作成日
:2018.11.20
2021.08.31 15:27
世界でも人気の仮想通貨取引所であるOKEX Technology Company Limited(本社:255 Gloucester Road, Causeway Bay Hong Kong
)【以下、OKExと称す】は、合計1億3,500万ドル相当のビットコインキャッシュの先物取引を強制的に決済したことが原因で、一部投資家が損害を被っていることが明らかになった。OKExは、ビットコインキャッシュが分裂することによる影響を受けて強行な動きに転じたという。OKExの説明によると、ビットコインキャッシュのハードフォークに伴い、スポット市場と先物市場でボラティリティの高まりが観測されており、同社はさらなる価格の乱高下を予測していたようだ。数日前、ビットコインキャッシュは、Bitcoin Cash ABCとBitcoin Cash SVという2つの異なる仮想通貨に分裂したが、実際にOKExの予測通り価格は大幅に下落している。これを受けて、OKExは、権利行使日前に先物取引の強制決済に踏み切っており、あるファンドマネージャーが70万ドルの損失を報告するなど、大規模な被害につながっているようだ。
謝罪と合わせて、OKExは、いくつかの質問に答えており、なぜ最終取引価格を決済の価格として選んだのかに対しては、Bitcoin ABCが十分な市場深度と取引量を確保できておらず、指数を構成するには不十分であったと回答している。また、投資家への事前通告がなかった点に関しては、市場操作的な行動やユーザーの損出を拡大する可能性を考慮して、市場の公平性と安定性を保つことを優先したことで、急な知らせとなってしまったという。
先物取引は、投資家が先物契約に合意することによって、特定の価格で対象となる商品を将来的に購入することを約束するものだ。その利点は、実際に資産を保有することなく価格変動から利益を得るところにあり、他の金融デリバティブと同様に、契約自体を取引することもできる。株などとの違いは、取引の結果、対象となる資産が償還されることはない、という点だ。一部の企業は、ビットコイン先物市場に連動したビットコインETF(Exchange Traded Funds )の販売を考えているというが、これまでに米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)はそれらの商品を認めていない。ビットコイン先物は、その価格変動の激しさから、他の先物商品よりも厳しい制限があり、少数の金融機関のみしか提供していないという。デリバティブを原資産とするデリバティブに関しては、特に不安定であり、リスクが大きすぎると考えられている。
OKExがこのような事態を巻き起こし、顧客の信頼を失ったのは今回が初めてのことではない。2018年3月には、ほとんどの取引量が偽装されたのではないかと疑いをかけられており、OKExはそれを否定しているが、ある仮想通貨トレーダーにより明確な証拠が突きつけられている。8月には、別のトレーダーがOKExが4億6,000万ドルもの損害を出したにも関わらず、同社の保険が7万5,000ドルしか補填せず、非難されている。香港を拠点とするOKExは、今年に入り海外市場へも拡大しているが、提供するビットコインとビットコインキャッシュの先物取引は、どこの承認なども受けていないという。
release date 2018.11.20
今回のOKExの例を見ると、ビットコインキャッシュのハードフォークが全ての元凶となっているが、過去の例から見ても、ハードフォーク後の価格の激しい変動はある程度、予測できただろう。今月初めには、OKExやBinance、Huobiなど、アジアからの投資が流れ込んだことにより、ビットコインキャッシュの価格が一時的に12%の高騰を見せたことが報じられた。その後は、価格の勢いが見事に反転し、下降線を辿っており、典型的な高ボラティリティの様相を示している。このようなハードフォーク関連の展開を見越して、危険を察知した投資家は、事前に投資を引き上げるなどして対処しているが、ポジションを決済することを嫌った投資家はリスクヘッジを試みているようだ。先物取引やオプションといったデリバティブは、その特性からリスクヘッジに適しており、おそらくOKExのビットコインキャッシュ先物も同様の目的で利用されていたことは想像に難くない。今回の件に限っていえば、OKExは、リスクヘッジを期待した投資家の思惑を完全に裏切っており、信頼が大きく揺らいでいると言えるだろう。
作成日
:2018.11.20
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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