作成日
:2019.03.04
2021.08.31 15:27
2019年10月から11月ごろに予定されているマネーロンダリングに関する金融活動作業部会【以下、FATFと称す】の第4次対日審査に向けて、日本の金融庁が金融業界全体のマネーロンダリング対策強化に取り組んでいるようだ。
FATFは、マネーロンダリングの国際協調を進めるために設立された政府機関で、FATFによる監査は日本では2008年以来およそ11年ぶりの実施となる。前回のFATFによる第3次対日審査では、日本は27カ国中18位という低水準な結果に終わっており、特に銀行を含む金融機関全体のAML(マネーロンダリング対策)およびCFT(テロ資金供与対策)では、49項目中25項目において要改善の評価を受けている。FATFの評価は金融機関の国際取引にも影響が及ぶ可能性があるため、金融庁は犯罪収益移転防止法を2011年と2014年に2度改正し
、法整備に努めているという。しかしながら、2017年には、愛媛銀行が関与した数億円規模のマネーロンダリングの疑いがある海外送金が見過ごさられるなど、改善の余地もまだまだ存在するのも事実であり、特に人員規模も小さく、法令遵守に対する意識も比較的薄い地方銀行は、システムへの投資や金融リテラシーについて大幅な改善が求められる場合が多いようだ。これまで既に21カ国が第4次審査を終えているが、合格の基準に達したのは英国やイタリアなどわずか5カ国のみだという。前回芳しくない結果に終わった日本は、今回も合格基準に満たないことが予測されており、国内最大手の三菱UFJ銀行がマネーロンダリング対策が不十分だとして、先月、米通貨監督庁から重大な警告を受けた例からもその厳しさは伺える。ちなみに米国自体も第4次審査で合格に届いていないものの、日本の水準はそれよりもやや劣るレベルにあると見られている。
FATFの評価対象となる金融機関は、銀行、証券会社、資金移動業社、保険会社、資産運用会社が主とされていたが、第4次審査からは、仮想通貨取引所が新しく対象に加わるという。仮想通貨取引所は、重点分野としても挙げられているため、良い評価を得ることができれば、日本の仮想通貨市場の安全性を世界にアピールするチャンスとなることが考えられる。日本の仮想通貨取引所には、マネックスグループに買収されたコインチェックやフィスコグループ傘下のZaif、SBIホールディングス子会社のSBIバーチャルカレンシーズなど、大手金融会社と資本関係にある企業も存在するが、金融庁の懸念は、こうした企業以外のリソース不足が懸念される小規模な取引所に向けられていると言えるだろう。
今後は、第4次対日審査に向けて、自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)を中心に仮想通貨取引所の規制強化が進んでいくと予想される。現在の取り決めでは、ライセンスを有さない取引所や海外の取引所は、日本の居住者を対象にした営業が許可されていないことから、金融庁は、国内企業やバイナンスを含む海外企業に警告書を度々発行している状況だという。これらの取引所の利用は、マネーロンダリングの温床となる可能性もあるため、徹底的な対策が課せられることが予想される。
release date 2019.03.04
金融メディアのウォール・ストリートジャーナルの調べによると、2016年からの2年間で46カ所の仮想通貨取引所と、少なくとも8,800万ドル相当の仮想通貨資金がマネーロンダリングに利用されていることが明らかとなった。加えて、2,500もの仮想通貨ウォレットを追跡調査した結果、資金の多くが複数のサービスに渡っていることが突き止められている。法定通貨に比べ、マネーロンダリングの規模自体は極めて小さいが、通貨としての特性特性や送金に適した環境を併せ持つことを考えるとそれでも十分に脅威だと言えるだろう。最近では、コインベースなどの大手取引所を中心に、KYC(顧客確認)プロセスの強化やブロックチェーン分析技術の導入などを進める流れが出来上がっており、仮想通貨業界も犯罪利用を排除する方向に動いていることが伺える。しかしながら、まだ業界のスタンダートとして根付いていないため、各社取り組み状況に格差がみられることは否めない。今後は、FATFのような取り組みを通して安全基準が均一化されることに期待したい。
作成日
:2019.03.04
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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