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キプロス証券取引委員会が顧客へのキャッシュバック制度を禁止

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update 2022.01.28 13:14
キプロス証券取引委員会が顧客へのキャッシュバック制度を禁止

update 2022.01.28 13:14

ブローカーから顧客へのあらゆるインセンティブを禁止

2017年3月16日、キプロス証券取引委員会(本社:27 Diagorou Str. CY-1097 Nicosia, Cyprus)【以下、CySECと称す】では、許認可ブローカーに対し、顧客へのキャッシュバックや、ボーナス等の提供を禁止する通達を発表した。
CySECでは、2016年11月に新規口座開設時のレバレッジを1:50へ大幅引下げを行う通達を発表しており、今回の通達により、CySEC許認可ブローカーは更なる営業活動の制限が必至とされている。

現在、ブローカーでは様々なキャッシュバックやボーナス制度を取り入れているが、CySECが今回禁止事項として定義しているインセンティブは次の通りである。

名 称概 要
入会ボーナス/入金ボーナス新規口座開設時、または入金額のうち一定額(または一定パーセント)が付与される。ボーナス額には上限があり、一定期間のみ有効となる場合もある。ボーナス自体の出金は出来ないが、取引時の証拠金として利用可能。一定数量取引後、出金が可能なケースもある。
ボリュームボーナス決済完了後の取引量に応じて付与される。一定数量取引後、出金が可能となるケースもある。
紹介ボーナス友人・知人を紹介後、紹介された顧客が一定額を入金した場合に付与される。一定数量取引後、出金が可能となるケースもある。
有効化/ウェビナー証明書類送付や個人情報登録完了時、または、ブローカーが主催するウェビナーへの参加が完了した際に付与される。
景品期間中、口座へ入金をすることで、抽選で携帯電話やiPad等といった豪華商品が当たる。
トーナメント・取引イベント期間中に取引を行い、取引量や利益高を競う。上位入賞者には豪華商品や現金を提供。
リスクフリー口座一定期間中、または、所定回数の取引において損失が出た場合、ブローカーが補填を行うことで、顧客がリスク無しに取引を行うことが出来る制度。ただし、入金額は一定数量取引を完了するまで、出金できない。
キャッシュリベート期間中の取引量に応じて、所定金額を顧客へキャッシュバックする制度。
入金額に対する利息提供口座利用者(例:直近3ヶ月で最低1回以上の取引履歴がある)へ、入金額に対して利息を提供する制度。利息は年利とし、いつでも出金が可能。
その他上記に類似するボーナス。

CySEC 2017.03.16 "C194 to CIFs regarding offering bonuses to retail investors"より一部引用

CySECでは、ブローカーに対し、これらのインセンティブを廃止するかわりに、顧客へはより狭いスプレッドといった別のサービスを提供していくことを呼びかけている。

release date 2017.03.17

ニュースコメント

提供サービスの制限によるCySEC所管ブローカーの生きる道は?

今回のボーナス制度廃止命令は、2016年11月のレバレッジ引下げ通達に続き、CySEC所管のブローカーにとっては大きな痛手となることは安易に想像できる。ここ数年、CySEC管理下のブローカーの相次ぐ不祥事によるネガティブなイメージを払拭するため、CySECとしては消費者保護、投資家のリスク回避の観点から、今回の通達に踏み切った。しかし、実際のブローカー側では、上記のようなボーナスは新規顧客の勧誘や、既存顧客のトレードへのモチベーションをあげるためには必要不可欠なサービスとして提供しているのが現状である。これらのサービスが提供できなくなることで、今後の営業活動にも影響を及ぼしかねないという見方が大きい。

CySECでは、各ブローカーに対し、このようなインセンティブを顧客へ提供するのではなく、「低スプレッドを売りにしたサービス」を提供するよう呼びかけているが、これを遂行する場合、顧客へ提供する取引環境の整備には非常に時間と手間がかかるとされている。より快適な取引環境・トレード条件の改善は顧客にとって魅力的ではあるが、各種のボーナス制度と比較した場合、果たして競合他社に今後どのように対抗していけるのか、各ブローカーでは今後の経営方針に迫られている。

今回の通達は、CySEC内での規制となるため、CySEC所管ブローカーへのインパクトは大きい。しかしながら、CySEC以外でのサービス許認可を得ているブローカーについては、各国の証券取引委員会によりルールが定められているため、今回の通達による影響はなく、むしろ新たなビジネスチャンスにつながることも考えられる。CySEC所管ブローカーによっては、他国での営業ライセンスを取得し、引き続き幅広いマーケティング活動が出来るようビジネスを再構築していくブローカーも出てくるであろう。CySECとしては、もちろんこのようなことは折り込み済であろうし、キプロス国内においてFXは大きな産業であることからも、規制を強化することで、自国の首を絞めるようなことは考えがたい。しかしながら、CySECの今後の出方次第で、将来的には、キプロス市場から、FXブローカーが手を引く可能性も考えられる。今後のCySECからの新たな通達、CySEC所管ブローカーの動きに注目していきたい。


Date

作成日

2017.03.16

Update

最終更新

2022.01.28

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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