作成日
:2019.07.05
2022.11.10 13:06
KYC(本人確認)と詐欺調査関連のレグテック(フィンテックを活用して規制対応に関する課題解決を図る技術)ソリューションを提供するHooYu(本社:8 Quayside Lodge William Morris Way, Fulham, London SW6 2UZ
)のコミュニケーション・マーケティング部門マネージャーを務めるSimon Kelman氏は、FX・CFDブローカーがマネーロンダリングや詐欺問題に直面する中、各種規制に対応した効果的なKYCプロセスを実現させるべくレグテックの活用を推奨している。デンマークとドイツそれぞれにおいて最大の銀行であるダンスケ銀行とドイツ銀行にマネーロンダリング疑惑が浮上するなど、金融業界はマネーロンダリング及びテロ資金供与対策という緊喫の課題に直面している。中でもFX・CFDブローカーに大きく立ちはだかる2大問題の対策として、KYCプロセスの導入が必須となっている状況だ。また、ブローカーにとってはKYCプロセスを設けることで、規制に対応するだけでなく、顧客獲得機会の最大化と効率的なリスク・マネージメントの実践を期待することができる。Kelman氏は、KYCプロセスがマネーロンダリング及びテロ資金供与対策として有効であり、電子メールを利用した手続きや社内カスタマーサービス部門に人員を割くことなく、同プロセスを自動化させることで、カスタマーエクスペリエンスの向上やKYC及び顧客獲得時間を飛躍的に短縮させることが可能になると述べている。
最近では英国賭博委員会(UK Gambling Commission, UKGC)が、本人確認をとるタイミングを従来の72時間以内から初回入金時へと変更を行った。確認方法は以前と変わりないものの、カスタマーエクスペリエンスの向上に繋がるシンプルで合理化された手法を採用している模様だ。また2019年初頭に、キプロスの金融監督当局であるキプロス証券取引委員会(CySEC)もマネーロンダリング対策に焦点を当てた指令を定めている。Kelman氏はこれらの動向を踏まえた上で、FXブローカーは現在様々なKYC関連テクノロジーを利用でき、今後打ち出される見込みの全ての規制に対し建設的な提案が可能になることを認識する必要があるという。なお、その好事例として、プリペイドカード業界は既にKYC関連テクノロジーを導入しており、第5次欧州マネーロンダリング指令(the fifth EU Anti-Money Laundering Directive)が施行される際には規制当局に対し様々な提案やロビー活動を行ったことを挙げている。
2018年は欧州を拠点とするブローカーにとって、レバレッジ制限やゼロカットシステム、バイナリーオプション取引の禁止など様々な規制に対応せざるを得ない年になった。Kelman氏は、キプロスが2020年1月までに第5次マネーロンダリング指令を自国の法律に組み込む必要があることを鑑み、FX・CFDブローカーは今すぐにでもKYCテクノロジーの活用に向けた調査を始めるべきだと助言している。それと同時にID文書確認や顔認証、デジタルフットプリント(インターネットを使用した時に残る記録)分析などを活用してリアルタイムに偽造を発見し、より確度の高いKYCプロセスを構築すべくHooYuのようなレグテック専門企業にKYC作業をアウトソースすることを強く推奨している。市場環境がめまぐるしく変化する中、今後のブローカー各社の動きに注目していきたい。
release date 2019.07.05
KYC関連の規制策の多くは、どの程度本人性の確認を求めるか基準が曖昧となっているが、英国のThe Law SocietyやJoint Money Laundering Steering Groupなど一部の規制当局や業界団体は、企業が取り組むアンチマネーロンダリング対策基準として明確な指針を示しており、FXブローカーに対しても統一した基準を設けた業界指針が打ち出されることを望んでいるようだ。規制強化の動きを受けて、ブローカー各社はCySECの新規制策への対応が求められている他、今後、効率的なKYCプロセスを導入するためにも、ブローカーにとってレグテックの活用が欠かせない状況になりそうだ。一方、5月にキプロスの金融監督当局であるCySECは専門スタッフを3倍に拡充して効果的な規制やモニタリング体制を構築することを発表しているが、監視体制の強化により、より健全性が保たれた金融市場が形成されることに期待したい。
作成日
:2019.07.05
最終更新
:2022.11.10
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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