作成日
:2023.07.31
2024.06.11 17:30
ドルインデックスについて関心があるものの、ドル円との関係がよく分からないという人も多いかもしれません。上記のような疑問を持っている人に向けて、本記事ではドルインデックスとドル円の相関関係やそれをトレードに活用する方法について解説していきます。
相関関係の理解は取引戦略策定に重要であり、ドルインデックスとドル円の動きを理解することでより的確な投資判断が可能になります。基本的なところから丁寧に解説していきますので、興味のある方はぜひご一読ください。
ドルインデックスとは、米ドルの価値を他の主要通貨と比較した指標です。下のチャートは、ドルインデックスの日足チャートです。
ドルインデックスは、米ドルが世界の為替市場においてどのぐらい強いか、弱いかを示す、ひとつのバロメーターとなります。ドルインデックスにはいくつか種類がありますが、インターコンチネンタル取引所(ICE)が公表している「The ICE U.S. Dollar Index」が有名でしょう。
ドルインデックスは、米ドルと6つの主要通貨との間の為替レートに基づいて、以下のように計算されます。
USDX =
50.14348112 × EURUSDの -0.576乗 × USDJPYの0.136乗 × GBPUSDの -0.119乗 × USDCADの0.091乗 × USDSEKの0.042乗 × USDCHFの0.036乗
このように、6つの通貨ペアに対して異なるウェイトを割り当てた上で、米ドルの価値を算出する仕組みです。具体的なウェイトは以下の通りです。
ユーロドル | 57.6% |
---|---|
ドル円 | 13.6% |
ポンドドル | 11.9% |
米ドルカナダドル | 9.1% |
ドルスウェーデンクローナ | 4.2% |
ドルスイスフラン | 3.6% |
上記の通りユーロドルの影響が最も大きくなっています。6つの通貨ペアの為替レートにおいて、米ドルが高くなる方向に動けば、ドルインデックスは上昇します。
つまり、ドルインデックスが上昇すると、それは米ドルが他の主要通貨に対して強くなっていることを示しています。反対にドルインデックスが下降すると、米ドルが他の主要通貨に対して弱くなっていることを示しているということです。
ドル円とは、米ドル(USD)と日本円(JPY)の間の為替レートを意味します。また為替レートとは一国の通貨を他国の通貨に換算する際のレートのことです。下のチャートは、ドル円のレートをグラフ化した日足チャートです。
次の計算式のようにドル円の価格は1米ドルの価値が日本円でいくらになるかを示しています。
ドル円 =
1米ドルの価値 ÷ 1円の価値
ドル円のレートを決めるのは、為替市場における需要と供給のバランスです。具体的には、米ドルの需要が日本円の需要を上回ればドル円の価格は上昇し、日本円の需要がアメリカドルの需要を上回ればドル円の価格は下降していきます。
ドルインデックスの計算式にあった通り、ドル円はドルインデックスにおいて13.6%のウェイトを占めています。これは非常に重要なポイントなので、ドルインデックスとドル円の相関関係について考える際は、しっかり頭に入れておきましょう。
現在の世界の基軸通貨は米ドルなので、米ドルとそれ以外の通貨がペアになったものを「ドルストレート」もしくは「ストレートペア」と呼びます。そして米ドルを介さない通貨ペアのことを「クロスペア」と呼び、対円ペアは「クロス円」、対ユーロペアは「ユーロクロス」と呼ばれます。
ドルインデックスとドル円の間には、一般的に強い相関関係が存在するといわれています。つまり、ドルインデックスが変動したときには、ドル円も同じ方向に変動する傾向があるということです。
例えば、ドルインデックスが上昇しているときには、ドル円はドルインデックスに連動して上昇しやすくなります。逆にドルインデックスが下降しているときには、ドル円はドルインデックスに連動して下降しやすくなるわけです。
このように、ドルインデックスとドル円は、基本的には同じ方向に動きやすい性質があります。この基本的な関係をしっかり押さえた上で、もう少し細かく見ていきましょう。
なぜ、ドルインデックスとドル円には相関関係があるのか疑問に思っている人もいるでしょう。次の2点を考慮すれば理由を理解できるはずです。
ドルインデックスは計算式でも見た通り、米ドルに関係する主要な6つの通貨ペアを使って、米ドルの価値を算出した指数です。一方でドル円は、米ドルの単位あたりの価値が日本円の単位あたりの価値の何倍かを示しています。
つまり、ドルインデックスが上昇すれば、米ドルの価値が上昇していることになります。仮に日本円の価値が変わらない状態で米ドルの価値が上昇すれば、日本円に対する米ドルの相対的な価値もより高くなるため、ドル円も上昇することになるわけです。
逆に、ドルインデックスが下降したときは米ドルの価値が下がっている状態です。日本円の価値が変わらなければドル円のレートも下降すると考えられます。
円安とは、他国通貨と比較して日本円の価値が安くなることです。米ドル円のレートは「1ドルが何円か」を示すものなので、円安になるとレートが上昇します。反対に円高は、他国通貨と比較して日本円の価値が高くなることです。円高になるとドル円のレートは下降します。
米ドルの価値の変動に注目して解説しましたが、ドル円は日本円の価値の変動にも影響を受ける点に留意しましょう。日本円の価値の変動状況によっては、ドルインデックスとドル円が逆方向に動くこともあり得ます。
ドルインデックスとドル円は相関関係にあるものの、全く同じ動きをするというわけではない点に注意しましょう。
ドルインデックスの算出に用いられる通貨ペアの影響力は均等ではありません。先述の計算式からも分かるように、ドルインデックスは各通貨ペアに対して、以下のように異なるウェイトを割り当てているからです。
通貨ペアがドルインデックスに与える影響の大きさは、このウェイトの大きさによって決まります。ウェイトの大きい通貨ペアの動きは、ドルインデックスの動きにも大きく影響を与えるわけです。ドル円のウェイトは2番目に大きく、構成通貨の13.6%を占めています。
そのため、ドル円の動きはドルインデックスの動きに比較的大きな影響を与えるといえるでしょう。ただし、各通貨ペアのウェイトのバランスを見てみると、ユーロが57.6%と非常に大きくなっているため、ドルインデックスはユーロドルの動きに対して特に連動しやすい傾向にあります。
このように、ドルインデックスにおけるドル円の影響力は比較的高いといえるでしょう。しかし、ドルインデックスはドル円以外の通貨ペアの動きも考慮しており、ドル円の動きだけがドルインデックス全体の動きを決定するわけではありません。
特にユーロドルの影響力が圧倒的に大きいという点を考慮しながら、ドルインデックスとドル円の相関関係を見る必要があります。
FXは平日であれば24時間取引できますが、ドルインデックスとドル円の相関関係の強さは常に一定ではありません。市場の状況や時間によって変動することがあります。具体的には、為替市場が米ドル主導で動いているときは相関関係が強くなり、米ドル主導で動いていないときは相関関係が弱まります。
例えば、米国のニューヨーク市場を中心に取引が行われる夜間は、ドルインデックスとドル円の相関性が強くなることがあります。この時間帯には米ドルの取引が活発に行われるため、通貨の価値変動の中心が米ドルになりやすいからです。
また、米国に関する重要な経済指標の発表があると、米ドルに対する投資家の見方が変わり、ドルインデックスとドル円の相関が強くなることもあります。
このように、日本円の価値があまり変わらなくても米ドルの価値が大きく変わることになるため、ドルインデックスとドル円が同じような動きをしやすくなるわけです。逆に、市場関係者が他の通貨ペアに注目しやすい時間帯においては、ドルインデックスとドル円の相関関係が弱まりやすくなります。
ドルインデックスとドル円の動きに影響を与える要素は数多くあります。その中でも特に頭に入れておきたいのが、金融政策や経済指標です。これらの要素がどのように相関関係に影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。
各国の中央銀行が行う金融政策は、通貨の価値に大きな影響を与えます。ドルインデックスとドル円の動きは、米ドルの価値と日本円の価値の影響を受けるため、特に米国と日本における金融政策は非常に重要です。
例えば、中央銀行が金利を引き上げると、その国の通貨はより魅力的な投資対象となり、投資家はその通貨を保有しようとする傾向があります。金利が高いということは、その通貨を持つことで得られる利益(利息)も高いからです。その国の通貨の需要が高まれば価値が高くなり、為替レートも変動していくでしょう。
FXのスワップポイントは、2つの通貨を取引する際の金利差調整分であり、高金利の通貨を買うポジションを保有すると、金利差分のスワップポイントを受け取ることができます。この金利差は、各国の金融政策の変更により大きく変動する可能性があります。
このようにドルインデックスとドル円の動きは、米ドルと日本円の価値によって決まります。米ドルと日本円の価値は米国と日本の金融政策の影響を受けるので、ドル円を取引する際は両国の金融政策には特に注意を払う必要があります。
また、ドルインデックスとドル円が相関しながら動きやすいのは、米ドルの価値が大きく変わるケースです。米国の金融政策に動きがあったときには、両者の連動性を意識しながら相場を見るべきでしょう。
