作成日
:2019.01.17
2021.08.31 15:27
マレーシア証券委員会(Securities Commission)は、国内でのICO(イニシャルコインオファリング)や仮想通貨取引を取り締まることを目的として、今月15日に新たな規制を施行したことを明らかにした。
これまで、マレーシアでの仮想通貨取引は、違法では無かったものの、明確な規制が設けられていなかったため、不透明な運用が続いていた。この曖昧な状況を改善すべく、財務省のLim Guan Eng氏は、「Capital Markets and Services Digital Currency and Digital Token Order, 2019」と冠した新しい規制を設けることを先日発表した。具体的な内容は、2019年度の第1四半期末を目処に整備される予定だが、ICOにおけるトークン発行者や仮想通貨取引所を対象に、価格決定基準の公開や投資家保護に関する取り決めなどが盛り込まれる見通しだ。
今後、仮想通貨を始めとするデジタル資産のオファリングには、証券委員会の承認が必要となり、事業者はマネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与防止などの法律に準拠することに加えて、セキュリティや事業の継続性などの基準を満たさなければならないという。規制に違反して取引を実施した者には、罰金1,000万リンギット(約240万ドル)と懲役10年の罰則が課される可能性もあるようだ。この新しい規制に対する当局の意気込みは強く、昨年12月初旬の発表では、証券委員会と中央銀行のBank Negara Malaysia【以下、BNMと称す】が、規制によって市場の公平性と投資家の安全性向上が促されると述べて、期待をあらわにしている。
成長著しいマレーシアでは、新興テクノロジーの利用も積極的で、政府主導のイニシアチブが既にいくつか立ち上げられている。大手銀行のHSBCマレーシアは、BNMと共同で、ブロックチェーンを基礎とした金融プラットフォームの立ち上げに尽力しており、シンガポールとマレーシアの両国によって形成されたコンソーシアムでは、世界初のブロックチェーン銀行の開発が行われているという。加えて、仮想通貨取引プラットフォームであるCGCX.ioとの協業では、ArchipelagoグループとIBH Capitalが、ブロックチェーンベースの投資銀行の立ち上げをマレーシアのラブアンで試みていることを報告している。
また、今月15日の報道によると、マレーシアでは、AlibabaグループのAlipayとパキスタンの都市カラチに拠点を持つTelenor Microfinance Bank、TelenorグループのペイメントソリューションであるEasypaisaが共同で、パキスタンとマレーシア間のクロスボーダー送金プログラムを開発しているという。このプロジェクトは、年間約200億ドルとも予測されるパキスタン国内の巨大な送金市場のシェア獲得を目指すものだ。
別件では、昨年7月、仮想通貨ネム(NEM)の開発を手がけるネム財団が、東南アジア地域の統括本部をクアラルンプールに設立している。ネム財団の施設は、ブロックチェーン関連の施設としてはアジア最大で、ラーニングセンターやブロックチェーン関連のスタートアップ支援などの役割も兼ねているという。様々な取り組みが実施されるマレーシアだが、今後も継続的な市場の成長が見込まれるだけに、今回の規制導入は、重要な試金石として位置付けられるだろう。
release date 2019.01.17
欧米や東アジアの市場に遅れて、最近では、ようやく東南アジアの市場でも仮想通貨の受け入れを想定した規制の動きが見られるようになってきた。仮想通貨に友好的な姿勢を見せてきたシンガポールでは、昨年12月、シンガポール金融管理局がICOに関するガイドラインを発行しており、仮想通貨を利用した健全な資金調達を目指す方向に進み出しているようだ。また、隣国のタイでは、日本と同様のライセンス制度が取り入れられ、先日、タイの財務省は4つの企業にライセンスを発給したことを発表している。マレーシアと合わせて、これら3カ国は、東南アジアの中でも経済発展の優等生で、中国や日本、欧米の資本が流入していることが特徴としてあげられ、周辺諸国と比べると恵まれた環境にある。中でもマレーシアは、中東のイスラム国家との結びつきが強く、潜在的な市場価値は計り知れないため、仮想通貨の受け入れに本腰を入れたことは、市場全体にとっても明るい材料だと言えるだろう。
作成日
:2019.01.17
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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