作成日
:2024.04.30
2024.06.02 17:28
FXで利益を得ることは可能です。さすがに熟練のトレーダーでも未来予測はできませんが、彼らは優位性のある手法を使って利益を生み出しています。
しかし、優位性のある手法を習得することは簡単ではありませんし、時間を要するでしょう。現在トレードで成功している人も、長い期間、熱心に勉強をしてプロフェッショナルといわれる領域に至っています。その過程で大きな損失を出している可能性もあります。
このようにFXは厳しい世界ですが、比較的簡単に理解し実践できるシンプルな手法があります。それがリピート注文(グリッドトレード)です。現在の取引方法で成果が出ていない場合や新しい手法を探している場合は、本記事が参考になるかもしれません。
まずは、なぜリピート注文(グリッドトレード)が効果的な手法といえるのかについて記載します。
i-NET証券は、リピート注文型の自動売買サービス「ループイフダン」で有名な日本のFXブローカーです。同社は2018年4月から2023年3月までのユーザーの取引結果を発表しました。
上記の「91万円」という数値は、期間中にループイフダン口座で運用中のユーザーを対象とし、2018年4月1日と2023年3月31日の各口座の損益額を平均した値です。成績上位のユーザーの平均損益ではなく、すべてのユーザーの平均損益が91万円の利益なのです。
また、5年間の平均損益である点もポイントでしょう。短い期間で大きな利益を上げるということであれば、相場が自分にとって有利に動くことにより実現するかもしれません。しかし、長期にわたって大きな利益を生み出すことは偶然にはできません。
リピート注文(グリッドトレード)では、広い価格帯に複数の注文を同時に仕込んでおき、あらかじめ決められた価格で繰り返し売買を行います。
この手法は為替や株式、仮想通貨(暗号通貨)などの様々な金融商品の取引で利用できます。
上記のチャートを用いて、リピート注文の流れを紹介します。
まずは価格に基づいてチャートを均等に分割します。この例では間隔は100pipsで、1.0900と1.0800、1.0700、1.0600に買いの指値注文を入れておきます。
ユーロドルが1.0900に到達すると指値注文が執行され、さらに価格が下がると1.0800や1.0700、1.0600の指値注文も同様に執行されていきます。エントリーの指値注文の執行後は、各ポジションに対応する決済の指値注文が出されます。
1.0900の買いポジションを保有している場合、価格が1.1000に達したときに決済することになり、このとき100pips分の利益が得られます。同様にユーロドルが1.0600を下回る水準で底を打って上昇し、決済注文が執行されると各ポジションから利益を得ることができます。
そして決済注文が執行されると、次の値動きに備えてエントリーの指値注文が新規で設定されます。
リピート注文では売買を行う水準が固定されています。例えば、1.1000と1.0900で買うことを決めた場合、常に同じ水準でエントリーすることになります。リピート注文での成功率を高めるには、事前にしっかりとエントリー水準を決めておくことが重要だといえます。
MT4やMT5で自動売買プログラム(EA)を利用すると、ユーロドルが1.0600から1.1000までのレンジで動いている間に自動で売買するといったことが可能です。もちろん、手動で注文を入れることもできます。
損失のリスクを抑えるには、同じ価格で取得したポジションを同時に複数持っている、という状況を避けることが重要です。
上記のチャートでは1.0700(①)で買いエントリーをした後に、価格が1.0700(②)に戻っています。しかし、②の地点では新規の買いエントリーを見送っています。再び1.0700でエントリーしているのは、③でのポジション決済後である④のポイントです。
②のような地点で新しくポジションを持つことも可能です。しかしそうする場合、未決済のポジションが過剰に増え、大きな損失を出してしまう恐れがあるため注意が必要です。
リピート注文は一定の範囲内で繰り返される値動きに焦点を当てた手法です。底値で買って高値で売ることは目指しません。
上のチャートのように底で買って高値で売ることは、経験豊富なトレーダーにとっても困難です。一定の範囲で繰り返される値動きを捉えるリピート注文は、多くのトレーダーにとって扱いやすい手法といえるでしょう。
