作成日
:2019.07.02
2021.08.31 15:26
イスラエル・テルアビブを拠点とするフィンテック企業であるLeverate Financial Services(本社:Derech Sheshet Hayamim 30 Bnei Brak
)【以下、Leverateと称す】のサクセス部門ヘッドを務めるPablo Schvartzman氏は、IB(イントロデューシング・ブローカー)とホワイトラベルそれぞれの特徴を示したうえで、将来的に独自ブランドを構築し包括的なサービスの提供を行うブローカーに転身するビジョンを持つ場合、ホワイトラベルの方がより大きな可能性を秘めているとの見解を明らかにした。新たにFXブローカレッジ業界に参入する際には、IBとして従事するか、もしくは独自のホワイトラベルブランドを立ち上げるという2つのビジネスモデルが挙げられる。基本的にIBとホワイトラベルは似通ったビジネスモデルを採用し、共に既存ブローカーの取引プラットフォームでトレードを行う顧客の獲得・維持を最終目標とする他、顧客取引が増加するほど収益が拡大する仕組みである。既存ブローカーはビジネス拡大を図る上で、他企業とのパートナーシップを締結することが有力な選択肢となり、IBやホワイトラベルにとっては既存ブローカーに対し、短期間で効率的に顧客と収益の拡大機会を提供することが期待されている状況だ。
IBはパートナーであるブローカーに対し顧客を紹介するエージェントとしての役割を担う。顧客が提携ブローカーの取引プラットフォーム上で口座開設するサポートをすることで、紹介した顧客ごとに固定報酬を受け取ることができ、電子メールやマーケティングキャンペーン、IBが運営するサイト上のバナー広告、特別プロモーションなど様々な手法が用いられる。通常、ブローカーがIBに対し、新規顧客の紹介履歴を把握するための専用IDリンクを付与すると共に、様々なプロモーションツールを提供することで積極的に顧客獲得を図ることが可能だ。経験豊富なIBは提携ブローカー用の独自マーケティングキャンペーンを企画し、顧客獲得・維持の管理も行っているようである。IBの運営は一般的なブローカー経営よりも業務運営コストが低く、且つテクノロジーや決済サービスプロバイダー(Payment Services Provider)【以下、PSPと称す】を要しないことから、トレードに関心を持つ多数の顧客を抱えるマネー・マネージャーや投資顧問業者、金融関連サイトもしくはフォーラムの運営業者、成功を収めている個人投資家がFXブローカレッジ業界に参入する上で効果的なビジネスモデルの一つである。しかしながら、Schvartzman氏はIBが手数料を得るために既存ブローカーに依存しており、ブランドアイデンティティや独自インフラを構築できないため、FX業界で大きなビジョンを描く場合には理想的なビジネスモデルではないと指摘している。
一方でホワイトラベルは、独自のリスク・マネージメントやPSP、コールセンター、顧客サポート体制を構築し、包括的なブローカレッジサービスを提供している。また、顧客取引と報酬モデル、バックオフィス機能付き取引プラットフォームのリース契約もしくは独自ブランドでのサービス展開などに関して、既存ブローカーとの契約に柔軟性を持たせることが可能であり、スプレッドや手数料など取引システムにおいても独自性を発揮することができる。更に、自社の会社ロゴをつけた取引プラットフォームを利用できることに加え、バックオフィス機能や取引ツールなどのサポートを受けられる一方で、規制を遵守したレポーティング対応等は提携ブローカーが担当するため管理業務負担を軽減するなど様々なメリットが期待できる。注文執行に関しては、既存ブローカーが取り仕切ることになるが、多大な労力をかけずFXブローカレッジサービスを始めることができるといえよう。
Schvartzman氏は、既存ブローカーの有する様々な機能を利用したホワイトラベルブランドの立ち上げは、FXブローカレッジ業界に参入する効率的な方法であり、独自ブランドの構築や包括的なブローカレッジサービスを提供する独立したブローカー経営を実践できる可能性も大いにあるとコメントしている。また、Leverateが提供するホワイトラベルパッケージであるLXLiteを利用することで、銀行口座や決済サービス機能を自前で備える必要がなくなることに加え、Leverateの専門家チームのサポートを受けながら、ブローカーはCySECの新規制策に対応した独自ブランドのブローカレッジサービスを提供することが可能になるという。
自社が採用するビジネスモデルの最終決定には、初期投資金額やリスク・マネージメント、ビジョンといった基準を検討することとなる。IBが比較的容易にブローカレッジ業務を開始できる一方で、ブローカーとして独自ブランドを構築し包括的なサービスの提供を行うビジョンを持つ場合にはホワイトラベルを選択することになるだろう。今年の初めにはAdvanced MarketsとFortexがパートナー契約を締結したほか、Fullerton MarketsとBeGoldがパートナー契約を締結するなど、ブローカーによるホワイトラベルパッケージの導入が多く発表されていることからも、LeverateのLXLiteなどのレグテックソリューションを有効活用することが、規制に遵守した効率的な業務運営を遂行する上で効果的な選択肢の一つといえそうだ。
release date 2019.07.02
FX業界における過当競争の結果、取引のスプレッド幅が狭まる動きの中、IBの受け取る報酬もそれに比例して徐々に減少する傾向にあるようだ。またさらに、最近では各国の金融監督当局の規制が強まり、IBとしての活動に規制が設けられる動きも見られており、こうした背景を受けて、従来IBとして活動してきた事業者がホワイトラベルへと業態を変える動きが活発化している。ホワイトラベルは自らがトレーダーとの契約当事者となることから、IBに比べてより自由に取引条件やスプレッドをコントロールでき、収益幅も大きいため、効率的なビジネスモデルとして注目を集めている。昨今のFXブローカーのトレンドとして、顧客層を明確にし、ターゲティング化する動きが活発となっており、GBE Brokersが新ブランドdiscountFXを始動した事に代表されるように、コールセンターなどのプロフェッショナル顧客が必要としないサービスを削減することにより、割安でより高品質な取引環境を提供するなど、顧客の求めるサービス内容を忠実に反映することが重要視されている。こうした市場の要請にフレキシブルに対応する手段としてホワイトラベルが更に普及し、市場の活性化が行われる事に期待したい。
作成日
:2019.07.02
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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