経済指標は、その国の経済状況を示すデータであり、その国の通貨の価値に影響を与えます。一般的に経済状況が良い国の通貨の価値は上昇しやすく、経済状況が悪化している国の通貨の価値は下落しやすいとされています。
例えば米国の経済状況の好転を示すような経済指標が発表された場合には、米ドルの価値が上昇し、ドルインデックスとドル円は相関関係を保ちながら上昇しやすいといえるでしょう。逆に米国の経済状況の悪化を示すような経済指標が発表されると、米ドルの価値が下落し、ドルインデックスとドル円は下降しやすくなります。
ドルインデックスやドル円に大きな影響を与える主要な経済指標として、以下の3つが挙げられます。
米国の雇用統計 | 市場が最も注目する影響力の大きい経済指標のひとつです。雇用統計が予想を上回ると、経済状況が想定よりも良好であるとみなされ、米ドルの価値が高まります。 |
---|---|
米国のGDP(国内総生産) | 米国経済全体における経済活動の成果を金額ベースで合計したものです。GDPが予想を上回ると、経済状況が想定よりも良好であるということになり、米ドルの価値が高まりやすくなります。 |
米国の物価指標 | 米国における一般消費者が購入する商品やサービスの物価動向を示す経済指標です。CPIなどの物価関連の指標が予想を上回ると、物価が想定よりも高まっていることを示し、インフレ圧力が高まる可能性があります。米国の中央銀行(FRB)の金融政策にも影響を及ぼすことがあります。 |
ドルインデックスとドル円の相関関係に注目する際には、こういった経済指標に注目しておくことが大切です。重要な経済指標のスケジュールはしっかり把握しておきましょう。
「リスクオン」と「リスクオフ」という市場の心理状態もドルインデックスやドル円に影響を及ぼすことがあります。
リスクオンとは、投資家がリスクを取る意欲が高まっている状態を指し、リスクを伴う投資に資金が流れやすくなります。反対に、リスクオフは投資家がリスクを避ける意欲が高まっている状態を指し、安全な投資対象へと資金が向かう傾向にあります。
市場のセンチメントがリスクオフなのかどうかを判断するには、「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数がよく使われます。VIX指数とは、米国の株価指数であるS&P500のオプション取引の値動きを基に算出される指数で、投資家が相場の先行きに不安を感じた場合に数値が上昇するという特徴があります。
一般的に米ドルと日本円はリスク回避通貨とされ、リスクオフの状況下ではともに投資家からの需要が増える傾向があります。一方、リスクオンの状況では、投資家はリスクを伴う投資に資金を向けるため、これらの通貨は売られやすくなることがあります。
ドルインデックスとドル円の相関関係を考える上で、リスクオン/リスクオフといった市場の心理状態も考慮しておくことが大切です。為替相場は非常に多くの要素によって左右されるため、市場状況を注視しながら柔軟に分析する必要があります。
ドル円のトレードをする場合、ドルインデックスを分析することで有用な情報を得られることがあります。ドルインデックスをトレードに活用する際の基本的な考え方を、具体例とともに紹介します。
ドルインデックスとドル円の相関を利用した基本的な戦略は、ドルインデックスの分析をもとに米ドル主導のトレンドを把握して、ドル円の予測に活用するというものです。
日本円にドルインデックスと逆行するトレンドが起こっていない限り、ドルインデックスに強いトレンドが発生すれば、基本的にはドル円にもトレンドが発生すると考えられます。ドルインデックスを分析すれば、ドル円のチャートだけでは気づかなかった取引のチャンスを見つけられる可能性があります。
また、ドル円のチャートでトレンド発生を認識したときに、ドルインデックスでもトレンドが発生しているか確認することで、環境認識の精度を高められるでしょう。
ドル円は、米ドルの価値と日本円の価値という2つの要素のバランスで変動していきます。ドルインデックスを利用すれば、純粋な米ドルの価値を確認することができるため、ドル円の分析の幅を広げられます。
注意したいのは日本円の動きによっては、ドルインデックスとドル円の相関性が崩れることもある点です。この点については、金融政策や経済指標などのファンダメンタルズ要因も加味した上で、為替市場が米ドル主導で動いているかどうかを確認しておくことが重要です。
ドルインデックスを利用した具体的なドル円の取引例を紹介します。
上のチャートは、上側がドル円、下側がドルインデックスの4時間足チャートです。
注目すべきはA~Bのドルインデックスチャートで上昇トレンドが発生している部分です。ドルインデックスはAで直近高値を上抜けして、上昇トレンドが発生しています。この上昇トレンドは、Bで直近安値を下抜けするまで継続しました。
ドル円に目を向けてみると、ドルインデックスとほぼ同じタイミングで上昇トレンドが発生していることが分かります。つまり、この間は米ドルの買いが集まって、米ドル主導でトレンドが発生し、これに引っ張られてドル円も上昇したという状況です。
もう少し細かくドル円を見てみると、ドル円で上昇トレンドが発生したタイミングはCで、ドルインデックスのAよりも少し遅れています。そのため、ドル円だけを見ている人はAの時点では何もすることができませんが、ドルインデックスも見ていた人はAの時点で、上昇トレンド発生を意識することができたはずです。
ドルインデックスに注目することで、ドル円だけを見ている人よりも一足先にエントリーできる場合もあります。ドルインデックスとドル円の相関を理解しておけば、トレードを有利に進められるでしょう。
ドルインデックスとドル円の相関関係を取引に利用する際の注意点をまとめました。
ドルインデックスとドル円の相関は、常に一定というわけではありません。中央銀行の金融政策や世界経済の状況、市場の心理などにより変動し、また、時間帯によって相関関係の強さが変わることもあります。
そのため、ドルインデックスとドル円の相関関係をトレードに活用する場合は、こういったさまざまな要素を考慮することが重要です。
先述の通り、本記事ではICEのドルインデックスをベースに解説しています。しかし、ICE以外にFRBや日経新聞なども、独自にドルインデックスを算出しています。
発信元によって算出方法や構成通貨のウェイトも異なるため、ドルインデックスの数値も異なります。基本的な考え方はどのドルインデックスも同じですが、発信元によって数値が異なる場合があるので注意しましょう。
ドルインデックスは、ニューヨーク商品取引所(NYBOT)や米国連邦準備制度理事会 (FRB)、国際決済銀行 (BIS)など、さまざまな機関が独自の方法で算出しており、構成通貨の比率や更新頻度などが異なります。ニューヨーク商品取引所のドルインデックスは、リアルタイムで更新され、先物取引としても上場していることから注目度が高いです。
ドル円を取引する場合であっても、他の構成通貨のチャートを確認することで、より正確に相場の状況を把握できる可能性があります。特にICEのドルインデックスでは、ユーロが50%以上のウェイトを占めているため、ユーロ主導でドルインデックスが動く可能性もあります。
ドル円に加えて、ユーロドルチャートとドルインデックスを比較すれば、ドルストレートの値動きを主導している通貨を特定できるでしょう。
ドルインデックスとドル円は基本的に相関関係にあり、上手に活用すればトレードの精度を上げることができるでしょう。
ドルインデックスの分析を取り入れると、ドル円チャート単体で相場を分析する場合と比較して、より正確に相場環境を把握できる可能性があります。また、ドルインデックスとドル円の相関を利用すれば、ドル円チャートだけでは見落としていた取引機会を見つけられることもあるでしょう。
ただし、ドルインデックスとドル円は常に相関関係が続いているわけではなく、状況によって相関関係が崩れることもあります。そのため、ドルインデックスだけに頼るのではなく、さまざまな要素を考慮に入れながら柔軟に判断することが大切です。
作成日
:2023.07.31
最終更新
:2024.06.11
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。
お問い合わせ先 [email protected]
仮想通貨USUALの将来性は?RWA活用のステーブルコインプロトコルを解説
2024.11.20 20:00
Milton Marketsが2024年11月より最大100%分入金ボーナスを開催
2024.11.20 19:30
スマホ版MT4のやさしい使い方ガイド~iPhone&Androidの基本操作~
2024.11.20 19:00
ZoomexがクリプトバトルZを開催!毎週開催の取引大会で現物USDTやボーナスを獲得
2024.11.15 20:00
ゴールドラッシュXMは本当に儲かるのか?ほぼ破綻リスクゼロのEAの実力は
2024.11.14 20:30
Titan FXがブラックフライデーキャンペーンを開催!取引でキャッシュバックが付与
2024.11.14 20:00
免責事項:Disclaimer
当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。
本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。
Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー