作成日
:2019.04.01
2021.08.31 15:26
韓国を代表する仮想通貨取引所であるBithumb【以下、ビッサムと称す】が、最近のハッキング攻撃により、1,900万ドル相当の仮想通貨を失ったことがTwitterの投稿を通して明らかになった。
先月30日の報告によると、ビッサムは、3月29日の10時15分ごろ、資金の異常な引き出しを検出し、同取引所の仮想通貨が盗難にあっていることが発覚したという。ビッサムは、盗難された資金が全て取引所のものだと主張し、コールドウォレットに保有される顧客資産には、何の影響もないことを伝えた。ハッキングによる被害額の詳細は明かされていないものの、複数のブロックチェーンアナリストの報告によると、300万通貨(1,270万ドル相当)以上のイオス(EOS)と2,000万通貨(620万ドル相当)のリップル(Ripple)が、取引所のホットウォレットから外部へ送金されているとのことだ。
今回のハッキング事件では、ビッサムがコールドウォレットでの不審な動きを検出した際、直ちに入出金をブロックしたことを評価する肯定的な見方ができる一方で、事件発生において組織内部の人間が原因となったことが指摘されている。これに関してビッサムは、外部のセキュリティに注力するあまり、内部での承認作業やスタッフの管理などがおろそかになっていたことを認めている。現在盗難にあった仮想通貨は他の取引所へ送金されており、ビッサムはこれらの取引所に捜査の協力を求めているという。
今回、ビッサムにおいて過去12か月で2回目のハッキング被害となり、3,000万ドル(その後、1,400万ドル分を取り戻したとされる)相当の仮想通貨を失った前回の被害と合わせると、甚大な損失を計上することになる。世界の仮想通貨市場全体では、ニュージーランドのCryptopiaとシンガポールのDragonEXに続く、3件目の事件となったが、仮想通貨コミュニティは、これら事件の解決に向けた迅速な動きを求めているだろう。
release date 2019.04.01
先日、全体の50%にあたる150名の従業員をビッサムがリストラすることが報道されたが、今回のハッキングによる巨額の損失は、この流れに拍車をかける決定的な一打となるかもしれない。これまで、度重なるハッキング被害を受けたビッサムは、およそ4,000万ドルを顧客への補償に充てていると言われており、これが経営を圧迫する大きな要因となっているようだ。実際にハッキングによってサービス停止に追い込まれたケースも珍しくないだけに、コミュニティやユーザーは、ビッサムの事業の継続性に不安を募らせているだろう。日本ではコインチェックやZaifがハッキング被害を受け、似たような状況に追い込まれたが、既存の大手金融関連企業が資金を投入したことで、これらの取引所は難を逃れている。韓国では、メッセンジャーアプリのカカオトークを開発するカカオグループやその他大手IT企業が仮想通貨業界へ進出しているため、日本と同じく恵まれた環境にあると考えられるが、競争が激化する市場でのビッサムの復活は、決して容易ではないと言えるだろう。
作成日
:2019.04.01
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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