作成日
:2023.01.05
2023.03.16 15:30
2023年1月2日、ラノベ古事記の作者である小野寺優氏が、自分のキャラクターが無断でNFT化されて販売されているとツイートしました。ラノベ古事記とは、日本の歴史書である古事記をライトノベル風に書いた現代語訳です。
ツイートの対象となったのは古事記projectで、二次創作のNFTを販売しています。小野寺氏と古事記projectの言い分に食い違いがあることから、Twitter上で論争に発展しました。
ラノベ古事記のトラブルを元にして、NFTの著作権について考察します。
キャラクターのNFT化に関して、両者がそれぞれの言い分を主張しています。
小野寺氏によると、経緯は以下の通りです。
元々、ラノベ古事記と古事記projectはラジオドラマ制作でコラボしており、小野寺氏は古事記projectの趣旨に不満を感じていましたが、二次創作を許可したとのことです。
しかし、キャラクターをNFT化して販売したり神社とコラボして営利活動したり、古事記projectは古事記の普及という本来の意図と異なる活動を行なっており、著作権に関して疑問を投げかけたとしています。
これに対して古事記projectは、小野寺氏から許可を得ており問題はないとしています。
「古事記projectさんについては二次創作として割り切って収益もいらない」や「古事記projectさんのご活動に関して、私は全て黙認いたします」という趣旨のメールを小野寺氏から受け取ったとしています。
加えて、キャラクターの商用利用に関しても同意を得ているとしています。神社とコラボしてNFTお守りを販売しているのも、営利目的ではなく神社の新しい収入源を確保する試みだとしています。
今回の件は、作者が事前に二次創作を許可したと認めていることからも、NFT特有の問題というよりは、その許可がどこまで有効なのかという通常の著作権の争いであると考えられます。
そして、このケース以外にもNFTの著作権問題は多発しています。NFTはデジタルデータであり、著作権者と一切のやり取りがない状態で勝手にNFT化して販売できるため、大きな問題になっています。
この問題を正確に知るには、NFTの著作権の意味を知る必要があります。NFTとは、何らかのデジタルデータにIDを紐づける技術であり、NFT技術そのものは著作権の対象になりません。
よって、NFTの著作権という場合、NFT技術によって紐づけられたデジタルデータに関する著作権という意味になります。
NFTがトレンドになるにつれてNFT関連の訴訟も多くなっており、以下のような事例が存在します。
Yuga LabsはBAYC(Bored Ape Yacht Club)などの人気NFTコレクションを手がける企業です。
画像引用:Yuga Labs
NFTマーケットプレイスにはBAYCの亜種ともいえるNFTコレクションが無数に存在しており、Yuga Labsは模倣品を流通させてBAYCの利益を害したとしてアーティストのRyder Ripps氏を訴えました。
Ripps氏は表現の自由として認められる芸術的表現だと反論していましたが、裁判所はそれを棄却しました。Ripps氏のNFTコレクションに芸術性がないことや明らかに誤解を招くことから、裁判所は同氏の訴えは認められないと説明しています。
今のところ、Yuga Labsが優位に見えますが、今後もこの裁判は続く見通しです。また、この種の裁判の判例が積み重なることで、NFTデリバティブの将来も変わってくるかもしれません。
MetaBirkinsはバーキンを描いたNFTコレクションです。バーキンは世界的なファッションブランドであるエルメスの高級ハンドバッグで、MetaBirkinsはアーティストのメイソン・ロスチャイルド氏によって発行されています。
ロスチャイルド氏は、2021年12月のアートフェアでエルメスの許可なくMetaBirkinsを販売し、1億ドル以上を売り上げました。一方、エルメスは商標侵害でロスチャイルド氏を訴えました。
ロスチャイルド氏は、エルメスの訴えを棄却するよう裁判所に求めています。これに対して裁判所は、ロスチャイルド氏のNFTコレクションが表現の自由に値するかを見極める必要があることを示唆しています。
この裁判の決着はついていないものの、裁判所はMetaBirkinsがバーキンとの関連を意識したものであると認めています。
StockXはスニーカーやストリートウェアを取り扱うオンラインショップです。
StockXはNIKEのスニーカーの画像などをNFTとして許可なく販売したことが問題となり、NIKEから訴訟を提起されています。このNFTコレクションは「Vault NFT」と呼ばれるもので、現物の商品と紐付けられて提供されていました。
NFTマーケットプレイス大手のOpenSeaによると、OpenSeaのツールで作られたNFTのうち、盗作など不正な手段で作られたものが全体の80%を超えています。
However, we've recently seen misuse of this feature increase exponentially.
— OpenSea (@opensea) January 27, 2022
Over 80% of the items created with this tool were plagiarized works, fake collections, and spam.
NFTの著作権問題は訴訟に発展する可能性があります。そしてNFTプロジェクトが負けた場合、購入者側にもリスクが降りかかるかもしれません。
例えば、自分が所有するNFTがNFTマーケットプレイスから排除されたり、開発企業や運営企業が倒産したりして値下がりするかもしれません。
また、裁判にならなくても、著作権問題が表面化するだけでイメージダウンし、NFT価格が下落する可能性もあるでしょう。
NFTは新しい技術で法的な定義が曖昧となっています。過去の判例も乏しく、法解釈は未確立のままです。
WIPOは、国際的な知的財産権制度の発展を試みる国際組織です。WIPOによると、著作権侵害に問うには以下の3要件を満たす必要があります。
その上で、NFTを著作権侵害とするのは難しいとの見解を示しています。NFTは画像そのものではなく、アクセス権を示すコードなので、それだけでは著作権侵害とはいえないと説明しています。
また、WIPOは「ほとんどの場合、著作者は、自身の元の作品に関連するNFTを発行するプラットフォームに対して賠償請求を行うことによって、無許可の使用に対して法的措置を講じることができます」と指摘し、現実的にはプラットフォームが著作権侵害を防ぐためのフィルターになる可能性があるとしています。
日本国内ではNFTの著作権に関する法的な整備はあまり進んでいません。
消費者庁が「インターネット消費者取引連絡会」を通じてNFTを議題に挙げるなど、NFTの著作権という問題が認識されつつあります。
また、日本のコンテンツ企業連合で運営するブロックチェーンコンソーシアムJCBI(Japan Contents Blockchain Initiative)なども立ち上げられており、NFTの著作権に関する問題にアプローチする動きが出てきています。
JCBIはコンテンツを対象としたNFTを「C-NFT」と分類しており、そのコンテンツの著作者の権利が守られるよう取り組みを進める意向を示しています。
NFTの著作権に関する問題は、世界的に未発達の分野です。米国では判例ができつつありますが、引き続き裁判で権利が争われることになると考えられます。日本国内でもNFTに関する法的解釈は進んでおらず、どのように取り扱われるかは不透明となっています。
ラノベ古事記のツイートは、まさにこれらの問題に焦点を当てることとなりましたが、どのような展開を見せるのでしょうか。
作成日
:2023.01.05
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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