作成日
:2019.07.02
2022.01.26 13:04
英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】は1日、個人投資家保護を目的としたCFD取引のレバレッジ制限及びマーケティング規制策の最終版を公表した。
FCAが公表したCFD規制策の最終版においては、欧州証券市場監督局(European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が2018年8月に導入したCFD規制策と同様に、アセットクラスに応じて最大レバレッジを2倍から30倍に制限する策を8月1日から適用させる方針だ。また、ブローカーは顧客の証拠金維持率が50%を下回った場合はロスカットの対象とし、預入証拠金以上に損失が拡大することを防ぐゼロカットシステムを導入する必要がある。更に、自社サイト内にリスク警告や顧客の損失割合の掲載が求められる他、金銭的であるか否かを問わず全てのインセンティブ供与が禁止されることになる。なお、ブレグジットの影響を鑑み、2019年4月にFCAは最終版となるCFD規制策の発表を延期していたが、今回の公表を受け英国当局のCFD規制方針も明確になったといえよう。加えて、ESMAが規制対象から除外している証券化商品(CFD-Like Options)に関しても、CFD同様の規制策を9月1日から適用させる意向であり、EEA(European Economic Area、欧州経済地域)諸国を拠点とする企業は、英国の個人投資家に対する該当の証券化商品の提供を禁止されることになる。
CFD規制策の最終版の公表に際し、FCAのストラテジー・コンペティション部門でエグゼクティブディレクターを務めるChristopher Woolard氏は、以下のようにコメントしている。
我々は、複数の企業が個人投資家の意向や実情に合致しないハイレバレッジのCFDを積極的に販売することにより、多くの投資家が損失を被っているという事実を確認した上で規制を行っております。EUの規制策は一時的なものでありますが、我々は恒久的に個人投資家を保護していく考えであります。
Christopher Woolard, executive director of strategy and competition at FCA - FCAより引用
伊国家証券委員会がCFD規制策を恒久化した他、ESMAが中東欧3か国の新規制策に同意するなど、欧州全域で規制強化の波が押し寄せている。欧州地域でサービス展開するブローカーにとっては、レグテック(フィンテックを活用して規制対応に関する課題解決を図る技術)の利用も含め、様々な規制に対応する社内体制の構築が急務になっているといえそうだ。
release date 2019.07.02
CFD取引は、1つの口座で現物株や指数、外国為替、コモディティ等をほぼ24時間取引することができるほか、注文を受けたCFD業者は他の金融機関でのカバー取引によってリスク回避を行うため、トレーダーは通常のオプション取引におけるプレミアム価格等を考慮する必要がなく、シンプルで利便性の高いデリバティブ商品であると言える。しかしながら、相対取引の利益相反を回避するカバー取引はCFD業者の判断に委ねられており、この仕組みを悪用し、カバー取引で損失が出たと見せかけ預託証拠金を騙し取る詐欺行為も多く報告されているようだ。規制強化によって市場の健全化が推し進められる一方、投資環境は縮小傾向にあり、ESMAやFCA等の規制当局はオフショア市場へ流れた投資家を呼び戻すために並行して規制緩和も行っているが、依然として魅力的な投資環境とは言えない。今回CFD規制策の最終版が具体的に公表されたことで、今後活発になることが予想されるブローカー各社の顧客維持策にも注目していきたい。
作成日
:2019.07.02
最終更新
:2022.01.26
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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