Select Language

盗難されたビットコインの追跡が可能に

盗難されたビットコインの追跡が可能に

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2021.08.31 15:27
盗難されたビットコインの追跡が可能に

update 2021.08.31 15:27

FIFOメソッドの応用でビットコインを個別に認識

英国のケンブリッジ大学の研究チームは、盗難されたビットコイン(Bitcoin)のトランザクションを追跡する新しいアルゴリズム、Taintchainを開発したことを明らかにした。[1] Taintchainは、資金洗浄済みのビットコインも認識することが可能で、ビットコイン関連の犯罪に対するソリューションとして、警察などの法執行機関への導入が期待されている。

台帳技術を基礎とするビットコインは、誰でもブロックチェーン上の取引履歴を参照することが可能な透明性の高い設計となっている。多くの仮想通貨と同様に匿名取引が採用されていないため、ビットコインのブロックチェーンには、送金先のアドレスが記録されており、それを読み解けば、各アドレス間での送金を把握することができる。しかしながら、ビットコインには、シリアルナンバーや識別IDなどが付随されていないことから、盗難などの犯罪が発生した際には、事件に関与した特定の資金の流れを追うことは構造的に不可能となっている。

例えば、盗難によって手に入れた4BTCと正規のルートで取得した6BTC、合わせて10BTCをひとつのウォレットから複数のウォレットに分割して送金してしまえば、どのビットコインが盗難されたものか判別できなくなってしまう。これは、一般的に認知されている仮想通貨を利用した資金洗浄の方法で、資金の流れをより複雑にする要因にもなっている。仮にブロックチェーンの記録から犯行に利用されたアドレスが特定されたとしても、それが資金を受け取った人物の個人情報とは紐づいていないため、犯人を特定する直接的な手がかりを得ることも難しい。

この問題に対して、ケンブリッジ大学の研究チームのRoss Anderson氏とIlia Shumailov氏、Mansoor Ahmed氏の両名は、Taintchainのアルゴリズムに先入先出(FIFO)の原則を応用することで、ビットコインの追跡を可能にしたという。先入先出は、19世紀の英国で成立した出入金に関する法律で定められたルールで、具体的には、銀行などの金融機関が倒産した場合、先に口座に入金した人物が初めに資金の返還を受けることを確約するものだ。Taintchainは、これを基礎としたアルゴリズムをウォレットに適応することで、個々のビットコインを識別することに成功している。このシステムの下では、初めに入金されたビットコインの盗難が発覚した場合には、それを所有する人物が初めに送金したビットコインが盗難された通貨と同一であると見なされるという。このように、Taintchainのアルゴリズムは、例え犯人が異なる方法で資金洗浄を試みたとしても、ビットコインを追跡することができるようになっている。

Taintchainは、有力なブロックチェーン監視ソリューションとなり得るが、一方で、暗号化プロトコルを用いた通信を利用して違法取引が行われるダークネット市場の存在が各国政府の懸念として顕著化している。これまでに複数のダークネット市場が閉鎖されたにも関わらず、次から次へと湧き出るように後続が生まれ、状況は一向に改善していない。ブロックチェーン分析を行うChainalysis, Inc.は、ダークネット市場の現状について、仮想通貨価格が下がってもこれらの違法取引は減退しないであろうことを指摘している。事実、2018年のダークネット市場での活動は仮想通貨が下落傾向にあるのに反し、全体的に増加傾向にあるようだ。[2]

release date 2019.01.23

出典元:

