作成日
:2019.02.22
2021.08.31 15:27
先月、仮想通貨の先物取引に特化するプラットフォームの立ち上げを発表したCoinFLEXは、自社のウェブサイトの公開と併せて、世界初となる現物決済の仮想通貨先物取引サービスを近日中に開始することを明らかにした。
CoinFLEXによると、同社の先物取引サービスは、ステーブルコインのテザー(Tether)を基軸通貨として、ビットコイン(Bitcoin)やビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)、イーサリアム(Ethereum)との通貨ペアを対象に最大20倍のレバレッジでの取引を可能にするという。取引所側の手数料は0.03%で、保有する99%の資産はマルチシグ(鍵を分割することで取引承認に複数人の承認を必要とする技術)を採用したコールドストレージで管理されるようになっているようだ。
セーシェル共和国で設立されたCoinFLEXは、Coinfloor、Global Advisors、Alameda Research、Dragonfly Capital Partnersなどをはじめとする企業グループから出資を受け所有されており、現在では、Coinfloorの共同設立者でもあるMark Lamb氏がCoinFLEXのCEOを努め、香港を拠点に活動している。
CoinFLEXのサービスについてLamb氏は、一般の投資家にも開かれた存在になると語っており、仮想通貨の先物取引所に関して、資産額や居住地、銀行口座の有無などにかかわらず、誰でも口座を開設できる場所だと述べている。また、ほとんどの投資家が富裕層の個人かプロのトレーダーである必要がある伝統的な先物市場と比較して敷居が低いことに加え、ブローカー企業、先物取引業者、クリアリングハウスなど、多くの関連業者を介する従来の取引所とは異なり、仮想通貨の先物取引所では、より直接的な取引が可能になると説明している。
Lamb氏は、CoinFLEXの立ち上げについて、投機やリスクヘッジに利用される先物取引やオプション取引を提供することが、世界の投資市場へ与える影響は大きいと評価している。先物取引所として双璧をなすCMEグループとインターコンチネンタル取引所の時価総額が合わせて、わずか1,000億ドルであるものの、今後も拡大の余地があることを示している。時価総額で比較すると、米国トップ4社の銀行の時価総額は合計1兆ドルで、IT企業に至っては、単体でもそれと同等の時価総額に成長することもあるため、規模的にはまだまだだということが伺える。
なお、仮想通貨を対象とした現物決済の先物取引に照準を合わせているのはCoinFLEXだけではなく、他の取引所も同様のサービスの提供を検討しているようだ。特出すべきは、ニューヨーク証券取引所の親会社であるインターコンチネンタル取引所で、新しい仮想通貨先物プラットフォームであるBakktの開発を進めている。加えて、Eris Exchangeも同様の取り組みを行っており、競争が激化するのは必至だといえるだろう。
release date 2019.02.22
2017年にCBOEとCMEグループがビットコイン先物の取引サービスを開始したことで、仮想通貨の先物取引市場は、2018年8月に取引量がピークを迎えるまでの間、右肩上がりの成長を見せてきた。その後、仮想通貨取引が下火になったことも重なって、取引量は下降の一途を辿っており、2018年末までには取引量はピーク時の3割程度までに落ち込んでいる。この仮想通貨先物の需要減少は、単なる市場の調整だとも考えられるが、中には、デリバティブ商品としてのストラクチャに不安が残ることから普及が停滞しているとの説を唱える者も存在しているようだ。その点、インターコンチネンタル取引所が開発を進めるBakktや今回話題となったCoinFLEXは、現物の仮想通貨資産に裏付けられた先物契約を提供するため、商品としての透明性や安全性は飛躍的に向上するだろう。仮想通貨の先物取引サービスは、今では大口の投資家や機関投資家などには重宝される存在となっているだけに、新しいプラットフォームの参入によって、再び活性化することが望まれる。
作成日
:2019.02.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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