作成日
:2019.08.07
2021.08.31 15:30
国際連合(United Nations)【以下、国連と称す】の報告によると、北朝鮮が大量破壊兵器の資金調達を目的に、世界各国から約20億ドル相当の仮想通貨および法定通貨を盗み出していることが明らかになった。
ある独立系調査機関が北朝鮮に対する国連安全保障理事会制裁委員会(UN Security Council Sanctions Committee on North Korea)に提出した報告書には、朝鮮人民軍総参謀部偵察局(Reconnaissance General Bureau)の指揮下にあるハッカーグループが、大量破壊兵器の購入資金を獲得するためにサイバー犯罪を行なっている旨が記載されているという。この報告書では北朝鮮がより高度な攻撃を仕掛けることで、金融機関や仮想通貨取引所から資金を盗み出していることが断定されている。特性上、追跡することが難しい仮想通貨を狙った犯罪は、政府の監視や規制が行き届いていないため、北朝鮮にとっては収入を得る格好の手段となっていたようだ。
また、この報告書には北朝鮮のハッカーグループが関与したとされる17か国で発生した35の事例が紹介されており、中でも銀行や取引所を利用してマネーロンダリングを行なっていることが指摘されている。今年初めにも北朝鮮は、韓国の取引所であるUpBit(アップビット)の顧客を狙ったフィッシング詐欺を主導したとして非難されると同時に、現在、総額5億3,400万ドルの被害を出したコインチェックのハッキング事件にも関与した疑いがかけられている状況だ。
北朝鮮のハッカーグループは先進的な新型のマルウェアを使用しており、業界全体の脅威となっていることから、米国務省(U.S. State Department)の広報担当者はサイバー攻撃への対策に動くべきだと言及している。加えて米当局は、これらのハッキングによる資金流出が弾道ミサイルおよび大量破壊兵器の資金源になっていると注意を促しているが、業界はどのように動くのか、今後の取り組みに注目していきたい。
release date 2019.08.07
日本のニュースメディアの報道によると、2018年度における北朝鮮の軍事予算は年間85億ドルを記録し、尚も拡大傾向にあることが明らかになっている。これにサイバー攻撃で得た20億ドルが加わると大幅な予算増加とはなるものの、大量破壊兵器を購入および運用するには莫大な資金が必要になるだろう。これまで北朝鮮は幾度となく弾道ミサイルを発射しているが、そのコストは1発あたり約200万ドルから、高性能のものにいたっては約8億ドルに達することがわかっており、同国の軍事予算における主要な支出となっていることがうかがえる。このような背景から北朝鮮は外貨を稼ぐ必要に駆られ、韓国や日本の取引所をターゲットにしたサイバー攻撃を幾度となく繰り返しているようだ。先日、一部サービス再開を発表したビットポイントも、先月の同取引所に対するハッキングが北朝鮮による犯行であった可能性を示唆し、業界に注意を促しているが、有効な対策を施すことができるのか、今後もその進捗を見守っていきたい。
作成日
:2019.08.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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