作成日
:2019.08.09
2023.07.22 18:36
約8,300万ドル相当の7,074BTCが盗難されたBinance【以下、バイナンスと称す】のハッキング事件に関して、最近、犯人のウォレットアドレスから新たにいくつかの送金があったことが明らかになった。
5月上旬、バイナンスはハッキング被害を報告し、APIキーおよび2FA(2段階認証)コード、その他の個人情報を盗み取られたことを原因とし、ホットウォレットで管理する大量の顧客資金を不正流出させている。バイナンスはビットコインのロールバックを検討するなど、事件発生直後から原因解明に努めており、被害にあったユーザーに対しては、内部保険基金から全額補償することが決定しているが、盗難された資金は未だ回収できておらず、犯人のウォレット内に保有されたままの状況だ。ブロックチェーン分析を行うChainalysisによると、ハッカーのタイプは素早く資金を移動させる傾向があるAlpha型と世間の関心が薄れるのを待つBeta型に分類できるが、今回の犯人は後者に該当するという。
典型的なハッカーが盗み出した仮想通貨をマネーロンダリングによって現金化するには、複数回に分けて平均5,000回の送金が必要となるが、現在、バイナンスの資産を保有する犯人はその実行の第二段階に入った可能性がある。当初、バイナンスから盗み出された資金の大部分は21のアドレスに分散、加えてテストを目的に小額の資金が別の23のアドレスに送金され、その後、6つのアドレスにそれぞれ1,060.6BTC、別のアドレスに残りの707.1BTCが移動されたことが明らかとなっている。最近、この犯人は約7万ドル相当のビットコイン(Bitcoin)をKraken(クラーケン)に、約6,000ドル相当をHuobi(フォビ)やBitX.co、BTC-Alpha、CoinGate、BitPayなどに送金し、現金化の手段を探る動きに出ているようだ。
また、マネーロンダリングを試みることを目的に、犯人はこの6.5BTCをコインミキシングサービスであるChipMixerに送金している。調査会社のCoinfirmによると、同じコインミキシングサービスであるCrypto-Landの資金の流れを把握することは可能だが、現在、ChipMixerの新しいアドレスを利用されると追跡は困難になるという。このようなコインミキシングサービスは、匿名性を強化すると同時に執行機関の追跡を妨害する可能性があることから、違法なサービスに分類すべきだとの声が高まっているようだが、各国政府やバイナンスをはじめとする取引所はこの課題にどのように向き合っていくのか、今後の取り組みに期待したい。
release date 2019.08.09
仮想通貨の犯罪利用を促すことを理由に、多くのコインミキシングサービスが閉鎖に追い込まれているが、今でも世界には100を超えるサービスが存在し、ハッカーの主なマネーロンダリング手段として利用され続けている。例えば、仮想通貨ウォレットサービスを提供するGateHubで発生したリップルのハッキング事件においても、犯人はミキシングサービスを通じて仮想通貨の現金化に成功したという。ブロックチェーンに記録された送金パターンを分析することで、このようなコインミキシングサービスを通じた仮想通貨の匿名化を無効にすることもできるようだが、各国の捜査機関などでは未だ汎用的な技術とはなっていない。先月、ハッキング被害を受けたことを報告したビットポイントも警察組織と連携し、捜査を進めているものの、一部では既にマネーロンダリングが完了しているとの噂もあるようだ。対策として国際的な包囲網を構築してコインミキシングサービスの利用を制限することが望まれるだけに、今後は各国政府の連携が進むことに期待して状況を見守っていきたい。
作成日
:2019.08.09
最終更新
:2023.07.22
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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