作成日
:2018.12.11
2022.07.14 13:20
ブレグジット(英国のEUからの離脱)議会採決に備え、ブローカー各社は対応策を模索している。デンマーク拠点の投資銀行Saxo Bank Group(本社:Philip Heymans Alle 15, 2900, Hellerup, Denmark
)の日本法人としてFX・CFDサービスを提供するサクソバンク証券と、英国・ロンドンを拠点とするリテールブローカーであるFxPro(本社:13/14 Basinghall Street, City of London, EC2V 5BQ )は12月10日、ブレグジットの影響を考慮し、英ポンドの証拠金率の変更を行うと共に、状況次第で新規ポジションを持たせない措置を講じる意向であることを発表した。また、両社に先立つ形で、12月7日にはスイス・ジュネーブを拠点とし、銀行業やFXブローカー事業を行うDukascopy Bank SA(本社:ICC, Entrance H, Route de Pré- Bois 20, 1215 Geneva 15, Switzerland
)【以下、デューカスコピー】は、ブレグジット関連のニュースヘッドラインによる相場の急変動を考慮し、同社が取り扱う英国株式インデックス、ブレント原油先物、軽油先物取引の最大レバレッジを30倍に制限する意向を示していた。このレバレッジ制限に関しては、ブレグジット動向によるボラティリティ の高まりが完全に収まるまで続ける予定であるとのことだ。サクソバンク証券もデューカスコピーに追随する形で、法人口座のポンド証拠金率の変更を行い、主要ポンド通貨ペアの全てに関して証拠金率を2.5%から4%(最大レバレッジを40倍から25倍)に変更した。
この証拠金率の変更は現在保有するポンド通貨ペアポジションにも適用され、状況によっては追加証拠金が求められたり、ロスカットが生じたりする可能性が出てくるとのことだ。FxProも、12月10日10時より欧州関連のインデックス取引の証拠金率を2%に変更を行っている。また、向こう数日にブレグジット関連のニュースヘッドラインによりスプレッドが大きく開くことが見込まれ、状況次第では顧客に新規ポジションを建てさせない方針であるようだ。ブローカー各社では、仮に英議会で行われる英国のEU離脱案が否決された影響を低減させるべく、向こう24時間以内に追加の対応策が打ち出される見通しである。2016年6月に実施されたブレグジットを問う国民投票の際には、市場の流動性が枯渇したことから、顧客がトレードを安心・安全に行えるよう、ブローカー各社は今まさにその対応に迫られていると言えよう。現段階では、メイ首相の声明により議会の延期が表明されたが、議会採決の具体的な日程に関しては今後詰めていくとしている。
合意なき離脱に準備する必要性が高まってきており、引き続きポンド相場は予断を許さない展開となりそうだ。release date 2018.12.11
ブレグジット(Brexit)とは、Britain(英国)とExit(退出)を組み合わせた造語であるが、背景として、移民の急増が大きな要因として挙げられている。英国はEU内ではドイツと並び経済が発展しており、移民への支援体制も充実しているため、英国への移民が増加していた。EU加盟国は移民の受け入れを拒否することができないが、その費用は税金による負担となっており、人口増による家賃の上昇、文化の違い、移民に職を奪われるなどの様々な不満も高まり、2016年6月の国民投票の結果、離脱支持が51.9%と半数以上を占めた。2017年3月にテレーザ・メイ政権は、正式にEU離脱する意思を通告し、2019年3月に英国はEUから離脱する見込みとなっている。しかし、このブレグジット問題は、ポンドやユーロ下落など、世界中の為替相場に影響をもたらしており、英ポンド関連通貨ペアは勿論、他の通貨ペアにも多大な影響を与える恐れがある。また、市場のボラティリティーが著しく変化し、スプレッドの広がりや急激な価格の変動も予想されるため、多くのブローカーが警戒を呼び掛けている。ブレグジット議会採決は延期となったが、英国は全世界に影響を与える大国であり、ブレグジットの行方や為替への影響に当分目を離すことができない。
作成日
:2018.12.11
最終更新
:2022.07.14
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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