作成日
:2019.04.04
2021.08.31 15:26
先日、米国証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、仮想通貨を発行する企業に向けた新しいガイダンスを公開した。
SECによると、このガイダンスは、どのようなケースで仮想通貨がセキュリティートークンに分類されるかを概説するものだという。SECのディレクターであるWilliam Hinman氏は、FinHub(フィンテック関連部門)の責任者のValerie Szczepanik氏と、コミッショナーのHester Peirce氏を含めたメンバーで、昨年11月からこのガイダンスの製作を開始しており、実に6ヶ月もの期間を要し、完成まで漕ぎ着けた。このガイダンスには、証券法の適応範囲内となる例とそうでない例の両方が容易な英語表現で記載されていることから、企業が法規制を理解するための手助けとなることが予想できる。
SECはガイダンスの中で、企業が発行する仮想通貨が、証券として取り扱われるべきかを自己診断するフレームワークを提供し、ハウェイテストと呼ばれる判断基準に従った具体的な質問を示している。その中には、利益が他者の行いに依存するか、利益が発生する可能性の有無、ネットワークの完成度、仮想通貨の用途、販売価格と市場価格の相関性、ネットワークの中核となる存在の有無など、複数の要因について言及されているようだ。加えてSECは、現時点で既に販売が実施された仮想通貨の取り扱いにも触れており、どのような状況下で再評価やSECへの登録を行うべきかの基準も公開している。
今回SECが発行したガイダンスは、仮想通貨の分類を明確にするものではあるが、ブローカー・ディーラ―業を行う証券会社向けの仮想通貨を対象としたカストディ業務に関しては触れていない。特に問題となっているのは、証券会社が仮想通貨のカストディ業務で、特定のウォレットに保有する仮想通貨を容易に確認できる一方、アクセス権限を持たない他者にそれを証明することは難しく、従来の金融資産と比べると透明性を保つことが難しいという。
このことについて、Szczepanik氏は、今年3月に開催されたD.C. Blockchain Summitのイベントで以下のようにコメントしている。
資産を保有していることを示す必要がありますが、仮想通貨においてそれを証明するのは困難かもしれません。仮想通貨は秘密鍵を持つ人に管理されているため、反証を挙げることは難しいといえます。
Valerie Szczepanik, head of FinHub - Twitterより引用
Peirce氏は今後のSECの取り組みについて、より仮想通貨の取り扱いが明確になるような活動を委員会レベルで行いたいと述べており、これら未解決の問題にも、アプローチすることが期待されている。
release date 2019.04.04
既存の金融法での規制を試みる以上、セキュリティトークンの線引きは非常に重要だといえるが、プロジェクトの特性や想定されるユーズケースの多様化によって、仮想通貨の定義は、徐々に複雑化しているようだ。大抵のものは、セキュリティトークンとユーティリティートークンに分類することが可能だが、最近では、どちらとも取れるような仮想通貨も発行されているという。例えば、石油や金、不動産、その他のコモディティ、または絵画などのコレクタブルをトークン化した仮想通貨は、証券の定義に当てはまらない部分が多いが、便宜上、セキュリティトークンとして認識されている。これらは、本来、トークナイズドアセットと呼ばれ、従来の管理や取引方法から脱却した利便性の高い資産形態として、ブロックチェーン上での利用が進んでいるという。既存の金融市場に従えば、米商品先物取引委員会(Commodities and Futures Trading Commission)の規制範疇となるが、今の所特に目立った動きはなく、取り扱いに関して不明確な状態が続いているようだ。
作成日
:2019.04.04
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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