リピート注文で得られる値幅は、レンジの幅や期間によって変化します。上記のチャートでは間隔が100pipsであり、価格が2往復する間にポジションが6回決済されているので、合計600pipsの利益を得られたことになります。
100 pips × 6回 =
600 pips
リピート注文では、横ばいに動く通貨ペアを見つけることが重要です。チャート上の価格が横ばいに動いており、トレンドが発生していないことを確認しましょう。
売りエントリーでリピート注文を行う例も確認しておきましょう。
上記の例では1.1000と1.0900、1.0800、1.0700と100pips間隔で、売りの指値注文が設定されています。ユーロドルが1.0700に達すると指値注文が執行され、値動きによっては1.0800や1.0900、1.1000の指値注文も執行されることになります。
エントリーの指値注文が執行されると、各ポジションに対応する決済の指値注文が出されます。その後に値動きが反転して下降すると決済注文が執行され、利益を得ることができます。また、決済注文が執行されるとエントリーの指値注文が新しく設定されます。
すべての取引手法には長所と短所があります。リピート注文(グリッドトレード)のメリット・デメリットを確認しておきましょう。
リピート注文を使う主なメリットは以下の通りです。
インディケータを使いこなすのは容易ではありません。基礎的なインディケータである単純移動平均線(SMA)でさえ、上手く活用することは難しいものです。ゴールデンクロスで買って、デッドクロスで売るという利確の方法はよく知られていますが、これが損失につながるケースも珍しくありません。
さらに、複数のインディケータを同時に使用するのが推奨される場面もあります。また、上手く活かすにはバックテストが不可欠です。
これに対してリピート注文では、インディケータについて学ぶ必要がありません。リピート注文で重要になるのは、サポートラインとレジスタンスラインを理解することです。拠り所とするサポートライン・レジスタンスラインが決まれば、注文を配置する価格を決定できます。
チャート上に強力なサポートライン・レジスタンスラインが存在する場合、価格がより長く横ばいで推移する可能性が高くなるため、リピート注文に適した環境といえます。
リピート注文では、インディケータではなくサポートライン・レジスタンスラインを拠り所とします。また取引を開始した後は、基本的にエントリー・エグジットの価格を見直す必要がありません。シンプルかつ効果的な手法のため、多くのトレーダーに使用されています。
日本では少なくとも9つのブローカーが、リピート注文のサービスを提供しています。先述の通り、i-NET証券のユーザーは5年間で平均して91万円の利益を上げています。
なお、MT4やMT5で自動売買プログラム(EA)を使用すれば、海外FX業者でもリピート注文に基づいた自動売買を行えます。また、好きなEAを使って取引することができる点もMT4やMT5を使うメリットです。
基本的にリピート注文ではエントリーとエグジットの価格を設定した後は、「次の注文価格をどうするか」などと考える必要がありません。価格がレジスタンスラインを超えたり、サポートラインを下回ったりした場合に取引を止めるというオペレーションで、他の手法と比較してストレスを軽減しやすく、長期的に取引に取り組みやすいでしょう。
一方で裁量取引では、値動きによってエントリーとエグジットの水準が変化します。特定の値動きにあまり詳しくない場合やインディケータに不慣れな部分がある場合、取引のシグナルが出ていても取引をためらってしまうこともあるでしょう。
このような状況では大きなストレスを感じる可能性があり、適切な判断を下せなくなってしまう恐れがあります。
具体的な状況をイメージしやすいように、典型的な裁量取引の手法を例に挙げてストレスを感じやすいケースについて記載します。
上記のチャートは、上昇する前に価格が横ばいに動いていたことを示しています。このチャートにある値動きがある場合、どのタイミングで買い注文を入れようと考えるでしょうか。
教科書的なブレイクアウト系の手法では、上記のオレンジの点の辺りでエントリーします。
横ばいの相場では同じような水準で値動きが反転して、水平なレジスタンスライン(青い線)が形成されます。一般的にはそのレジスタンスラインを価格上に抜けたら、買い注文のチャンスとなります。
