作成日
:2023.05.02
2024.05.16 06:28
仮想通貨(暗号資産)のMEVとは、マイナーやバリデータがいかに効率的に稼ぐか、その方法を指します。または、こうして稼げる利益そのものを指します。
マイナーやバリデータはブロックチェーン上の取引の透明性・信頼性・セキュリティ等の維持に貢献しており、MEVは彼らの収益を最大化する手段になっています。
一方で、イーサリアムにおいてMEVの悪用により他者の利益を不当に奪う行為も発生するなど、課題が多い側面もあります。
当記事では、イーサリアムにおけるMEVの概要と課題について解説していきます。
MEVはMaximal Extractable Valueの略語であり、日本語では「最大抽出可能価値」と訳されます。
イーサリアムブロックチェーンではバリデータがトランザクションを検証しており、そのおかげでチェーンの透明性や信頼性が保持されています。そして、検証の対価としてブロック生成報酬や取引手数料などを受け取っています。
MEVとは、この利益を最大化する方法、あるいは受け取る利益そのものを指します。
例えば、メモリープール(mempool)に一時的に溜まっている未承認トランザクションを処理する際に、手数料が大きいトランザクションから優先的に処理します。こうすることで、バリデータは利益をより大きくすることができます。
MEVによってバリデータが受け取る利益はどのように最大化・最適化されるのか、その具体的な手法を見ていきましょう。なお、ブロック生成報酬自体はあらかじめ定められており、MEVによって増減しません。
また、イーサリアムのブロック検証がマイニングで行なわれていた時代についても、同じことが言えます。
バリデータが受け取る利益の1つに、取引手数料があります。取引手数料はブロックチェーンを利用するユーザー自身が支払うものであり、その金額は各々のユーザーが決めています。
そして、バリデータは手数料の額が大きいトランザクションを優先的に検証します。こうして手数料収入を最大化することが、MEVの主な手法です。
仮想通貨のMEVにおけるアービトラージ(裁定取引)とは、主に分散型金融(DeFi)での取引を対象としています。
裁定取引とは、同じような価値を持つ商品等の一時的な価格差を利用する取引手法です。何らかの理由で一方の商品等が理論値よりも高くなる場合、市場参加者はその商品を売ると同時に割安になっている側を買います。すると、割高な側の価格は下落して割安な側の価格は上昇し、元の安定的な価格に戻ります。これが継続的に行われることにより、2つの価格は安定的に推移します。
仮想通貨取引においてもアービトラージが利用されています。例えば、分散型取引所(DEX)の取引において、バリデータは異なるDEXや取引ペア間の価格差を利用して利益を得ます。
例えば、仮想通貨取引所AとBで同一銘柄に価格差がある場合、安い方で買って高い方で売ります。AとBのレートが全く同じであれば意味がありませんが、AとBのレートに開きがあった場合には、その差額を利益にできます。
また、レンディングでの金利差を利用したアービトラージもあります。DeFiでは貸出金利や借入金利に差が生じることがあり、これを利用してアービトラージで利益を得ます。
フロントランニングも、金融取引全般で用いられる概念です。
株式など既存の金融商品について、フロントランニングは金融商品取引法で禁止されています。具体的には、金融商品取引業者またはその役職員が取引情報を悪用して顧客よりも先に取引を行うことで利益を得る行為を指します。
DEXにおけるフロントランニングは、悪意を持ったバリデータにより行われます。その方法は以下の通りです。
ユーザーがDEXで発注すると、その注文はメモリープールに未承認トランザクションとして追加されます。バリデータは、その中から大規模な購入注文を探します。この購入注文が実行されると、買い圧力が高まって仮想通貨価格が上昇する可能性があります。これを利用します。
バリデータはその大規模な注文が実行される前に、自分の取引を挿入して高い手数料を設定します。こうすれば、自身の取引が優先的に処理されます。これによりバリデータは、自身の取引の後の大規模な購入取引による価格上昇の恩恵を受けられます。
このように、バリデータはメモリープール内の取引を監視し、利益最大化のために取引の順序を操作できます。
フロントランニングは他のユーザーの不利益となるため、本来は他の金融商品と同様に禁止されるべき不正行為だと言えます。しかし、DEXは従来の中央集権的な仮想通貨取引所と異なり、規制当局による直接の監視や介入が難しいのが実情です。
明確な規制がないことから、一部の悪意を持ったバリデータがフロントランニングを利用するケースがあります。
時に不正行為につながるものの、MEVはブロックチェーンの透明性や信頼性の維持に欠かせない重要な役割を果たしています。
ユーザーがブロックチェーン上で取引できるのは、バリデータがその取引を検証・承認するプロセスがあるおかげです。
彼らの検証・承認に対するインセンティブとして働くMEVは、ブロックチェーン上の取引を成立させるために不可欠です。
MEVはDeFiプロトコルにおける経済効率性を強化する役割もあります。たとえば、MEVの手法の1つであるアービトラージには以下の効果があります。
1つ目は、価格の均一化です。アービトラージが実行されると、異なるDEX間の価格が均一化されます。これが繰り返されると、市場全体の価格も均一化されます。
2つ目は、流動性の向上です。アービトラージが行なわれると、市場に流動性が供給されます。これにより取引所やプロトコルの流動性が向上し、他の市場参加者が取引に参加しやすくなります。
3つ目は、情報が価格に効率的に反映されるという点です。価格変動を誘発する新しい情報が出ると、アービトラージ取引によって迅速に市場価格に反映されます。これにより、市場参加者はより正確な価格情報を利用できるようになります。
MEVはブロックチェーンの維持に重要な役割を果たす一方で、すでに述べたフロントランニング取引をはじめ、いくつかの問題を抱えています。
サンドイッチアタックとは、フロントランニング取引に加えてバックランニングと呼ばれる取引を駆使する攻撃手法で、主にDEXで行なわれます。一般のユーザーの取引を挟み込むことで、バリデータが自身の利益を最大化します。
具体的には以下のような手順で実行されます。
まず、悪意あるバリデータがユーザーの取引を監視し、フロントランニング取引を実行します。その後、ユーザーの取引を実行します。すると、仮想通貨の価格が上昇し、バリデータは含み益を得ている状態になります。
その後、バリデータはその仮想通貨を売却するバックランニング取引を、手数料を高く設定して優先的に実行します。この取引によって、仮想通貨の価格は元に戻り、悪意あるバリデータだけが利益を得ます。
このように、サンドイッチアタックはバリデータに利益をもたらす一方、他のユーザーは不利な条件での取引を強いられることになります。市場の公平性を著しく損なうため、各DeFiプロジェクトにおける重大な懸念事項となっています。
MEVは時にガス代高騰の要因となり、ネットワーク利用者全体に影響を与える可能性があります。
特に、フロントランニングを試みるバリデータは、自分の取引が確実に実行されるように高めの取引手数料を設定します。この影響で、ネットワーク上のすべての取引にかかるガス代を上昇させることがあります。
MEVは、ブロックチェーンの検証プロセスやセキュリティに悪影響を与える可能性があります。
例えば、バリデータが自身の取引を優先的に処理することで、他のユーザーの取引に遅延が発生することが挙げられます。
また、バリデータが悪意のある参加者であった場合、彼らの取引が優先的に処理される結果、悪意ある参加者によるブロックチェーンへの攻撃が増大し、セキュリティが脆弱になる恐れがあります。
悪意ある主体によるMEVは市場の公平性を損なうことから、放置することは望ましくありません。そこで、MEVの中でも特に悪質なものにはすでに対策が取られています。
Flashbotsは、より公正で透明性のある報酬の実現を目指す研究開発組織です。そして、効率的なMEVとフロントランニング防止のためのエコシステムを公開しています(Flashbots Auction)。
Flashbots Auctionは、ユーザーとマイナー・バリデータ間の透明で効率的な取引を実現するためのコミュニケーションチャネルとして機能します。
MEV-Boostは、マイナーやバリデーターがMEVによる収益を最大化するための支援ツールです。こちらもFlashbotsによって開発が進められています。
MEV-Boostを利用することで、マイナーやバリデータは効率的に収益を得られます。
また、フロントランニングやサンドイッチアタックといった悪質な手法を用いることなく収益を得られるため、他のユーザーの不利益となるような悪質行為の予防になります。
一般の仮想通貨投資家が自分でMEVを行なったり、あるいはマイナーやバリデータによるMEV行為で直接的な影響を受けることは少ないでしょう。
しかし大口投資家の取引があった場合などは、それに付随して発生するMEVによって投資環境の一時的な変化が起こり、そこに巻き込まれてしまう可能性があります。
MEVはブロックチェーンの検証プロセスやセキュリティにも関わる行為であるため、その仕組みはぜひ理解しておきましょう。
作成日
:2023.05.02
最終更新
:2024.05.16
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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