作成日
:2019.09.04
2021.08.31 15:30
仮想通貨取引サービスを提供するPIEXGOのCEOであるCzhang Lin氏は、韓国政府の政策やプロジェクトが梃子となり、同国で仮想通貨がいち早く普及する可能性があることをメディアのインタビューで明かした。
2018年に韓国政府は国内でのICO(イニシャルコインオファリング)を禁止し、違法な資金調達手段として厳しく取り締まってきたが、時間経過と共に仮想通貨に対する見方が軟化しているという。最近、韓国政府は仮想通貨市場の発展を加速させるために、同国第2の都市である釜山の規制を緩和しており、金融、治安、観光などの幅広い分野に関連するブロックチェーン開発を促す動きを見せているようだ。韓国の人口は全世界の1%未満にも関わらず、ある調査では同国の仮想通貨取引量が全世界の30%を占め、国内のサラリーマンの約30%が仮想通貨を保有していることがわかっている。韓国の仮想通貨市場は拡大しており、規制が緩和される釜山には2021年までに2,500万人が移住するとも予想されている。
韓国では仮想通貨やブロックチェーン技術を利用したスマートシティプロジェクトが立ち上げられており、ソウル市でSコインと呼ばれる独自仮想通貨を発行する計画があるのに加え、釜山でも同様のプロジェクトが検討されている模様だ。このような政府発行の独自仮想通貨は様々なユースケースが想定できるが、Sコインは公共サービスや税金の支払い、世論調査に参加した市民へのインセンティブなど、より良い市民生活を支えるための基盤として利用されるという。これに関してLin氏はその地域の経済状況や生活習慣、価値観などの違いに適応するために、自治体毎に独自仮想通貨を発行すべきだとの意見を示している。
既に韓国は仮想通貨先進国のマルタやシンガポール、エストニア、スイスと肩を並べる位置まで来ているが、このような政府の後押しは仮想通貨分野における国際的な競争力を高めることになるだろう。グローバル市場ではJPモルガンチェースやFacebook(フェイスブック)、Microsoft(マイクロソフト)などの大手企業もその有用性に着目し、銀行送金や公共サービスに仮想通貨関連技術が利用され始めており、韓国政府もそれを追従する構えだ。韓国の行政機関である科学技術情報通信部(Ministry of Science and ICT)はオンライン投票、通関手続き、サプライチェーン管理、ロジスティクス、不動産、国際通信の分野にまたがるブロックチェーンを活用したパイロットプロジェクトを開始することを発表している。
シンガポールを拠点に韓国と中国にも進出するPIEXGOは、27種類を超える仮想通貨とそれを対象としたデリバティブ商品を取り扱っており、個人および機関投資家向けの取引サービスを展開している。その他にもDApp(分散型アプリケーション)開発のための資金調達やリソース獲得を目的としたIXO(取引所主導のオファリング)を提供し、仮想通貨市場の発展にも貢献しているという。CEOであるLin氏はFATFが仮想通貨市場の監視強化を提案したことから、国際的な規制の厳格化を懸念しているが、今後も韓国政府の動向には注目していきたい。
release date 2019.09.04
Sコインの発行に加えて、ソウル市はブロックチェーンベースの管理サービスの導入を予定しており、労使関係の健全化や公共サービスの改善など、テクノロジーを用いた総合的な市民生活の向上を目的とした試みを進めている。このような取り組みは韓国以外でも計画されており、例えば米国のネバダ州では、砂漠地帯に東京ドーム約5,800個分の広さにブロックチェーン技術を基礎としたハイテク都市を建設するプロジェクトが考案されているという。このプロジェクトを企画したBlockchains LLCは、既に土地を購入した上で関連企業や政府機関と覚書を交わしており、その完成までの道筋が現実的に見えてきている状況だ。一方、韓国では自治体が仮想通貨の発行を計画したりと、仮想通貨を実社会に組み込む流れが生まれているものの、今年8月には政府が仮想通貨市場への直接的な規制案を検討しているとの報道もあり、その方針が完全には定まっていないことがうかがえる。既に着手されているプロジェクトも存在するだけに、韓国政府はその対応を明確にするべきだと言えるだろう。
作成日
:2019.09.04
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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