ニュースコメント

度重なる盗難被害を受けて対策が進む日本

これまで、仮想通貨取引所は、幾度となくハッキングのターゲットとされており、仮想通貨の盗難被害に見舞われている。特に日本では、大量のビットコインが不正に流出した2014年のマウントゴックス事件を皮切りに、昨年のコインチェックとZaifのハッキング事件など、立て続けに大規模な仮想通貨の盗難が発生した。対策として、日本政府は、金融庁を中心に既存の金融法を改正することで、規制フレームワークの整備を進め、昨年12月には、ようやく仮想通貨市場全般を対象とした規制草案を提出する段階にまで至っている。この規制草案の中には、秘密鍵の管理方法や補填に備えた資産を保有する案など、取引所の運営基準を厳格化するための取り決めが盛り込まれているようだ。また、これとは別角度からのアプローチとして、政府の執行機関が、Taintchainやその他ブロックチェーン監視ソリューション等を活用することで、仮想通貨関連の犯罪抑止に努めるという手も考えられる。米国では、すでに政府機関がブロックチェーン分析に予算を付けており、監視ソフトウェアを開発するChainalysisのソリューションもアメリカ合衆国内国歳入庁に採用されているという。Chainalysisといえば、大手仮想取引所のバイナンスとの提携が昨年10月に発表されたのが記憶に新しい。仮想通貨関連の犯罪に悩まされてきただけに、日本にも検討の余地はありそうだ。


Date

作成日

2019.01.23

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30

XMTradingの入出金で銀行口座凍結?海外FX禁止の銀行に注意

SNS上では「XMTradingの出金で銀行口座が凍結された」とする投稿が一部で見受けられます。銀行によっては海外FXとの取引を禁止しているため注意が必要です。本記事では凍結リスクが高い銀行や仮想通貨送金の注意点を説明します。
update2025.09.03 19:00

Peska(ペスカ)は本当に安全?評判は悪くないが入出金リスクに注意

PeskaはFX業者とのコラボキャンペーンなどをきっかけに、急速にユーザーを増やしているオンラインウォレットです。しかし、新興サービスのため利用すべきか迷うという人も少なくありません。この記事ではPeskaの安全性や評判、オンラインウォレット業界が抱えるリスクなどを説明します。
update2025.09.29 19:30

メタマスク等の利用が規制対象に?金融庁がDEXの規制を議論

暗号資産WGでの議論を発端に、SNS上で「DEX利用が非合法化されるのでは?」といった投稿が話題になっています。本記事では、金融庁で議論されたDEX規制の現状や、SNSで広まる情報の真偽、海外FXユーザーへの影響などを解説します。
update2025.10.28 19:00

PayPayを使って海外FXとの入出金が可能に?Binance JapanとPayPayが提携を発表

Binance JapanとPayPayが業務提携を発表し、PayPayマネーを使った仮想通貨購入サービスの提供などが検討されています。本記事では、Binance JapanとPayPayの提携内容や、PayPayを使った海外FXとの入出金フローなどを解説します。
update2025.10.17 19:00

海外FXへの仮想通貨送金にはBybitがおすすめ!FXトレーダーに最適なBybitの使い方

海外FXの入出金によく使われる国内銀行送金が以前より使いにくくなっていることを受け、仮想通貨での入出金が注目を集めています。本記事では、仮想通貨送金をするならBybitがおすすめの理由や、海外FXユーザーに最適なBybitの使い方を紹介します。
update2025.08.29 20:00

Exnessでシステムエラーによる入出金の不具合が発生?SNSでも報告が相次ぐ

2025年10月、海外FX業者Exnessで入出金エラーが発生し、SNSでも不具合報告が相次ぎました。銀行振込やbitwalletで送金できない事例が確認されており、復旧後も不安の声が続いています。
update2025.10.16 19:00

XMはゴールド(XAUUSD)のスプレッドも広い?ボーナス取引で実質お得

XMTradingのゴールド(XAUUSD)はスプレッドこそ狭くないものの、スワップフリー口座や豪華ボーナス、約定スピードの速さで十分に利用の検討余地があると言えます。当記事ではXMTradingでゴールド取引が向いている・向いていないトレーダーを他社と比較しながら解説していきます。
update2025.10.22 19:00

話題のDCJPYとJPYCの違い|海外FXの入出金に使えるのは?

DCJPYというデジタル通貨が話題となっています。一方で、海外FXユーザーの間ではJPYCへの期待も高まっています。本記事では、DCJPYとJPYCの特徴や違いを比較し、海外FXトレーダーにとってどちらが送金手段の選択肢となるのかを解説します。
update2025.09.26 19:30

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル