作成日
:2019.02.06
2021.08.31 15:27
シンガポールを拠点に大手仮想通貨取引所を運営するHuobiは、ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)、ステーブルコインのテザー(Tether)を対象とした、米ドルでの仮想通貨取引サービスを開始したことを発表した。
設立されてから6年間、世界中の仮想通貨市場に進出するHuobiは、累計1兆ドルの売り上げを記録していることが関係者筋から明かされている。2019年をさらなる躍進の年とするため、Huobiは、米国法人のHuobi US【以下、HBUSと称す】を中心に、ウォールス街の企業とパートナーシップを進める方針を示しており、その第一歩として、ネバダ州の信託会社であるPrime Trustとの協業を決めたようだ。今回発表された米ドルと仮想通貨の取引サービスでも、Prime Trustの協力で法定通貨の入出金機能の実装が実現したという。Prime TrustのCEOであるScott Purcell氏は、Huobiとの協業で新しく開始されるサービスに関して、とても期待しているとコメントしている。
一方HBUSのCEOであるFrank Fu氏は、Prime Trustとのパートナーシップは米国市場における事業戦略の始まりに過ぎないと語っており、HBUSが機関投資家などとの協業体制を確立した後、必要となる規制やコンプライアンスを整えて、仮想通貨を対象としたETFやデリバティブなどの革新的な商品の提供を目指すことを明かしている。たとえこれらのパートナーシップが実現しなくとも、米国内のユーザー数約6万人に加えて、提携するHuobi Globalを通じて獲得した中国の大規模なユーザー数を抱えるHBUSにとって、法定通貨による仮想通貨取引など多様なオプションを提供することは、重要な価値となると考えられている。HBUSでは、現在提供されている通貨ペアに加えて、今後はライトコイン(Litecoin)、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)、ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)などの取り扱いも検討しているようだ。
HBUSのサービス拡大について、同社のCCO(Chief Compliance Officer)であるMegan Monroe-Coleman氏は、包括的なデューデリジェンス(投資価値やリスクの調査)プロセスの確立により、様々な通貨ペアの提供が可能になると述べた。加えて、Monroe-Coleman氏は、米国の証券法の下、セキュリティトークンに分類され、規制される可能性のあるトークンはリスティングから除外する方針を示している。取引ペアを拡充すると同時にHBUSは、中国内のユーザーに対して中国語でのサービス提供や顧客確認(KYC)などへも対応しており、Fu氏は、HBUSが欧米とアジア市場をつなぐゲートウェイになることへの意欲をみせている。
また、Fu氏は、HBUSのグローバル市場展開での取り組みについて、以下のようにコメントしている。
我が社の取り組みは米国から始まりますが、グローバルサービスプラットフォームとしてのビジョンを持っています。コンプライアンスへの取り組みを適切に行うことで、高く評価される米国の金融商品や金融サービスを、多くのユーザーに提供していきたいと考えております。
Frank Fu, CEO of Huobi US - Coindeskより引用
HBUSの新しい取引サービスは、中国内のユーザーがHuobi GlobalのOTC(店頭取引)を利用することで、米国内の取引口座への米ドル送金手段となる可能性をもつが、これを実現するためには、中国政府が課す厳しい規制に準拠することが不可欠であるという。規制に詳しい対マネーロンダリング法専門の弁護士であるChristine Duhaime氏によると、中国の規制で国民が年間5万ドル以上の資産を許可なしに国外に移動させることは禁止されているようだ。もし、企業がビットコインなどの仮想通貨を国外に送金しようとしても、政府の許可なしでは実行することが出来ないとのことだ。Huobi Globalのロンドン支店で運営を任されるLester Li氏によると、グローバルプラットフォームの機関投資家などのクライアントのうち、50から200の企業が中国資本に関連しているが、中国内の規制を避けるための対策として、海外に拠点を置いて活動しているという。
Huobiは北米やその他地域でネットワークを拡大しており、オーストラリアのGoldfields Moneyや、OTCの取引実績があるニューヨークのSignature Bankとの提携も発表した。加えて、HBUSのパートナー企業であるPrime Trustは、これまでにU.S. BankやPacific Mercantile Bankなど、連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporate, FDIC)との提携関係があったことを明らかにしており、銀行とのつながりも強くなることが予想される。
複雑な規制環境を管理するため、HBUSは2019年に従業員を3倍の150人に増やし、法令遵守や機関投資家との提携強化に焦点を当てるという。さらに、HBUSのMonroe-Coleman氏は、機関投資家やこれら25%以上の株式を保有する個人の口座開設においては、Bank Secrecy Act(米国のマネーロンダリング対策法)に則った厳密な顧客情報の確認を実施することを明らかにしている。
グローバル市場で仮想通貨取引が複雑化していく中、HBUSは、世界中に1,300万人のユーザーベースを抱えるHuobi Globalのコンプライアンスポータルとして、価値を発揮することを目指しているようだ。
release date 2019.02.06
Huobi Globalが出資したことで米国の提携企業となっているHBUSは、Huobi.comを通してサービスを展開しており、Huobiグループにおける米国市場へのアクセスポイントとしての働きを期待されている。今回の米ドルを対象とした仮想通貨の取引サービスは、最低100ドルからの入金から利用できる手軽なソリューションで、米国市場におけるHuobiの一般ユーザー層の開拓が進むことが考えられる。しかしながら、米国市場で競合となることが予想されるKrakenやコインベースなどと比べると、採用されている通貨ペアも3種類の主要な仮想通貨のみと少なく、サービス面での強化が当面の課題だと言えるだろう。本来、Huobiは、100以上のアルトコインを取り扱っており、新規性の高い仮想通貨に投資できるのがひとつの強みとなっているため、今後米国市場でも取り扱い通貨ペアの拡充が望まれる。これまで、金融庁の承認を受けているビットトレードをHuobi Globalが買収して、日本市場に参入するなど、世界中へ展開を進めているが、同社の次なる一手にも注目したいところだ。
作成日
:2019.02.06
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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