作成日
:2019.07.09
2021.08.31 15:26
7月5日に発表された米雇用統計が市場予想を上回る強い数字であったことを受け、金先物8月限は売りに押され、9日現在1オンス=1,400ドルを僅かに下回る水準で推移している。
10日と11日の両日には、ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が半年に一度行う議会証言を控えており、金市場の次のカタリストを探るべくトレーダーの注目が集まっている状況だ。強い米雇用統計をきっかけに、7月30日、31日に開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)
で50ベーシスポイント(bp)利下げするとの予想は急速にしぼみ、25bpの利下げに留まるとの見通しが市場の大勢を占めている。足元ではFRBの利下げ幅が最大の焦点となる中、金市場のトレーダーの先行き見通しも分かれており、London Capital Groupのシニア・マーケットアナリストであるIpek Ozkardeskaya氏は、仮にFRBがハト派姿勢を示さなければ、金市場は大きな調整を余儀なくされる可能性があると指摘し、5月から7月にかけて形成した上昇トレンドのサポート水準として、フィボナッチ・トレースメント(テクニカル指標の1つ)の38.2%戻しである1オンス=1,375ドルを挙げている。また良好な米雇用統計を受け、FRBが利下げを行わない懸念も浮上しており、これまでの金価格の上昇トレンドが崩れると予想するトレーダーも出てきている状況だ。一方で、RBCウェルスマネジメントのマネージングディレクターを務めるGeorge Gero氏は、世界的な景気後退懸念や混沌とする英国のブレグジットに揺れるEU圏内外の動向、米国の圧力によるイランのSWIFT利用停止措置を始めとした両国の対立鮮明化による中東の地政学リスクなど、株式市場が大きく崩れると予想される中で、安全資産である金が買われる条件は十分揃っているとコメントしている。
金価格はFRBによる利下げや金保有コストの低下期待を背景に上昇基調を辿ってきており、年初来で9%超値上がりし、6月には6年ぶりの高値をつけていた。FOMCを前に行われる10日、11日の議会証言にてパウエルFRB議長がハト派姿勢を示すか否かが、金市場の今後のトレンドを占うイベントとして注目を集めているといえよう。
release date 2019.07.09
近年、金価格の上昇が続いており、安全資産の代表格とも呼ばれる金に対する市場の注目が高まっている。本来安全資産である金は、株価の上昇局面では売られ、株が下落する際に買われることが通例となっているが、最近の金価格上昇の注目すべき点として株も金も上昇傾向にある点が挙げられる。現在の市場では、アベノミクスに代表される各国の大規模な金融緩和からカネ余りが継続しており、2018年では数多くの国で株価が史上最高値を更新している。株以外にも原油や金属をはじめ、コモディティ価格全般が上昇し、さらにブレクジットに代表される地政学的リスクが高まっていることから、投資家の間で漠然とした不安が市場に溢れ、安全資産としての金の需要を下支えしていると考えられている。一方で、昨年末に米国株式市場が大幅に下落した際、ビットコイン価格が上昇した事に代表されるように、従来金が担ってきた投資対象としての地位を仮想通貨に奪われつつある状況となっている。金相場の変動要因が益々複雑化する中で、FRBの金利政策発表後市場がどのような動きを見せるのか注視していきたい。
作成日
:2019.07.09
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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