作成日
:2019.01.23
2021.08.31 15:27
英国のケンブリッジ大学の研究チームは、盗難されたビットコイン(Bitcoin)のトランザクションを追跡する新しいアルゴリズム、Taintchainを開発したことを明らかにした。
Taintchainは、資金洗浄済みのビットコインも認識することが可能で、ビットコイン関連の犯罪に対するソリューションとして、警察などの法執行機関への導入が期待されている。台帳技術を基礎とするビットコインは、誰でもブロックチェーン上の取引履歴を参照することが可能な透明性の高い設計となっている。多くの仮想通貨と同様に匿名取引が採用されていないため、ビットコインのブロックチェーンには、送金先のアドレスが記録されており、それを読み解けば、各アドレス間での送金を把握することができる。しかしながら、ビットコインには、シリアルナンバーや識別IDなどが付随されていないことから、盗難などの犯罪が発生した際には、事件に関与した特定の資金の流れを追うことは構造的に不可能となっている。
例えば、盗難によって手に入れた4BTCと正規のルートで取得した6BTC、合わせて10BTCをひとつのウォレットから複数のウォレットに分割して送金してしまえば、どのビットコインが盗難されたものか判別できなくなってしまう。これは、一般的に認知されている仮想通貨を利用した資金洗浄の方法で、資金の流れをより複雑にする要因にもなっている。仮にブロックチェーンの記録から犯行に利用されたアドレスが特定されたとしても、それが資金を受け取った人物の個人情報とは紐づいていないため、犯人を特定する直接的な手がかりを得ることも難しい。
この問題に対して、ケンブリッジ大学の研究チームのRoss Anderson氏とIlia Shumailov氏、Mansoor Ahmed氏の両名は、Taintchainのアルゴリズムに先入先出(FIFO)の原則を応用することで、ビットコインの追跡を可能にしたという。先入先出は、19世紀の英国で成立した出入金に関する法律で定められたルールで、具体的には、銀行などの金融機関が倒産した場合、先に口座に入金した人物が初めに資金の返還を受けることを確約するものだ。Taintchainは、これを基礎としたアルゴリズムをウォレットに適応することで、個々のビットコインを識別することに成功している。このシステムの下では、初めに入金されたビットコインの盗難が発覚した場合には、それを所有する人物が初めに送金したビットコインが盗難された通貨と同一であると見なされるという。このように、Taintchainのアルゴリズムは、例え犯人が異なる方法で資金洗浄を試みたとしても、ビットコインを追跡することができるようになっている。
Taintchainは、有力なブロックチェーン監視ソリューションとなり得るが、一方で、暗号化プロトコルを用いた通信を利用して違法取引が行われるダークネット市場の存在が各国政府の懸念として顕著化している。これまでに複数のダークネット市場が閉鎖されたにも関わらず、次から次へと湧き出るように後続が生まれ、状況は一向に改善していない。ブロックチェーン分析を行うChainalysis, Inc.は、ダークネット市場の現状について、仮想通貨価格が下がってもこれらの違法取引は減退しないであろうことを指摘している。事実、2018年のダークネット市場での活動は仮想通貨が下落傾向にあるのに反し、全体的に増加傾向にあるようだ。
release date 2019.01.23
これまで、仮想通貨取引所は、幾度となくハッキングのターゲットとされており、仮想通貨の盗難被害に見舞われている。特に日本では、大量のビットコインが不正に流出した2014年のマウントゴックス事件を皮切りに、昨年のコインチェックとZaifのハッキング事件など、立て続けに大規模な仮想通貨の盗難が発生した。対策として、日本政府は、金融庁を中心に既存の金融法を改正することで、規制フレームワークの整備を進め、昨年12月には、ようやく仮想通貨市場全般を対象とした規制草案を提出する段階にまで至っている。この規制草案の中には、秘密鍵の管理方法や補填に備えた資産を保有する案など、取引所の運営基準を厳格化するための取り決めが盛り込まれているようだ。また、これとは別角度からのアプローチとして、政府の執行機関が、Taintchainやその他ブロックチェーン監視ソリューション等を活用することで、仮想通貨関連の犯罪抑止に努めるという手も考えられる。米国では、すでに政府機関がブロックチェーン分析に予算を付けており、監視ソフトウェアを開発するChainalysisのソリューションもアメリカ合衆国内国歳入庁に採用されているという。Chainalysisといえば、大手仮想取引所のバイナンスとの提携が昨年10月に発表されたのが記憶に新しい。仮想通貨関連の犯罪に悩まされてきただけに、日本にも検討の余地はありそうだ。
作成日
:2019.01.23
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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