しかし、この考え方にはいくつか問題があります。第一に、価格が横ばいに推移しており、上記の赤い長方形の範囲内に収まっているときは取引ができません。価格がレジスタンスラインを明確に上に抜ける状況を待たなければいけません。
レンジが続く状況下では取引ができず、それがストレスの増加につながることがあります。
また、未来の値動きを正確に予測することは不可能です。エントリー後は、期待した方向に価格が動くのを待つしかありません。
期待に反してエントリー後に価格が戻ってくると、含み損を抱えることになります。これはFXではよくあることで、過去に同じようなパターンを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
一方で、ここまで見てきた値動きの中で複数回利益を得たい場合、リピート注文は有望な取引手法となるでしょう。ブレイクアウトを狙った裁量取引を行う場合とは異なり、リピート注文であれば、上記画像のように4度利食いをすることもできます。
リピート注文では、損失が発生しても利益を残せる可能性があります。上記のチャートは、2つの買いポジション(AとB)を保有した後に、価格が一定水準まで下がったことで両方のポジションを損切りしたという場面です。
損切りになってはいますが、価格がレンジで推移している間に4回利益を得ているため、トータルでは利益を残せる可能性があります。損失が発生してもそれまでに積み上げた利益があるため、トータルの損益はプラスになるケースもあるのです。
リピート注文は、トレンドフォローのブレイクアウト手法などのように1回の取引で大きな利益を上げることにはあまり向いていないでしょう。しかし、為替相場はレンジで推移することも多いため、リピート注文戦略を適切に実行できればコツコツと利益を重ねていき、損切りによって生じた損失を差し引いても利益を残せる可能性があります。
リピート注文の典型的なデメリットは以下の通りです。
リピート注文の仕組みで取引をする場合、特に取引の初期段階では利益よりも含み損のほうが大きい状態が続きます。
上記のチャートでは1.0900で買い始め、さらに価格が下がったため1.0800や1.0700、1.0600でも買い注文が執行されました。価格が1.0600を下回った場合、4つのポジションで含み損が発生します。仕組み上、リピート注文では含み損を抱えた状態になりがちです。
しかし、価格が想定レンジを抜けずに上昇してきたら、ポジションが抱えていた含み損は含み益に変わり、いずれは利益を得られることになるでしょう。このプロセスを繰り返しながら利益を積み重ねることで、利益が含み損の合計額を上回るようになります。
含み損を抱えたくない場合は、以下のチャートのように価格が底値に達したときにエントリーする必要があります。
しかし、これは可能でしょうか。先に解説したように、経験豊富なトレーダーにとっても底や天井を正確に捉えることは困難でしょう。底や天井を捉える必要がない点が、リピート注文の利点ともいえます。
リピート注文では十分な利益を得る前に損切りになると、損益がトータルでマイナスになる可能性があります。リピート注文で利益を生み出していく上では、強いサポートラインやレジスタンスラインを見つけることが重要です。
上記のチャートは、最大4つのポジションを保有する場合の例です。
100pipsごとに1ロットの買い注文を設定するとき、合計で最大4ロットのポジションを保有することになります。4ロットが大きすぎると感じる場合は、各価格での注文のロット数を減らすことを検討することになります。
ただし、ロット数を減らすと利食いによって得られる利益額も減少します。
リピート注文では同時に複数のポジションを保有することを前提としています。注文1回あたりのロット数を抑えることになり、成績の良い裁量取引手法よりも利益を積み上げていくのに時間がかかります。
リピート注文(グリッドトレード)は、インディケータに関する知識を必要としないシンプルな手法です。注文を設定した後は、単純なルールに従って行動するだけです。
もちろん利益が得られることの保証はできませんが、i-NET証券の事例はリピート注文が有効な手法である可能性を示しています。リピート注文は学ぶ価値のある手法だといえるのではないでしょうか。
作成日
:2024.04.30
最終更新
:2024.06.02
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
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