作成日
:2018.11.01
2021.08.31 15:22
Morgan Stanley(本社:1585 Broadway, New York, NY 10036, United States
)【以下、モルガン・スタンレーと称す】が公表した最新のレポートで、機関投資家による仮想通貨投資が急増していることが明らかになった。モルガン・スタンレーは、今月31日に「Bitcoin Decrypted: A Brief Tech-in and Implications」という報告書のアップデート版を公開し、過去6ヶ月間のビットコイン市場のトレンドを報告している。その中で特出すべきなのは、機関投資家がビットコインや他の仮想通貨をデジタルキャッシュと定義し、有効な決済システム、また新たな投資対象となる資産クラスとして信頼を寄せ始めているということだ。この傾向は、1年ほど前から強まっており、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ企業などが保有する仮想通貨の資産額は、2016年1月には71億1,000万ドルに達し、増加傾向にあるという。更に報告書では、投資信託大手フィデリティインベストメンツによる新しい機関投資家向けの仮想通貨サービス部門の立ち上げや、機関投資家向けの取引所Seed CXやBitGo、またBinanceの設立、コインベースの直近の資金調達ラウンドなど、大手金融機関が市場に進出し始めている点を指摘している。
また、この報告書では、今何かと話題になっているステーブルコインやその類の仮想通貨についての調査結果も纏められている。調査結果では、ビットコインとテザー(Tether)との通貨ペアでボラティリティが上昇していることが指摘されており、多くの取引所で法定通貨での取引よりも仮想通貨同士の取引が行われていることが要因となっているようだ。その裏付けとして、昨年はビットコインの半分が、他のデジタル資産を取引するために利用されていることが明らかになっている。また、一方でテザーが対ビットコインの取引量を伸ばしているという事実もあるが、これは、投資家が高い手数料が課せられる銀行取引を回避していること、また下落傾向にあるビットコインや他の仮想通貨の代替として米ドルに近い価値を持つテザーへの需要が相対的に増加していることが原因となっているようだ。仮想通貨業界では、独自のステーブルコインを開発することがトレンドとなりつつあるが、存続するためには、低い取引コストと高い流動性、明確な運用スキームが必要になるという。
今回の調査では、規制当局の曖昧な対応や公正な資産管理ルールの欠如、業界に大手金融機関が存在しないという市場環境の問題、ハッキング被害や度重なるハードフォーク、ビットコインよりも安価なソリューションの登場、高いボラティリティなどの技術的な問題などにも言及されており、モルガン・スタンレーは仮想通貨市場の現状にも課題を呈している。
release date 2018.11.01
今年9月にモルガン・スタンレーはプライスリターンスワップという仮想通貨を対象とした投資商品のローンチを計画していることが報じられているが、米国では、モルガン・スタンレーだけではなく、多くの金融企業が大口の企業向けに仮想通貨関連商品を提供することに興味を示している。米国内では、証券を証券取引委員会(SEC)が、また先物やスワップなどのデリバティブ商品全般を米商品先物取引委員会(CFTC)が監督することになっており、後者の仮想通貨に関する対応は非常に寛容的だ。特にデリバティブは複雑なリスクを抱えているため懸念すべき点もあるが、今では、デリバティブ商品への投資は、1000兆ドルもの大きな資産が動くことから、金融業界のメインエンジンとなっていることは明らかである。これを考慮すれば、米国金融界のデリバティブ商品の開発や仮想通貨市場への参入の流れは当分続くことが予想される。
作成日
:2018.11.01
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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