Select Language

ラノベ古事記の作者が無断NFT化を告発?NFTの著作権とは?

ラノベ古事記の作者が無断NFT化を告発?NFTの著作権とは?

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2023.03.16 15:30
ラノベ古事記の作者が無断NFT化を告発?NFTの著作権とは?

update 2023.03.16 15:30

2023年1月2日、ラノベ古事記の作者である小野寺優氏が、自分のキャラクターが無断でNFT化されて販売されているとツイートしました。ラノベ古事記とは、日本の歴史書である古事記をライトノベル風に書いた現代語訳です。

ツイートの対象となったのは古事記projectで、二次創作のNFTを販売しています。小野寺氏と古事記projectの言い分に食い違いがあることから、Twitter上で論争に発展しました。

ラノベ古事記のトラブルを元にして、NFTの著作権について考察します。

無断でNFT化されたと主張

キャラクターのNFT化に関して、両者がそれぞれの言い分を主張しています。

作者が主張する経緯

小野寺氏によると、経緯は以下の通りです。

元々、ラノベ古事記と古事記projectはラジオドラマ制作でコラボしており、小野寺氏は古事記projectの趣旨に不満を感じていましたが、二次創作を許可したとのことです。

しかし、キャラクターをNFT化して販売したり神社とコラボして営利活動したり、古事記projectは古事記の普及という本来の意図と異なる活動を行なっており、著作権に関して疑問を投げかけたとしています。

販売者が主張する経緯

これに対して古事記projectは、小野寺氏から許可を得ており問題はないとしています。

「古事記projectさんについては二次創作として割り切って収益もいらない」や「古事記projectさんのご活動に関して、私は全て黙認いたします」という趣旨のメールを小野寺氏から受け取ったとしています。

加えて、キャラクターの商用利用に関しても同意を得ているとしています。神社とコラボしてNFTお守りを販売しているのも、営利目的ではなく神社の新しい収入源を確保する試みだとしています。

NFTの著作権

今回の件は、作者が事前に二次創作を許可したと認めていることからも、NFT特有の問題というよりは、その許可がどこまで有効なのかという通常の著作権の争いであると考えられます。

そして、このケース以外にもNFTの著作権問題は多発しています。NFTはデジタルデータであり、著作権者と一切のやり取りがない状態で勝手にNFT化して販売できるため、大きな問題になっています。

NFTの著作権とは

この問題を正確に知るには、NFTの著作権の意味を知る必要があります。NFTとは、何らかのデジタルデータにIDを紐づける技術であり、NFT技術そのものは著作権の対象になりません。

よって、NFTの著作権という場合、NFT技術によって紐づけられたデジタルデータに関する著作権という意味になります。

NFTとは

過去の事例

NFTがトレンドになるにつれてNFT関連の訴訟も多くなっており、以下のような事例が存在します。

Yuga Labs

Yuga LabsはBAYC(Bored Ape Yacht Club)などの人気NFTコレクションを手がける企業です。

Yuga Labs

画像引用:Yuga Labs

NFTマーケットプレイスにはBAYCの亜種ともいえるNFTコレクションが無数に存在しており、Yuga Labsは模倣品を流通させてBAYCの利益を害したとしてアーティストのRyder Ripps氏を訴えました。

Ripps氏は表現の自由として認められる芸術的表現だと反論していましたが、裁判所はそれを棄却しました。Ripps氏のNFTコレクションに芸術性がないことや明らかに誤解を招くことから、裁判所は同氏の訴えは認められないと説明しています。

今のところ、Yuga Labsが優位に見えますが、今後もこの裁判は続く見通しです。また、この種の裁判の判例が積み重なることで、NFTデリバティブの将来も変わってくるかもしれません。

MetaBirkins

MetaBirkinsはバーキンを描いたNFTコレクションです。バーキンは世界的なファッションブランドであるエルメスの高級ハンドバッグで、MetaBirkinsはアーティストのメイソン・ロスチャイルド氏によって発行されています。

ロスチャイルド氏は、2021年12月のアートフェアでエルメスの許可なくMetaBirkinsを販売し、1億ドル以上を売り上げました。一方、エルメスは商標侵害でロスチャイルド氏を訴えました。

ロスチャイルド氏は、エルメスの訴えを棄却するよう裁判所に求めています。これに対して裁判所は、ロスチャイルド氏のNFTコレクションが表現の自由に値するかを見極める必要があることを示唆しています。

この裁判の決着はついていないものの、裁判所はMetaBirkinsがバーキンとの関連を意識したものであると認めています。

StockX

StockXはスニーカーやストリートウェアを取り扱うオンラインショップです。

StockXはNIKEのスニーカーの画像などをNFTとして許可なく販売したことが問題となり、NIKEから訴訟を提起されています。このNFTコレクションは「Vault NFT」と呼ばれるもので、現物の商品と紐付けられて提供されていました。

OpenSea

NFTマーケットプレイス大手のOpenSeaによると、OpenSeaのツールで作られたNFTのうち、盗作など不正な手段で作られたものが全体の80%を超えています。

購入者側のリスクも

NFTの著作権問題は訴訟に発展する可能性があります。そしてNFTプロジェクトが負けた場合、購入者側にもリスクが降りかかるかもしれません。

例えば、自分が所有するNFTがNFTマーケットプレイスから排除されたり、開発企業や運営企業が倒産したりして値下がりするかもしれません。

また、裁判にならなくても、著作権問題が表面化するだけでイメージダウンし、NFT価格が下落する可能性もあるでしょう。

NFT関連の法解釈は未確立

NFTは新しい技術で法的な定義が曖昧となっています。過去の判例も乏しく、法解釈は未確立のままです。

WIPOの解釈

WIPOは、国際的な知的財産権制度の発展を試みる国際組織です。WIPOによると、著作権侵害に問うには以下の3要件を満たす必要があります。

  • 侵害者が著作者の許可なく排他的権利のいずれかを利用する
  • NFTと元のアート作品の間に因果関係がある
  • 作品の全体、あるいはその大部分が模倣されている

その上で、NFTを著作権侵害とするのは難しいとの見解を示しています。NFTは画像そのものではなく、アクセス権を示すコードなので、それだけでは著作権侵害とはいえないと説明しています。

また、WIPOは「ほとんどの場合、著作者は、自身の元の作品に関連するNFTを発行するプラットフォームに対して賠償請求を行うことによって、無許可の使用に対して法的措置を講じることができます」と指摘し、現実的にはプラットフォームが著作権侵害を防ぐためのフィルターになる可能性があるとしています。

日本国内では未だ不透明

日本国内ではNFTの著作権に関する法的な整備はあまり進んでいません。

消費者庁が「インターネット消費者取引連絡会」を通じてNFTを議題に挙げるなど、NFTの著作権という問題が認識されつつあります。

また、日本のコンテンツ企業連合で運営するブロックチェーンコンソーシアムJCBI(Japan Contents Blockchain Initiative)なども立ち上げられており、NFTの著作権に関する問題にアプローチする動きが出てきています。

JCBIはコンテンツを対象としたNFTを「C-NFT」と分類しており、そのコンテンツの著作者の権利が守られるよう取り組みを進める意向を示しています。

日本でも争点になるか

NFTの著作権に関する問題は、世界的に未発達の分野です。米国では判例ができつつありますが、引き続き裁判で権利が争われることになると考えられます。日本国内でもNFTに関する法的解釈は進んでおらず、どのように取り扱われるかは不透明となっています。

ラノベ古事記のツイートは、まさにこれらの問題に焦点を当てることとなりましたが、どのような展開を見せるのでしょうか。


Date

作成日

2023.01.05

Update

最終更新

2023.03.16

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30

XMTradingの入出金で銀行口座凍結?海外FX禁止の銀行に注意

SNS上では「XMTradingの出金で銀行口座が凍結された」とする投稿が一部で見受けられます。銀行によっては海外FXとの取引を禁止しているため注意が必要です。本記事では凍結リスクが高い銀行や仮想通貨送金の注意点を説明します。
update2025.09.03 19:00

Peska(ペスカ)は本当に安全?評判は悪くないが入出金リスクに注意

PeskaはFX業者とのコラボキャンペーンなどをきっかけに、急速にユーザーを増やしているオンラインウォレットです。しかし、新興サービスのため利用すべきか迷うという人も少なくありません。この記事ではPeskaの安全性や評判、オンラインウォレット業界が抱えるリスクなどを説明します。
update2025.09.29 19:30

メタマスク等の利用が規制対象に?金融庁がDEXの規制を議論

暗号資産WGでの議論を発端に、SNS上で「DEX利用が非合法化されるのでは?」といった投稿が話題になっています。本記事では、金融庁で議論されたDEX規制の現状や、SNSで広まる情報の真偽、海外FXユーザーへの影響などを解説します。
update2025.10.28 19:00

PayPayを使って海外FXとの入出金が可能に?Binance JapanとPayPayが提携を発表

Binance JapanとPayPayが業務提携を発表し、PayPayマネーを使った仮想通貨購入サービスの提供などが検討されています。本記事では、Binance JapanとPayPayの提携内容や、PayPayを使った海外FXとの入出金フローなどを解説します。
update2025.10.17 19:00

海外FXへの仮想通貨送金にはBybitがおすすめ!FXトレーダーに最適なBybitの使い方

海外FXの入出金によく使われる国内銀行送金が以前より使いにくくなっていることを受け、仮想通貨での入出金が注目を集めています。本記事では、仮想通貨送金をするならBybitがおすすめの理由や、海外FXユーザーに最適なBybitの使い方を紹介します。
update2025.08.29 20:00

Exnessでシステムエラーによる入出金の不具合が発生?SNSでも報告が相次ぐ

2025年10月、海外FX業者Exnessで入出金エラーが発生し、SNSでも不具合報告が相次ぎました。銀行振込やbitwalletで送金できない事例が確認されており、復旧後も不安の声が続いています。
update2025.10.16 19:00

XMはゴールド(XAUUSD)のスプレッドも広い?ボーナス取引で実質お得

XMTradingのゴールド(XAUUSD)はスプレッドこそ狭くないものの、スワップフリー口座や豪華ボーナス、約定スピードの速さで十分に利用の検討余地があると言えます。当記事ではXMTradingでゴールド取引が向いている・向いていないトレーダーを他社と比較しながら解説していきます。
update2025.10.22 19:00

話題のDCJPYとJPYCの違い|海外FXの入出金に使えるのは?

DCJPYというデジタル通貨が話題となっています。一方で、海外FXユーザーの間ではJPYCへの期待も高まっています。本記事では、DCJPYとJPYCの特徴や違いを比較し、海外FXトレーダーにとってどちらが送金手段の選択肢となるのかを解説します。
update2025.09.26 19:30

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル