作成日
:2019.01.16
2021.08.31 15:27
イーサリアム(Ethereum)の次期ハードフォーク計画であるコンスタンティノープル(Constantinople)だが、重大な脆弱性が発見されたとして、実施まで遅れをとっていることが明らかになった。
スマートコントラクトの監査企業であるChainSecurityの発表によると、コンスタンティノープルでのアップデート項目であるEPI(Ethereum Improvement Proposal)1283にバグが発見され、ハッキングにより利用者の資金が不正に流出する危険性があるという。
これに関して、イーサリアムの考案者として知られるVitalik Buterin氏や開発者のHudson Jameson氏、Nick Johnson氏、Evan Van Ness氏、パリティ管理者のAfri Schoedon氏などの主要な参加者を交えて、オンライン会議が開かれたが、もともとハードフォークが予定されていた1月17日までに、この問題を解決することは不可能だとの結論に至っている。問題の調査が終わるまでは、ひとまずイーサリアムのハードフォークを延期することが決まったが、新しい予定日は未定となっており、18日に再度開催される開発者会議で協議されるという。今回、問題となっている点は、ブロックチェーンを利用して自動的に契約を履行する機能であるスマートコントラクトのセキュリティで、リエントランシー攻撃というハッキング行為に対して、耐性がないことが指摘されている。リエントランシー攻撃とは、同じコードを何度も繰り返し実行することが可能なシステムの脆弱性を突く手法で、理論的には、永遠に資金を送金する命令を出し続けることもできるという。イーサリアムのスマートコントラクトには、稼働中にエラーが起きた際に契約の履行を中断してやり直すフォールバック関数という、安全装置のようなものが内蔵されているが、これを悪用して、利用者が意図的にエラーを起こせば、送金が繰り返し実行される状況を作り出すことも可能だ。このリエントランシー攻撃は、2016年に発生した有名なDAO事件と呼ばれるハッキングでも利用された手法だと言われている。
イーサリアムは、トランザクションを完了させるための手数料、すなわちマイニング報酬としてガス(Gas)と呼ばれるトークンを採用している。資金の送金やスマートコントラクトの利用など、その他のイーサリアムのシステムを利用するためには、このガスを支払う必要があるが、コンスタンティノープルの方向性として、手数料の減額が決定しており、それが脆弱性を招く根源になっているようだ。これまで、スマートコントラクトを稼働させるには、5,000ガスが必要だったが、アップデート後にはこれが200ガスにまで引き下げられる。フォールバック関数は、2,300ガス以上の処理ができないようになっているため、この機能を悪用されることはなかったが、ガスの大幅な低減で今回のような懸念が生まれている。
昨年行われる予定だったコンスタンティノープルへのハードフォークは、前回もテストネットへの実装で問題が見つかるなど延期が続いている。問題続きのイーサリアムだが、仮想通貨市場に与える影響が大きいことから、万全な体制で無事アップデートにこぎつけてほしいところだ。
release date 2019.01.16
2016年6月に発生したDAO事件は、約65億円を越える被害総額を記録し、最終的には、イーサリアムの分裂にまで至るなど、第二のマウントゴックス事件と呼ばれるほどの大きな騒動となった。このような悲惨なハッキング被害の可能性を考慮すると、安全面に配慮してハードフォーク延期の決定をした開発チームは、聡明な判断を下したと言えるだろう。しかしながら、ハードフォークの遅れによる影響は、イーサリアムの価格にも如実に現れており、仮想通貨市場全体にまで波及しているようだ。2019年に入って、昨年末から一転して好調を維持していた仮想通貨市場だが、コンスタンティノープルの延期が発表された16日、ビットコイン(Bitcoin)を中心とする主要通貨は軒並み大幅に値を下げている。とりわけ、その原因となっているイーサリアムは、6%の下落を記録して、他の仮想通貨よりも売り優勢の状況にある。イーサリアムのハードフォーク計画は、今後のPoS(プルーフオブステーク)へのアルゴリズム移行などの布石となっているため、早急な巻き返しが求められるだろう。
作成日
:2019.01.16
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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