作成日
:2019.02.26
2021.08.31 15:27
2016年に大規模なハッキング被害を受けた大手仮想通貨取引所のBitfinex【以下、ビットフィネックスと称す】は、米国政府による一部資金の回収が成功し、盗難されていた仮想通貨の返還を受けたことを明らかにした。
2016年8月、ビットフィネックスはハッカーの攻撃によって、およそ7,200万ドル相当の12万BTC(Bitcoin)が盗難されていたが、今回、米国政府からその内約10万4,000ドルにあたる27.7BTCが返還されたという。これまで、ビットフィネックスは、被害者への補償として独自トークンであるBFXトークンを配布していたものの、2017年内に、1通貨あたり1ドルのレートでBFXトークンの買い戻しを完了し、BFXトークンの上場廃止と破棄を発表している。なお、BFXトークンはビットフィネックスの株式に交換することも可能となっていたため、この株式の保有者には、Recovery Right Tokenと呼ばれる独自トークンを発行したようだ。米国政府からビットフィネックスに返還された仮想通貨は、今後USDに変換され、Recovery Right Tokenを保有するユーザーへ支払われるという。
ビットフィネックスのCFO(Chief Financial Officer)であるGiancarlo Devasini氏は、今回の米国政府の動きについて以下のように述べている。
過去2年間、ビットフィネックスのハッキング事件の解決に向けて取り組んで参りましたが、今日、米国政府の協力によって明確な結果を得ることができました。これにより、絶えず支持してくださったユーザーの皆様に資金を返還できることを嬉しく思います。また、ハッキング事件の調査を行なった米国連邦政府機関の不断の努力と、責任ある取り組みに感謝しています。
Giancarlo Devasini, CFO of Bitfinex - Mediumより引用
ビットフィネックスのハッキング事件は、コインチェック、マウントゴックス、BitGrailに続く、仮想通貨史上で4番目の規模になる大きな被害となった。ビットフィネックスは、被害を受けた後も取引所の運営を継続することができた一方で、他の取引所は苦境に追い込まれる状況となった。先日金融庁から正式な承認を受けたコインチェックは、事件後提供するサービスや活動に制限が課せられ、BitGrailは未だ再開の目処が立っていない状況にある。なお、マウントゴックスに至っては、2014年に事業を停止している。
今後の取り組みについて、Devasini氏は、犯人や関与する人物の追跡を続けることで、最終的なハッキング事件の解決を目指すと述べている。事件の調査には、米国と欧州の法務機関が関与していると推測されるが、ビットフィネックスは、継続的に警察などの政府機関に情報提供を行いサポートする構えのようだ。
release date 2019.02.26
2012年に香港で設立されたビットフィネックスは、グローバル市場に進出して以来、各国での仮想通貨需要の高まりに後押しされる形で、取引量を伸ばすことに成功した。過去には、取引銀行との関係に問題が生じたことから、一時的にビットフィネックスで法定通貨の入金が制限されていたこともあり、コミュニティ内からは、存続を危ぶむ声が上がっていた。このような経緯があったにもかかわらず、今では日間取引量で全世界の50番目前後にランクインするなど、ビットフィネックスの運営は、問題なく継続できる水準にまで回復していることが伺える。昨年12月にビットフィネックスは、さらなる取引量の拡大を目的として、ジェミニドル(Gemini Dollar)やUSDコイン(USD Coin)などを含む4つのステーブルコインをリスティングしており、ステーブルコインの利用を促す新しい試みにも力を入れている模様だ。ビットフィネックスでは、元々米ドルが基軸通貨として採用されているだけに、米国内の仮想通貨トレーダーにとって重宝される存在となっており、今回のハッキング事件が収束に向かう動きを見せていることは、存続を望むユーザーにとって、朗報となったと言えるだろう。
作成日
:2019.02.26
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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