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シンガポールで初となるビットコイン絡みの訴訟

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update 2021.08.31 15:27
シンガポールで初となるビットコイン絡みの訴訟

update 2021.08.31 15:27

取引所の取引取り消しに賠償を求める

リクイディティプロバイダのB2C2 OTC Ltd(本社:86-90 Paul Street, London EC2A 4NE, United Kingdom[1])【以下、B2C2と称す】が、仮想通貨取引所のQuoine株式会社(本社:東京都中央区京橋二丁目2番1号[2])【以下、Quoineと称す】を提訴したことにより、シンガポールで初となるビットコイン(Bitcoin)絡みの裁判が今月21日に開始された。B2C2は、2017年4月にQuoineが合計7回のビットコイン取引を反故にし、同社の許可なく利益をなかったものとしたことに対して損害賠償を求めている。

シンガポール国際商事裁判所(Singapore International Commercial Court)が取り扱う今回のケースは、B2C2が、Quoineのとった措置が両者間の契約条件に違反していたと主張しており、Quoineから3,085BTC(約1,300万ドル)の賠償金を回収しようとしている。事件直前の2017年3月時点では、ビットコイン価格は1,200ドル付近を推移していたが、その後、急激な変動を見せ、2017年12月17日には1万9,783.21ドルの高値を記録した。現在は4,500ドル付近まで値が下がっているとは言え、当初と比べると大幅な価格上昇となっており、今回の訴えをより複雑なものとする要因になっているようだ。B2C2の弁護団は、Quoineが取引所の権限を濫用し、それが信託違反だとして然るべき判決を求めている。B2C2の争点は、Quoineが自社のリスク回避のために本来認められない取引の取り消しを実施し、それに加えて、口座から許可なく資産を控除した事だという。

これに対して、Quoine側は、今回の原因は主にプログラミング上の不具合であったと弁明している。Quoineによると、ビットコインとイーサリアム(Ethereum)の正確な価格情報へのアクセスが出来なくなったことで、プラットフォームでの新しいオーダーの発注を停止しており、このことがB2C2の取引にも影響が及ぶ結果になったという。更にQuoineは、B2C2によって発注された取引が、市場価格よりも約250倍も高い価格を伴い、異常であったことを主張している。B2C2は、2017年4月19日中に、価格の歪みを利用して、わずか1ETHで10BTCを購入する取引を7回も発注していたという。

このような通常考えられない状況であるにも関わらず、B2C2は、取引が不可逆的であるとして、Quoineには取引を取り消す権利がないことを主張している。更に、Quoineの取引条件には、取引所側がそのような操作を実行できる旨の文言がどこにも記載されていないことも指摘した。これに対して、Quoineは、リスク開示書に法って、異常な価格に基づいて実行された如何なる取引も取り消す事ができると反論している。また、B2C2は、Quoineが同社との保管契約に違反して、許可なく仮想通貨の残高を控除または撤回することは間違いであると申し立てた。

B2C2の創設者であるMaxime Boonen氏は、法廷で、マーケットメーカーであるB2C2が取引所の価格を維持する責任を担うべきではないかとの質問を投げかけられたが、Boonen氏の回答は、B2C2には価格に影響を与える力はなく、そのようなことを決める立場にないというものだった。来週には、QuoineのCTOであるAntonio Gomez Lozada氏が法廷に立ち、判決が出る事が予測されるようだが、いずれにせよ、シンガポールとその高等裁判所では歴史的な判例となることだろう。

release date 2018.11.22

出典元:

ニュースコメント

判例の少なさが権利と責任を曖昧にする

今回のケースで、両者の主張が正しいとすると、仮想通貨システムの不完全さが招いた事件だといえる。判決がどう転ぶかは別として、仮想通貨業界は、どこまでが取引所の責任として見なされるかに注目するだろう。もちろん、個別の契約や取引所ごとのポリシーや規約などがあるため、責任範囲はケースバイケースだと言えるが、それでも重要な判例のひとつとなることは間違いない。先日、大手仮想通貨取引所のOKExもビットコインキャッシュの先物契約を強制決済したことが問題となった。合計1億3,500万ドル相当の強制決済によって、大きな損失を受けた顧客も存在し、OKExの強引なリスク回避の方法が批判されているが、どちらに正当性があったのかは定かではない。現状、仮想通貨市場は、権利と責任の所在が曖昧となっており、その理由として判例の少なさも一因となっている事が考えられる。その点、過去からの積み上げがある既存金融業界とは大きな隔たりがあると言えるが、今後、仮想通貨市場でも明確に定義されていくことに期待したい。


Date

作成日

2018.11.22

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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