作成日
:2019.11.06
2021.08.31 15:29
英国・ロンドンの裁判所は11月6日、バークレイズ(Barclays)とシティグループ(Citigroup)、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of Scotland)、JPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)、UBSが関与した為替不正操作に関する審理を開始した。
2007年から2013年までの間に、グローバル大手銀行の5行は共謀して、FXスポット取引の買値と売値、スプレッドを不正操作したとして、年金基金やアセットマネージャー、ヘッジファンド、法人などから10億ポンド(13億ドル)規模の集団訴訟に直面している。各行の罰金額に関しては、同期間におけるロンドンでの取引高やポンド通貨ペア相場の不正操作による影響度合いが考慮される模様だ。また同訴訟とは別に、不正行為を働いた各行に対する告訴も行われる見込みである。
2019年6月に英国の競争審判所(Competition Appeal Tribunal)へ大手5行の不正を告訴する訴状を提出した米法律事務所Scott + Scottが、今回の訴訟を担当するという。同法律事務所は、2017年に23億ドルの和解金を得た集団訴訟事案を取り扱った実績を誇る。当訴訟に関しては、一つの事案に対して集団で告訴する米国で一般的な訴訟手法が用いられ、英国においても2015年以降同様の手法による裁判審理が行われているとのことである。
なお今回の訴訟は、EU反トラスト当局が為替不正操作を行った大手7行に対し、10.7億ユーロ(12億ドル)規模の制裁金を課してから数か月後に審理が開始される。裁判所による審理が長期化する可能性はあるものの、不正を働くインセンティブを無くす位の厳罰を科すことで、投資家にとって透明性の高い金融市場が形成されることを期待したい。
release date 2019.11.06
今回の為替不正操作以外にも、2012年に市場を大きく揺るがしたロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を巡る不正操作により、LIBORが2021年に廃止される見通しであるほか、2019年1月には韓国当局が相場操縦を行ったメガバンクに罰金を課すなど、世界を代表する大手金融機関による不正行為が後を絶たない。また、英国投資家が詐欺で2億ポンド喪失するなど、個人投資家をターゲットとした投資詐欺も多発している状況だ。未だ、規制強化を打ち出す当局と次々に巧妙な投資詐欺を行う犯罪者によるいたちごっこが続いているといえるであろう。このような市場環境下においては、ExnessがSumsubと提携し、充実したコンプライアンス体制の構築を図るほか、Gold-iがSteelEyeと提携し、コンプライアンス分野の新たなビジネス機会を模索するなど、レグテックを活用した画期的なソリューションの提供を行う金融サービスプロバイダーの動向に注目したい。
作成日
:2019.11.06
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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