作成日
:2018.10.10
2022.06.07 12:47
米国最大のFXブローカーであるForex.comを運営するGain Capital Holdings Inc(本社:135 US Highway 202/206, Suite 11 Bedminster, NJ 07921, USA
)【以下、GAINと称す】は、大量の自社株買いを実施する方針を打ち出した。GAINは、10月9日よりダッチ・オークション方式(高値から段々と呼び値を下げ、最初に買い手がついた価格で売買が成立する競売方式)にて、自社株を5,000万ドル買い戻す計画である。自社株買いの買戻し価格は、1株当たり7.24ドル、最高値でも1株当たり7.94ドルでの購入を見込んでいるとのことだ。
予定の買い戻し価格は、10月8日時点のGAINの株価は1株当たり6.91ドルで推移していることから、5%のプレミアムが乗ることになる。なお、自社株買いには、機関投資家向けに外貨及び貴金属の取引プラットフォームを提供するGAINのGTXのECN事業を売却して得た資金が充てられる模様だ。GAINは、株式時価総額が急減する中、この自社株買いを通じ株主価値の維持を狙っている。自社株買いは2018年11月6日に終える見込みとなっている。
GAINのCEOであるGlenn Stevens氏は、以下のようにコメントしている。
強固なバランスシートをもとに、我々が自社株買いを通じ株主還元を図ることは、賢明な判断だと確信しております。そして、盤石な財務基盤を活かし、長期に及ぶ株主価値の創造を図るという我々の目標に向かって、成長を追い求め適切に投資を行っていく考えであります。
Glenn Stevens, CEO at GAIN - PR Newswireより引用
Stevens氏は、引き続き経営資源の配分を最適化させる戦略を実行に移す考えのようだ。今回の自社株買いに関しては、GTXの売却により得た純利益である約8,500万ドルによりバランスシートが強固になっていることと、GAINの足元の株価を考慮しての行動であるとの見方を示している。GAINは、この自社株買いを通じ、高い流動性を供給するとともに、GAIN株式の売却を望む投資家に対しては絶好の売り場を提供することになろう。
GAINの株価は2018年の始まりと比べ3分の1ほどに急落している。Forex.comとCity Indexという2つのコーポレートブランドを運営しているが、欧州でのエクスポージャーが高いことが影響しているようだ。8月初頭には、欧州証券市場監督局(The European Securites Markets Authority, ESMA)がリテールブローカー向けにレバレッジ制限等を課す新規制を導入していた。足元発表されたGAINの業績では、2か月連続で取引量の減少が続いており、ESMAによる新規制がリテールブローカーの業績に対し想定以上に大きな影響を与えている模様である。
release date 2018.10.10
GAINは7月から業績が低迷する中、8月に入り自社株式が30%以上下落した。8月といえば、ちょうどリテールブローカーに対するESMAの新規制が適用された時期であり、その後の9月の業績についても取引量の減少が顕著となっている。一方、GAINの経営陣は、健全なバランスシートを活用することに努めており、主要な事業となるリテール事業に全てのリソースを集中させ、株主価値の増加につなげるための戦略として、6月に1億ドルでドイツ証券取引所にGTXのECN事業を売却することを発表した。その後約3か月が経過し、この度のGTX部門の買い戻し計画の発表に至っている。GAINはこの度の買い戻しについて、長期に及ぶ株主価値の創造を図るためとしており、発表後の同社の株価は12%以上上昇したことからも市場では好材料になったことが伺える。しかしながら、1月1日時点での株価と比較した際、依然約18%も低い株価となっていることから、GTX部門の買い戻しによりバランスの取れた経営体質を構築し、さらなる成長と収益性を確保することができるのか、経営陣の舵取りに注目していきたい。
作成日
:2018.10.10
最終更新
:2022.06.07
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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