作成日
:2019.07.24
2021.08.31 15:30
2019年4月時点における最新の英国FXの日次平均取引高が、前回調査時点である半年前と比較して12%増の2兆8,580億ドルとなり、過去最高を更新したことが、英国の中央銀行であるイングランド銀行が公表した最新のFX市場レポート内で明らかになった。
同レポートは、英国FX市場で取引する大手銀行28行が参加した調査に基づくものである。2019年4月時点の日次平均取引高は、2004年の調査開始以降、過去最高記録であった2018年4月の2兆7,200億ドルを大きく上回り、英国FX市場の飛躍的な拡大が示される結果となった。これにより英国はグローバルFX取引高の約40%を占め、世界最大の通貨取引ハブとしての地位を維持すると共に、日次売買代金においては、強力なライバルであるニューヨーク市場の3倍もの取引量を誇ることとなった。なお、ニューヨーク為替市場委員会(Foreign Exchange Committee)が公表した北米の有力FXディーラー及び銀行の取引高サーベイによると、2019年4月時点のFX店頭取引(OTC)の日次平均取引高は、前年比18%減の8,109億ドルに縮小しており、より一層英国のFX取引高の好調さが際立つ結果になったといえるだろう。
また同レポートによると、市場ボラティリティの上昇を要因として、全ての主要通貨ペアの取引高が増加したとのことだ。中でも最も取引高が大きいユーロ/米ドルとポンド/米ドルの日次売買代金は、2018年10月と比較してそれぞれ18%増の8,310億ドル、16%増の3,760億ドルとなった。加えて、米ドル/中国人民元の売買代金は6か月連続で増加し、過去最高の783億ドルを記録した。これは全通貨ペアのうち7番目の取引量であり、ユーロ/ポンドを上回る結果となっている。更に、レポート内では通貨ペア別の取引高シェアも公表されており、ユーロ/米ドルとポンド/米ドルが、2018年10月からそれぞれ27.7%増の29.1%、12.6%増の13.1%のシェアを握っているとのことだ。
ブレグジットに揺れる英国ではポンド取引が低迷していたが、今年に入りブレグジット交渉が決着するとの期待感から回復傾向が見られていた。しかしながら、離脱協議の延長決定によって先行きが不透明となり、FCAが金融パスポート継続措置の申請期間を延長するなど、英国市場の混乱が続いている。乱高下相場による高ボラティリティを背景として、大きな値動きを選好する投資家にとっては良好な市場環境が続くことだろう。
release date 2019.07.24
今月23日、英国の議会与党である保守党は党首選でボリス・ジョンソン前外相が勝利したことを発表した。ジョンソン氏はかねてよりEUからの離脱強硬派として知られており、合意成立の有無にかかわらず今年10月末にEUを離脱する方針を支持すると見られていることから、ハードブレクジットが発生する可能性がより一層高まっている。ポンドは英国でEU離脱の是非を問う国民投票が行われた2016年6月以降、対ドルでの下落率が既に20%近くに達している。しかし英国は引き続き経済、内政、外交など多くの面で圧力にさらされており、今後更にもう一段大幅な下げに見舞われるのではないかという不安が市場では漂っている。このような市場背景の元、ポンドを巡る市場ボラティリティの上昇が続いており、一部の投資家を賑わせる結果となっている。世界的にFX取引量の減少が続き、市場のボラティリティが低下する流れの中、ブレクジットという大イベントによりポンドのボラティリティが上昇することの市場へのインパクトは大きく、今後も短期的な利益を狙う投資家の注目を集めていくことになりそうだ。
作成日
:2019.07.24
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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