作成日
:2019.02.21
2022.11.10 13:36
欧州の金融業界では、株式取引手数料を無料とするサービスが、新たなビジネス機会を生み出すものと期待が高まっている。
既に米国においては、株式や仮想通貨などの取引手数料を無料とするトレーディングアプリケーションの開発を行うRobinhoodが提供するモバイルアプリの利用が、個人投資家の間で人気を博している。一方で欧州は、複雑な市場構造や革新的なサービスを提供する企業が出現してこなかったこともあり、これまでにこのようなトレンドは巻き起こっていない。ただし足元では、そのような市場環境を一変させるべく、欧州においてもBUX(本社:Spuistraat 114-b 1012VA Amsterdam Netherlands
)やFreetradeという新興企業2社が、2019年春より株式取引手数料無料のモバイルアプリをリリースする予定だ。既存のリテールブローカーにとって、人気が高まる株式取引手数料無料サービスを提供することは、ここ数年以上に亘る数々の失態を晒したことを受け、失墜した業界イメージを取り戻す非常に重要な機会となるかもしれない。リテールブローカーはこれまでに、バイナリーオプションなどのリスクの高い商品を提供したり、ゼロカットシステム(negative balance protection)を採用してこなかったことから、結果として個人投資家の保護を徹底すべく、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority, ESMA)により導入された新たな規制枠組みへの対応に苦慮している展開だ。また欧州当局が、EU(欧州連合)域内の金融・資本市場の包括的規制策である金融商品市場指令(Marktes, in Financial Instruments Directive, MiFID)及び第二次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)において厳格な規制を敷いており、その分株式ブローカー間における手数料競争は激しさを増している状況でもある。
今後、リテールブローカーが新たな市場環境に適用する過程においては、顧客と持続的に共存共栄を図ることが大きな課題となり、顧客の損失がブローカーの利益となる利益相反関係を取り除く必要がある。その点、Robinhoodは取引手数料を無料とし、顧客とウィン・ウィン(win-win)の関係を築いているといえよう。ただし、ブローカーの中には、取引手数料無料を謳うものの、実際には顧客にとっては高いコストになる非常に広いスプレッドでサービス提供を行っているところもあるので注意は必要である。
更に、欧州中央銀行(ECB)が金利を引き上げる可能性は低く、特にこれから資産形成を図る若い世代を中心とした個人投資家の間で、リスク志向が高まることが予想される。市場競争は激化しているものの、リテールブローカーは戦略地域を定め、効果的に顧客へマーケティングすることで依然市場開拓余地はあるといえるだろう。また、欧州の年金制度にはサステイナビリティ(持続可能性)の問題が燻っていることから、今後貯蓄してきた資産をリスクのある金融商品で運用する可能性もある。
BUXのCEO兼創業者であるNick Bortot氏によれば、米国と違って、欧州ではそこまで人々の生活に投資文化が根付いていないと述べている。ただし、市場環境の移り変わりやブローカーの効果的なマーケティングにより、欧州の人々が投資に資金を仕向けるという変化が見られてくるかもしれない。そして、投資家が貯蓄から投資に資金をシフトする際には、投資家が支払うコストの適正化を図る必要があろう。
他方、FX・CFDブローカーは、ハイレバレッジ取引を望む顧客への商品・サービスの提供を続けているが、規制当局はゼロカットシステムの採用が不要なレバレッジ無しの金融商品の提供を推進しているように見受けられる。金融業界においては、常に個人投資家の判断が誤っているという不文律があるが、金融商品やレバレッジに関係なく、この不文律は未だに続いている状況だ。顧客の損失がブローカーの利益となる仕組みを拭い去ると共に、顧客にとって無駄なコストを省き、先進的なテクノロジーを活用した革新的なサービスを提供することが求められているといえよう。
release date 2019.02.21
オランダ・アムステルダムを拠点として活動するBUXは、FXやCFD取引に利用されるゼロコミッション(手数料無料)トレーディングを実現するスマートフォンアプリや取引プラットフォームの開発に取り組んでおり、操作性の高いユーザーインターフェース(UI)で若年層のユーザーから高い支持を集めている。欧州全域で200万人近いユーザーを抱えるBUXは、2018年11月末に、事業拡大責任者として米リップル社で幹部を務めた経歴を持つAditya Pasumarty氏を迎え入れたことに加え、新しいトレードアプリケーション「STOCKS」を発表しており、サービス拡大に意欲的に取り組んでいるようだ。また、ソーシャルトレーディングサービスを提供するフィンテック企業ayondoの英国法人をBUXが買収するため、現在交渉段階に入っていることが発表されている。リテールブローカーは未だ続く顧客との利益相反関係を断ち切る必要があり、市場環境や規制枠組みの変化を見せる今こそ長期的視点に立ち、取引手数料無料といった顧客にとって付加価値の高い商品・サービスを提供する時期に差し掛かっているといえるだろう。2019年のBUXの事業計画にも注目したい。
作成日
:2019.02.21
最終更新
:2022.11.10
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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