作成日
:2023.09.13
2023.09.13 17:36
USDY(US Dollar Yield Token)は、保有するだけで資産価値が増えるトークンです。機関投資家向けに投資商品を提供している Ondo Finance がサービスを展開しており、米国法に則った金融商品として注目を集めています。
当記事では、USDYの仕組みや利率などについて解説します。
USDYはトークンの一種で、イーサリアムブロックチェーン上で流通します。そして、その価値は米国の短期国債と要求払い預金で保護されています。現金同等物でトークンの価値が保証されており、この点でUSDT(テザー)などのステーブルコインに似ています。
USDTとの違いもあります。USDYの場合、国債や預金から得られる利子・利息は、USDY所有者のものになります。すなわち、USDYを保有すると運用収入を得られ、初期設定では年率5%になっています。
USDYを開発したのは Ondo Finance ですが、実際に発行するのは100%子会社の Ondo USDY LLC です。この会社は、USDYの発行や管理などのために作られました。
ユーザーがUSDCを入金し、Ondo USDY LLC は債券としてUSDYを発行します。そして、Ondo USDY LLC は米短期国債や要求払い預金で運用します。運用益から手数料を引いた残りが、ユーザーのものになります。
なお、USDYは自由に送金できますが、送金先は登録済みのアドレスに限定されています。
米短期債利回りや預金金利は変化しますので、USDYの利回りも時とともに変わっていきます。利回りは Ondo Finance が月初に発表し、初回の運用利回りは年率5.1%に設定されています。運用コストの0.1%を除いた残り5.0%が、USDY保有者のものになります。
この運用益は複利利回り(APY)であり、収益は毎日複利運用されます。
USDYの運用益の分配は、USDY価格の上昇で行なわれます。すなわち、新規にUSDYが発行されるのではなく、分配額相当の金額をUSDY価格に反映します。将来的には、価格上昇でなく、USDYを新規発行する方式の選択も可能になる予定です。
この差は、stETHとwstETHの違いと同様です。
そして、ユーザーがUSDYを償還すると、米ドルの現金を手にすることができます。振込先は米国以外の銀行口座であり、ステーブルコインで受け取ることはできません。
資産運用には、リスクがつきものです。そこで、安全を確保するための仕組みを紹介します。
USDYの運用先には、米短期国債が含まれます。米国債は世界で最高水準の信頼度を誇り、満期まで保有すれば額面で償還されます。さらに、満期まで最大3か月ですので、価格変動による含み損を重視する必要はないかもしれません。
しかし、USDYではこの含み損対策も実施しています。顧客が入金した金額の3%相当額を、Ondo Finance が追加入金します。こうすることで、3%以内の価格変動ならば顧客資産が含み損になることはありません。
USDYの発行母体は Ondo USDY LLC であり、Ondo Finance ではありません。これも、顧客資産の安全を保つための仕組みです。
仮に、何らかの理由で Ondo Finance が経営破綻し、負債を抱えたとします。債権者は Ondo Finance から資金回収を図るものの、Ondo USDY LLC の顧客資産を回収できないようになっています。
また、Ondo USDY LLC は顧客資産の管理や運用に特化しており、他の業務をせず、従業員も採用していません。USDTなどのステーブルコインにはこの仕組みがなく、破綻時の備えはUSDYが優れています。
画像引用:Ankura Trust Company
米国の信託会社 Ankura が、USDYについて監査します。USDYをローンチして60日が経過すると、資産に関する日報を毎日公開する予定です。また、何らかの理由で Ondo USDY LLC が顧客資産を返金できなくなる場合、同社が短期国債や要求払い預金を現金化して顧客に返金します。
USDYは米国の会社 Ondo Finance が開発しており、同社は米国の法律に基づいて開発しています。仮想通貨プロジェクトは各国の規制の谷間で活動する例が少なくありませんが、USDYは米国法に則っており、この点でUSDT等と同じです。
画像引用:Ondo Finance
Ondo Financeは、2021年にゴールドマンサックス出身者らによって設立されました。機関投資家向けにブロックチェーン対応の投資商品を開発しており、今まで以下の商品をリリースしています。
金融商品 | 商品説明 |
---|---|
OUSG | 顧客資産をiシェアーズ米国短期国債ETFで運用 |
OMMF | 顧客資産をMMF(マネー・マーケット・ファンド)で運用 |
仮想通貨の誕生以来、多くの人々が仮想通貨に惹きつけられてきました。しかし、仮想通貨は価格変動率が高く、価値の保存や交換手段としては不向きな面があります。このため、ビットコイン(BTC)の価値を測る際も、BTCそのものでなく円やドルに換算して考えるのが通常です。
この問題を解決するために、USDTなどステーブルコインが登場しました。USDTは米ドルを担保として保有しており、米ドルと価値が連動します。また、ユーザーはいつでも発行会社に対してUSDTの発行や償還を要求できます。
しかし、USDTを保有しても、ユーザーは利息等を得られません。このため、ただ保有するだけだと物価上昇率の分だけ価値が目減りすることになり、交換価値以上の使い道は多くありません。
レンディング等で運用することは可能ですが、ハッキング等で資産を失うリスクがある割に利率は低く、USDTでの運用は有利だと言えません。
また、何らかの理由でテザー社が破綻する場合、USDT保有者にほどなく資産が返還されるかどうか分かりません。
これらの問題を解決するために、USDYが登場しました。このトークンは、保有するだけで資産が増え、そして、運用会社が経営破綻しても顧客に資産が返還されます。
USDYは多くのメリットを有する一方、デメリットもあります。
USDYは米国以外の居住者向け金融商品です。しかし、米国以外ならどこからでも買えるというわけではなく、日本居住者も購入できません。
USDYは資産運用に焦点を当てており、送金需要は高くない可能性があります。しかし、自由に送金できないのはデメリットと言えます。送金先の指定は、オンチェーン上のアローリスト(allow list)に掲載されたアドレスのみ可能です。
この金融商品は米国法に基づいて発行されており、USDYを購入してから送金できるようになるまでに、40日から50日が必要とされています。
米短期証券を適正価格で直接購入できる場合、USDYの購入はデメリットが目立つかもしれません。USDYはブロックチェーン上で発行されますので、ブロックチェーンにかかるリスクがあります。また、Ondo USDY LLC を経由して購入するので、手数料のコストなども発生します。
USDT等のステーブルコインは便利な一方、保有するだけでは利益を生みません。DeFiで運用できますが、ハッキングリスクの大きさの割に利率が低い傾向があります。
この点で、USDYは大きな潜在需要があるかもしれません。USDYの仕組み自体はわかりやすく、将来、似たような金融商品が日本でも売買できるようになることに期待です。
作成日
:2023.09.13
最終更新
:2023.09.13
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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