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コインベース、Earn.comとの仮想通貨学習サービスを開始

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update 2021.08.31 15:27
コインベース、Earn.comとの仮想通貨学習サービスを開始

update 2021.08.31 15:27

1億ドル以上で買収した企業との協業で実現

仮想通貨取引所のCoinbase, Inc.(本社:548 Market St #23008 San Francisco, CA9410[1])【以下、コインベースと称す】は、今年4月に1億ドル以上で買収したEarn.comをベースとした学習プラットフォーム、Coinbase Earnを提供開始することを今月19日に発表した。ユーザーは、Coinbase Earnを通して、仮想通貨の利用やテクノロジーに関する学習を進めることで、報酬として少量の仮想通貨を獲得することができるという。[2]

Coinbase Earnの学習コンテンツは、全ての利用者に解放されているが、本登録は今のところ招待制となっており、登録を望む利用者はウェイティングリスト(順番待ちのリスト)にメールアドレスを追加できるようになっている。本登録を行ったユーザーは、短いビデオレッスンやクイズをこなすことで、0x(ZRX)というアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)が付与されるようだ。現時点で詳細は明かせないものの、広報担当者によると、コインベースはこのCoinbase Earnの活動を通して、Earn.comの事業もスケールアップしていく計画があるという。コインベースは、Earn.comの創立者であるBalaji Srinivasan氏をCTOとして経営陣に加えている。

もともとEarn.comは、2013年5月にSrinivasan氏と他5人の共同創立者によって立ち上げられた21e6という企業が前身となっている。創立時に実施されたシリーズA(ベンチャーキャピタル等が最初に出資する段階)の投資ラウンドでは、合計55名の投資家から500万ドルの資金を集め、シリコンバレーから資金調達を行う仮想通貨企業の先駆けとなった。当初、業界の競争はそれほど激しくなく、21e6は、ASICとよばれる特定用途向けICチップの製造に注力しており、データセンターでビットコインのマイニングに運用することで、十分な利益を上げていたという。カリフォルニアにあったデータセンターの設備投資に大きな資金を必要としたが、ビジネスは良好で、2013年は380万ドルの売上を記録している。この好調も後押しして、シリーズB(スタートアップ中盤)の投資ラウンドでは、ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzを中心に5,900万ドルの資金調達に成功し、企業の評価額は2億1,600万ドルに跳ね上がった。この巨額の資金は、第2世代と第3世代のASICの開発に充てられ、2014年の売上は4,100万ドルに達している。21e6は、史上最も急速に成長を遂げた企業のひとつと言われており、FacebookやGoogleと比べても遜色ない。

一時期、21e6は、ビットコインのマイニングによる総報酬額の25%を占めていたが、アルゴリズムによる難易度の上昇に苦しみ、その収益性を失いつつあった。これを受けて、21.coに社名を変更してリブランディング(ブランドの再構築)を試み、その一環で実施したシリーズC(拡大のためより多くの資金を調達する段階)の投資ラウンドでは、3億1,000万ドルの企業評価額があると判断され、Andreessen HorowitzとRRE Venturesから5,200万ドルの資金を新たに調達した。この頃、経営陣の大幅な入れ替えも行われ、Srinivasan氏がCEOに就任にした際には、8,000万ドルもの負債があったという。

2015年、21.coは、消費者向けマイニングマシンの販売に乗り出しており、「The 21 Bitcoin Computer」をリリースしたが、これまで利用していた古いASICを再利用した同製品では、購入者がマイニング収益を上げることは難しかったようだ。試算によると、年間で最大38.30ドルしか報酬を獲得することができないとの結果もあり、21.coはすぐにこの製品を廃止している。その後、2016年には、ビットコインでの小額の支払い機能をAPI(ソフトウェアの機能を共有する仕組み)で付随できる無料のツールを公開し、現在のEarn.comの礎を築いた。このツールは、どのようなデバイスでもマイニングを実行可能とするソリューションとしての役割もあり、何か小さなタスクをこなす、または、コンピューターリソースを貸すことでビットコインを獲得できる仕組みを持っていた。21.coは、ビットコインに関するAPIのマーケットプレイス(インターネット上で自由に参加できる取引市場)も設立したが、2017年10月にこのサービスは正式に終了されている。

再度のリブランディングで、21.coは、現在のEarn.comに生まれ変わり、仮想通貨報酬と引き換えにユーザーがEメールに返信して特定のタスクをこなすというサービスの運営を開始した。加えて、Earnable Tokenという独自トークンの開発も実施しており、新規ユーザーへのインセンティブとして利用することで、ユーザーベースの拡大を実現している。ICO(デジタル・トークンの発行による資金調達)が過渡期を迎えていた2018年1月には、Earn.comは、仮想通貨をエアドロップ(発行したトークンを無償で配布)することでマーケティング効果を狙うEarn.com Airdropsという新しいサービスも立ち上げた。しかしながら、市場の低迷やICO投資の減少により、市場への影響力も失い、結果的にはコインベースに買収されている。

それ以来、Earn.comのチームは、同社の仮想通貨でインセンティブを配布する仕組みをコインベースのプラットフォームに統合することに力を注いでいるという。同チームは、豊富な経験とリーダーシップでコインベースを牽引する重要な役割を果たしており、買収に充てられた投資もすぐに回収できるとの見解もあるようだ。残念ながら、Earn.comは市場の中で淘汰される結果となったが、培われたその技術は根幹部分でCoinbase Earnを支えることが期待されている。

release date 2018.12.20

出典元:

ニュースコメント

大手取引所が仮想通貨市場の問題解決に動き出す

米国の仮想通貨市場でトップを走るコインベースは、業界の象徴として様々な取り組みを行っており、イノベーションの種をまいている。今回のCoinbase Earnの発表は、同社が企画した「12 Days of Coinbase」という毎日新しいプロジェクトを公開するイベントの一環で行われた。先日もコインベースはConvertという仮想通貨両替サービスの開始も発表しており、それ以外にも、Paypalでの入金受付や新規通貨の上場など総合的な仮想通貨プラットフォームとしての強化を図っている。最近では、同じく仮想通貨取引所のバイナンスも仮想通貨の教育サイトを立ち上げるなど、低迷する市場で大手企業が重い腰を上げ、根本的な問題解決に取り組み出した印象だ。このような取り組みでは、短期的な成果は生まれにくいかもしれないが、長期的な視点では、業界のイメージアップや投資家の育成などにつながることが予測される。先日、ビットコイン価格が4,000ドルに回復し、市場が上向いている状況だけに、大手を中心とした仮想通貨関連企業による積極的なソリューション提供に期待したい。


Date

作成日

2018.12.20

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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