狭くなったか検証

2024年10月25日にXMTradingが仮想通貨CFDのスプレッドを縮小しました。この記事では、BTCUSDとETHUSDのスプレッドの計測結果やほかのFX業者と比較した結果を解説します。
update2024.11.14 19:30

Milton Marketsが11月の1万円FXチャレンジとXリポストキャンペーンを開催!

Milton Marketsで、11月の1万円チャレンジが開催されます。この記事では、開催期間や上位入賞の条件、これまでの1万円チャレンジと変わった点などを解説します。
update2024.11.14 19:00

XMTradingがお歳暮プロモを開催!100%入金ボーナスを付与

海外FX業者のXMTradingが2024年10月15日から11月15日までお歳暮プロモを開催することを発表しました。キャンペーン期間中に対象口座へ入金すると、100%の入金ボーナスが付与されます。新規・既存ユーザーの両方が対象です。
update2024.11.12 19:30

Zoomexがあったか冬支度応援キャンペーンを開催!総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券がもらえる

Zoomex(ズーメックス)が、あったか冬支度応援キャンペーンを開催しました。各種条件をクリアすると、総額76万円相当のビットコインとAmazonギフト券を獲得できます。キャンペーン開催期間は、2024年11月19日〜11月25日までです。
update2024.11.07 19:30
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル