作成日
:2023.01.30
2023.03.16 15:30
ダイナミックNFTは見た目や機能が変化する新しいNFTです。多様な利用例が想定されており、ブロックチェーンゲームやメタバースなどで実用化されています。日本国内でも、企業等がダイナミックNFTを採用し始めています。
ダイナミックNFTのダイナミック(Dynamic)とは日本語で「動的な」という意味で、その頭文字を取って「dNFT」と呼ばれることもあります。
従来のNFTは見た目・名前・機能などが変わらないのに対して、ダイナミックNFTは条件に応じて変化させることができます。
例えば、デジタルアートのダイナミックNFTである「Daynamic NFTs Moddy_Ghost」は、ブロックチェーン上のリアルタイムデータに応じて、喜び・悲しみ・怒りなどの表情に変化します。
画像引用:OpenSea
NFTは2021年頃から流行しており、デジタルアートやブロックチェーンゲームのアイテムとして利用されていました。しかし、それ以外にあまり実用性がないことから、ブームは一時期と比べて下火になりつつあります。
NFTの流行で高額で取引されるデジタルアートも数多く誕生しました。ゾンビをモチーフにした「Crypto Punks」や、猿のイラストで有名な「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」など、ひとつ数千万円の値をつけるNFTコレクションも登場しました。
ダイナミックNFTはNFTの利用例を広げると期待されており、デジタルアートやブロックチェーンゲームだけでなく、幅広い分野で実用化され始めています。
特にイーサリアム(ETH)やチェーンリンク(LINK)などは、ダイナミックNFTの開発を促進しています。イーサリアムにはNFT向けのトークン規格が複数ありますが、その中にはダイナミックNFTに適したものもあります。
仮想通貨は特定のトークン規格に沿って開発が行われます。開発者はその仮想通貨の用途によって、複数あるトークン規格から適切なものを選択します。
これを受けて、開発企業やクリエイターがダイナミックNFTを取り入れ始めています。例えば、Chilizはチェーンリンクと提携してダイナミックNFTの開発環境を整えています。
画像引用:chiliz
ダイナミックNFTが注目される理由として、以下のようなものがあると考えられます。
NFTはコレクションとしての価値を持っており、ダイナミックNFTはさらに保有者のエンゲージメントを向上させる仕組みを追加できます。
例えば、ゲームで特定の条件を満たすと変化するダイナミックNFTであれば、ゲームに対するエンゲージメントを高めることができます。
エンゲージメント(engagement)にはさまざまな意味があり、ゲームなどの場合は、ユーザーのゲームに対する愛着や関与の程度という意味で使われます。
ダイナミックNFTを使うと斬新なNFTを作ることができます。
従来のNFTアートは、写真や2Dのデジタルアートなどの静止画が主流となっており、コンセプトよりもクリエイターのネームバリューや投資資産としての評価などに重きが置かれていました。ダイナミックNFTを利用すると、時間経過で変化するNFTなどのように、これまでになかったクリエイティブな作品を作ることができます。
例としては、月の満ち欠けの周期で薔薇の開花具合が変化する「ARoseIsARose」などが挙げられます。
画像引用:OpenSea
ダイナミックNFTを利用すれば、現実世界とリンクした体験を提供することができます。
例えば、現実世界で開催されるイベントに参加するとNFTを特別なものに変化させるなど、ダイナミックNFTをインセンティブにコミュニティを盛り上げることも可能です。
ダイナミックNFTの利用例は多岐にわたり、日本国内でも利用され始めています。
NFTはPlay to Earnなどで広く使われており、中にはダイナミックNFTを採用しているものもあります。
Play to Earnとは、遊んでお金を稼ぐことを指します。すなわち、ブロックチェーンゲームで遊ぶと、NFTや独自仮想通貨などの報酬を得られます。Play to Earnから派生したMove to Earn(運動して稼ぐ)なども、流行しています。
多くのブロックチェーンゲームでキャラクターはNFTとして発行されており、それぞれ異なる能力が割り振られています。Play to Earnでは、その能力差が収益性に影響します。
Play to EarnのカードゲームであるDream Questは、バトルに使用するカードにダイナミックNFTを利用しています。ダイナミックNFTの採用により、天候などの変化に合わせてカードの能力値を変更できるようになりました。
不確実な要素を取り入れることで、カードゲームをより戦略的なものとしています。
画像引用:Dreams Quest公式ツイッター
スポーツの分野では、欧州サッカー界や米メジャースポーツでNFTが導入されています。その流れは日本にも波及しており、Jリーグに所属するサガン鳥栖が、ファントークンとしてダイナミックNFTを発行しています。
特定のファンに向けて発行されるトークンです。ファンコミュニティで価値を持っており、グッズ購入の割引やイベントの参加券など、様々な特典が付与されています。
サガン鳥栖のダイナミックNFTは、ジャスミー(JMY)のブロックチェーンで発行されています。このダイナミックNFTにはマスコットキャラクターの見た目が変化していくギミックが仕込まれています。
画像引用:Jasmyホームページ
スタジアムへの来場・グッズ購入・加盟店でのショッピング・アンケートへの回答などでNFTが進化していきます。
メタバースとはインターネット上に構築された三次元空間を指し、VRゴーグルを使った没入体験型のものや、パソコンやスマホからアクセスできる手軽なものなどがあります。
仮想通貨市場でもメタバースは流行しており、NFTと組み合わせたものが登場しています。例えば、アバターと呼ばれる自身の身代わりとなるキャラクターを操作して、世界を散策したり他人と交流したりできます。また、アバターの服や装飾品などを自分好みにカスタマイズできます。
学習を目的としたメタバースであるLearnoverseでは、ダイナミックNFTアバターが導入されています。修了した学習コースに応じてアバターの見た目が変化していきます。
画像引用:Medium
NFTはコミュニティの入場券としても利用されており、プロジェクトによっては特定のNFT保有者のみが参加できるチャットルームなどが用意されています。
ポッドキャストのコンテンツ制作などを手掛けるPitPa(ピトパ)は、「JOI ITO'S PODCAST ―変革への道-」と呼ばれるコミュニティを運用しています。
このコミュニティではダイナミックNFTの「HENKAKU Membership NFT」が会員証となっており、Discordや会員限定のイベントへの入場の際に必要です。聴取頻度や紹介されたお便りの数などの貢献度に基づいて、NFTの見た目が変化していきます。
画像引用:PR TIMES
NFTはブロックチェーン上のデジタルIDとしても利用できます。一部では、SoulBound Token(SBT)と呼ばれるNFTがデジタルIDとして実用化され始めています。
SoulBound Tokenは譲渡不可能なNFTで、イーサリアム(ETH)の共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏らが考案しました。Web3.0時代のデジタルIDとして機能する可能性があり、既に大手取引所のBinanceなどが実用化しています。
ダイナミックNFTによるデジタルIDが採用されれば、年齢や婚姻状況などの情報が更新可能となり、利便性が向上すると考えられます。
NFTは資産のトークン化でも利用されています。以前から不動産をトークン化する試みが行われてきましたが、不動産は所有者や築年数、評価額などの情報が時間経過と共に変化するため、従来のNFTではトークン化するのに不都合でした。
ダイナミックNFTであれば情報を更新可能なので、不動産をトークン化しやすいと考えられます。
NFTはメタデータと呼ばれる情報と紐付けられており、一般的にはNFT自体が画像データを持っているわけではありません。NFTによって保存先のアドレスにアクセス可能です。
ダイナミックNFTは、スマートコントラクトを介して紐付ける画像データを変更します。画像データはあらかじめいくつかのパターンが用意されており、アクセス先を変えて変化しているように見せています。
スマートコントラクトは契約を自動履行するプログラムです。自動販売機でたとえると、「利用者が必要なお金を投入する」「特定の飲料のボタンを押す」という二つの契約条件が満たされた場合に、自動的に「その飲料を利用者に提供する」という契約が実行されます。
なお、アクセス先を変更するトリガーとして、ブロックチェーン内外の情報を使用できます。ブロックチェーン外部の情報はオラクルと呼ばれる仕組みを用いて取り込まれ、気象情報・仮想通貨価格・スポーツの試合結果など、幅広い情報をブロックチェーンで活用できます。
ダイナミックNFTに関する疑問としては、以下のようなものが挙げられます。
ダイナミックNFTは、通常のNFTと同じようにNFTマーケットプレイスで取引されています。OpneSeaなどの大手NFTマーケットプレイスでは、多様なダイナミックNFTを売買できます。
なお、OpenSea等ではダイナミックNFTのカテゴリーが別途用意されておらず、コレクションの説明欄を読んで確認する必要があります。コレクションによっては、ダイナミックNFTを隠し要素として公表していない場合もあります。
画像引用:OpenSea
ダイナミックNFTに設定されている条件はまちまちで、既に紹介したARoseIsARoseであれば、月の満ち欠けに連動しています。この場合、周期的に同じ画像が登場しますので、時間経過で元に戻ります。
その一方、ブロックチェーンゲームのクリアなど、不可逆なものが条件となっていることもあります。この場合、ゲームの設定にもよりますが元のNFTに戻せないでしょう。
ダイナミックNFTの価値は需要と供給のバランスによって変化します。
難易度の高いミッションが変化の条件になっていれば、それをクリアした証となるダイナミックNFTは高値を付ける可能性があります。反対に誰でも実行できるようなことが条件になっているのであれば、価値はそれほど上がらないかもしれません。
また、Play to Earnであれば、収益性がダイナミックNFTの価値に影響を及ぼすでしょう。
これまで、NFTは固定的なデータと紐付いていました。NFTの利用例もそれを前提に考えられていましたが、ダイナミックNFTの登場で利用例が広くなりました。将来的に仮想通貨市場の新しいトレンドとなるかもしれません。
OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスに数多く出品されていますので、どのようなものがあるのか検索してみるのも良いかもしれません。
作成日
:2023.01.30
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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