作成日
:2023.01.01
2023.03.20 12:24
自動売買では、「プロフィットファクター」「期待利得」など特殊な用語が多く出てきますね。EAの成績を示す「バックテスト」で使われる用語であり、EAを購入するかどうか検討する際の重要な情報になりますので、正しく理解しておくことが必要です。
この記事では、そもそもEAとは?といった基本的な内容から、バックテストの成績を示す用語まで詳しく解説していきます。
EAとは、MetaQuotes社の開発したチャートソフトであるMetaTrader4(MT4)や、その次世代版であるMetaTrader5(MT5)で動作する自動売買プログラムのことで、「Expert Advisor」の略称です。一定のルールに従って機械的なトレードをすることをシステムトレードといいますが、EAはそれをプログラムとして自動化したものです。世界中の投資家が多くのEAを開発しており、有償、無償のものが多数インターネット上で販売、配布されています。
EAを使用するメリットは、主に三つあります。一つ目は、相場を常にチェックしておく必要はなく、プログラムが24時間自動的に売買をしてくれることです。二つ目は、プログラムの内容に沿った機械的なトレードが行われるので、裁量トレードとは異なり人間的な感情が介在しないことです。そして三つ目は、FXに精通した人が開発したEAを使うことにより、FX初心者でも熟練の投資家と同じ売買行動ができることです。
EAのデメリットとしては、相場環境の変化に適応することができず半永久的に使えるものが少ないことや、突発的な出来事による相場の急激な変動には対応しづらいといった点が挙げられます。また、EAはMT4/MT5そのものが立ち上がっていなければ動作しません。不慮の出来事でPCの電源が落ちた場合やMT4/MT5が終了してしまった場合は、MT4/MT5が再度立ち上げられるまで自動売買は行われないので注意が必要です。
ここからは、以下の基本的な用語を解説します。
バックテストとは、EAの売買戦略を過去の値動きに当てはめてみて、どのような成績になるのかを検証する作業のことです。
「もし過去のある期間に稼働させていたらどうなっていたか」という結果を計算します。口座残高の増減だけでなく、勝率、損益率、最大連敗数、最大ドローダウンなどさまざまな成績を知ることができ、EAの運用計画に役立てることができます。
ストラテジーテスターとは、MT4・MT5に内蔵されたバックテスト機能です。販売されているほとんどのEAには、このストラテジーテスターで行ったバックテストの結果が公開されています。
利用者は購入前、または購入後に、自分でストラテジーテスターを使ってバックテストを行ってみて、成績を確認するのが一般的です。
バックテストの方法はこちらのページで紹介しています。
最適化とは、EAのパラメータを変更し、より多くの利益が上がるように調整する作業のことです。EAのパラメーターの数値を少しずつ変更して複数回バックテストを行い、成績の良いパラメータを採用することができます。最適化を意味する英語で、「オプティマイズ」と呼ばれる場合もあります。
MT4、MT5共に、最適化はストラテジーテスター機能を用いて自動で行うことができます。MT4のストラテジーテスターでは、指定した範囲のパラメータの全ての組み合わせでバックテストを行い、成績の良いパラメータから順に並べ替えを行います。一方、MT5では新しい機能が追加され、MT4と同様に全ての組み合わせでバックテストを行う「完全アルゴリズム」と、一部の組み合わせのみ選別して効率的にバックテストを行う「遺伝的アルゴリズム」のどちらかを選択できるようになりました。
最適化で行ったバックテストの結果は、口座残高が多い順、ドローダウンが低い順など、ユーザーが設定した順番で並び替えることができます。必ずしも口座残高が高いものが最も優れているというわけではなく、成績の安定性も重要です。全てのバックテスト結果の中から、自分の求める条件に合う結果を選んでパラメータを採用します。
EAの最適化は、パフォーマンスを少しでも向上させるために行うものですが、それを追求し過ぎると、バックテストに使用しているヒストリカルデータの期間では良い成績となるものの、その他の期間では成績の悪い取引戦略になってしまう恐れがあります。これを「過剰最適化」と呼びます。
EAの購入を検討する際には、販売者が公開しているバックテスト結果が過剰最適化されたものでないかどうかも検討することが望ましいです。しかし、過剰最適化されたものかどうかを単一のバックテスト結果から判断することは難しいです。
期間や一部のパラメータなどを変えたバックテストを自分で行うと、判断がしやすくなるため、バックテスト専用EAを提供するなど、購入前に自分でバックテストができる販売形式の方が好まれます。
仮想専用サーバ(VPS)は、EAを24時間稼働させるためにサーバをレンタルするサービスです。
実際には大きな容量を持ったサーバを小分けにして、それぞれのユーザーが専用サーバのように利用できるサービスのことで、英語では「Virtual Private Server」と表記され、その略称としてVPSと呼ばれます。
EAは、売買チャンスを逃さないため、通常は24時間稼働させます。EAを稼働させるには、MT4/MT5本体を立ち上げておく必要があるため、MT4/MT5をインストールさせたPCも24時間稼働させておく必要があります。しかし、それではPCの消耗や意図しない停止などにつながるため、仮想専用サーバが利用されます。
仮想専用サーバには、PCやモバイルデバイスからリモートアクセスを行い、操作します。サーバで使用するOSを選択できるようにしているサービスが多く、Windows OSなど使い慣れたものを選択すれば、特別な知識を持っていなくても利用することができるため、EA利用者の間で広く使用されています。
月額数千円程度で利用できるプランが多く、OSの性能が上がるほど利用料金も高額になりますが、その分処理能力が上がり、多くのEAを稼働させることができるようになります。
注文を出した場所とFX会社のサーバとの間の物理的距離が遠ければ遠いほど、通信の遅延(レイテンシー)が発生しやすくなり、その結果スリッページも発生しやすくなります。そのため、VPSサービスを選ぶ際には、FX会社のサーバの近くに立地するVPSが好まれます。レイテンシーは、例えば日本と欧州の間だと200ミリ秒(ミリ秒=1秒の1,000分の1)程度です。
マジックナンバーとは、注文を行った主体を示す識別番号のことです。注文にマジックナンバーを付与することで、どのEAから出された注文なのか、もしくは手動で出された注文なのかを管理しています。
通常EAのパラメータには、そのEAが行った売買注文に付与する識別番号を指定する項目が設定されています。EA特有のものに思われがちですが、マジックナンバーは全ての注文に付与されており、手動で注文を出したときには「0(ゼロ)」がマジックナンバーとして割り当てられます。そのため、EAにマジックナンバーを設定するときは通常0以外の番号が使用されます。
複数のEAを同時に稼働させる場合はそれぞれのマジックナンバーを別の番号に設定する必要があります。マジックナンバーが重複すると、別のEAがエントリー注文を出したポジションに対して、注文変更や決済を行ってしまうなどの誤作動の原因になります。
バックテスト結果では、口座残高だけでなく、様々な項目でEAの成績を確認することができます。このうち、どのような数値なのかがわかりにくい項目について、詳しく解説していきます。
期待利得とは、1回の取引で期待できる利益のことです。純利益を取引回数で割って求めます。自動売買やシステムトレード、売買戦略などを評価する際に用いられ、期待利得の数値が大きいほど、スプレッドや取引手数料などの取引コストの影響を受けにくくなるため、安定して利益を上げることができます。
期待利得は、以下の式で計算されます。
期待利得 =
純利益 ÷ 取引回数
例えば、取引回数が5回で総利益が10万円、総損失が8万円だった場合、純利益2万円を取引回数5回で割るため、期待利得は4,000円となります。
期待利得は、純利益を取引回数で割るため、利益が出たトレードだけではなく、損失となったトレードも含めて1回あたりの取引で期待できる利益金額を算出します。このため、勝率が低い戦略ほど期待利得は低くなります。また、利益確定幅が狭い戦略ほど数値が低くなる傾向もあるため、スキャルピングなどの短期のトレードスタイルよりは、デイトレードやスイングトレードなどで数値が高くなりやすいです。
MT4・MT5のバックテスト機能で期待利得を算出する際は、ロット(取引量)の設定で数値が変動することに注意が必要です。総利益と総損失の比率で計算されるプロフィットファクターなどは、ロット設定を変更しても数値に影響はありませんが、純利益を取引回数で割る期待利得は、1回あたりの取引量が増えるほど純利益が大きくなり、数値が変動します。異なる戦略同士の期待利得を比較したい場合は、ロット設定を揃える必要があります。
プロフィットファクターとは、総利益と総損失の比率のことです。総損失に対して、どれくらいの割合の総利益を上げたかを示します。英語では「profit factor」と表記し、その略称としてPFと呼ばれることもあります。プロフィットファクターが1.0以上であれば、総利益が総損失を上回る取引戦略であることが分かります。
プロフィットファクターは、以下の式で計算されます。
プロフィットファクター =
総利益 ÷ 総損失
例えば、総利益が10万円で総損失が8万円だった場合、プロフィットファクターは1.25となります。
プロフィットファクターは1.0を上回るほど良い成績といえますが、上回りすぎるのも問題があります。2.0や3.0を超えるものは、過剰最適化(過去の値動きへの当てはめが過ぎること)の可能性があり、どんな相場にも対応する汎用性に欠けるといわれています。
リスクリワードレシオとは、「損失と利益の比率」という意味で、利益が出たトレード(勝ちトレード)の平均利益額と、損失が出たトレード(負けトレード)の平均損失額の比率のことをいいます。
リスクリワードレシオは、以下の式で計算されます。
リスクリワードレシオ =
勝ちトレードの平均利益 ÷ 負けトレードの平均損失
リスクリワードレシオの数値が大きければ大きいほど、勝ちトレードの平均利益が大きい、つまり損小利大のトレードとなっていることを示します。取引戦略の有効性を検証する際によく用いられる指標です。
プロフィットファクターとリスクリワードレシオは、計算方法が似ています。プロフィットが総利益を総損失で割るのに対し、リスクリワードレシオでは平均利益を平均損失で割ります。プロフィットファクターは総合的に利益が出ているのかを示す数値ですが、リスクリワードレシオはEAのタイプが損小利大なのか利小損大なのかを示す数値です。
勝ちトレードの平均利益額と負けトレードの平均損失額が等しければリスクリワードレシオは1となります。リスクリワードレシオの数値が1.0より小さければ取引1回当たりの利益が少なく損失が大きいこと、1.0より大きければ取引1回当たりの利益が大きく損失が小さいということが分かります。
リスクリワードは平均利益と平均損失を比較するものであるため、この数値だけでは、トータルで利益が出ている状態かどうかは把握できません。どの程度利益が出ているかは、リスクリワードと勝率の両方によって計算されます。
例えば、リスクリワードレシオが低い場合、勝ちトレードでの利益は小さく、負けトレードでは大きな損失が出ている状態です。いわゆる「損大利小」の状態ですが、この場合でも勝率が高ければ合計の収支はプラスになります。反対に、リスクリワードレシオが高い場合、勝ちトレードでの利益が大きく、負けトレードでの損失は少ない損小利大の状態です。この場合は、勝率が低くても全体としては利益を上げることができます。
取引戦略の見直しによって、リスクリワードレシオを上げることは可能です。損小利大を実現する方法としては、損失を限定する「損切り」や、利益を伸ばすための「利益確定」タイミングの見直しなどが考えられます。損切りが多い戦略となっている場合は、より確度の高い売買シグナルを見つけ出し、トレード回数を絞ることも有益です。
ドローダウンとは、資産運用の損益グラフにおいて、最高値をつけたところからの下落率やその金額のことをいいます。例えば、資産が最大1,000万円まで増えていたところから800万円まで、差額としては200万円落ち込んでしまった場合、1,000万円に対する200万円ということで20%のドローダウンと表現します。
損益グラフの中で最も下落幅が大きいドローダウンを「最大ドローダウン」と呼び、資産運用計画を立てる際に重視されます。
ドローダウンは、EAのバックテストにおいても重要視されます。一定期間内の最大ドローダウンは、実際の運用で発生する可能性のあるリスクの度合いとなるからです。例えば、バックテストの結果「最大ドローダウン30%」となった場合、連敗したり、一度に大きな損失を出したりして証拠金が最大で30%減少する期間があったということであり、これと同等のドローダウンは起こり得るものとして運用する計画を立てる必要があります。
最大ドローダウンが小さいことは、一度に大きな損失が出ていないことを意味します。小さな勝ち負けを繰り返して資産総額があまり増えない場合もありますので、最小ドローダウンが小さいからといって必ずしも運用成績が良いとは限りませんが、大きな損失が出ないということは、安心して運用できるというメリットがあります。
なお、MT4・MT5のバックテストには以下の種類のドローダウンが表示されます。
項目 | 意味 |
---|---|
絶対ドローダウン | 初期金額と比較した最大のドローダウン幅 |
最大ドローダウン | 資産の最大金額と比較した最大のドローダウン幅 |
相対ドローダウン | 資産の最大金額と比較した最大のドローダウン幅の比率 |
項目 | 意味 |
---|---|
絶対ドローダウン | 初期金額と比較した最大のドローダウン幅 |
最大ドローダウン | 資産の最大金額と比較した最大のドローダウン幅 |
相対ドローダウン | 資産の最大金額と比較した最大のドローダウン幅の比率 |
最大ドローダウンと相対ドローダウンは、金額で表すかパーセンテージで表すかの違いです。一方絶対ドローダウンは初期金額と比較したドローダウン幅を示す事が特徴です。一般的に、最大ドローダウンの方が重視されます。
リカバリーファクターとは、損失のリスクに対して期待できる利益を示した数値です。「リスクリターン率」とも呼ばれ、純利益を最大ドローダウンで割って算出します。この数値が大きいほど、リスクが抑えられる一方でリターンが大きい傾向があります。
リカバリーファクター =
純利益 ÷ 最大ドローダウン
例えば、純利益が10万円で最大ドローダウンが1万円だった場合、リカバリーファクターは10となります。
このリカバリーファクターは、一般的な目安として10.0以上であれば優れていると判断でき、最低限5.0以上であることが重視されます。
EAによる自動売買には、ドローダウンが付き物です。どんなに優秀なEAであっても勝ち続けることはなく、ドローダウンが発生します。たとえリカバリーファクターが大きいからといって最大ドローダウンが小さいとは限らず、分子である純利益が大きいだけかもしれないので確認が必要です。自動売買では運用中にロスカットになってしまわないことが重要なので、入念な資金計画を心がけましょう。
シャープレシオとは、投資のリスクに対するリターンの大きさがどれだけあるのかを示す指標のことです。「シャープ」という名称は、シャープレシオの考案者であるウィリアム・シャープ氏に由来しています。
シャープレシオは、以下の式で計算されます。
シャープレシオ =
(平均リターン - 無リスク資産利子率)÷ リスク(標準偏差)
計算式は複雑ですが、リターンをリスクで割るのが大まかな考え方で、数値が大きいほど運用効率が高いことを示します。ここでいうリスクはばらつき(価格変動の大きさ)のことで、標準偏差を用いて算出します。
無リスク資産利子率に関しては、日本では無担保コールレート(短期金融市場における金利)が用いられることが多いですが、MT4・MT5のバックテストでは「0」となります。つまり、実質的には「平均リターン ÷ リスク(標準偏差)」で計算されます。
計算方法が複雑なこともあり、EAの成績を検討する際、重視する人はそれほど多くない指標です。一般的にシャープレシオが「1」を超えていると優秀であるとされています。
EA販売サイトでは、直近の成績が良いEAが大きく取り上げられることもあります。しかし、長期的に安定して運用できるかが大切です。バックテスト結果の見方を覚えると、安定運用できるEAを探す際の判断材料にすることができるようになります。
この記事を参考に、バックテストの見方に詳しくなりましょう!
作成日
:2023.01.01
最終更新
:2023.03.20
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
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