作成日
:2022.12.02
2023.06.06 11:13
2022年11月30日、大手取引所Binance(バイナンス)は株式会社サクラエクスチェンジビットコインを買収し、日本市場に参入しました。詳細は発表されていないものの、FTXやHuobiの事例と同様ならば2023年春頃に新ブランドでサービスを開始する可能性があります。
それに合わせて、グローバル市場向けのBinance.comでは日本居住者の新規ユーザー登録ができなくなっており、既存ユーザーに対するサービス停止の憶測も広がっています。
Binance(バイナンス)はコンプライアンス強化を重視しており、世界各国でライセンスを取得しています。その流れで、金融庁登録業者であるサクラエクスチェンジビットコインを買収しました。
新代表取締役として、Kraken Japanの運営会社Payward Asia社の代表だった千野剛司氏を迎えて、日本市場開拓を計画しています。
BinanceはBinance.comでグローバル市場向けのサービスを提供しており、日本からも利用可能です。
しかし、サクラエクスチェンジビットコイン買収で日本市場に参入すると同時に、日本居住者の新規ユーザー登録を停止しました。日本国内から新規ユーザー登録のページにアクセスすると、エラーメッセージが表示されます。
下はそのエラーメッセージで、禁止地域からアクセスしているためサービスを提供できない旨が書かれています。
画像引用:Binance
新規ユーザー登録は停止されましたが、既存ユーザーは引き続き利用可能です。ただし、今後も同様なのか不明であり、詳細は追って発表される可能性があります。
Binance.comで日本語表示への切り替えができなくなっているため、将来的に日本国内から利用できなくなるかもしれないと噂されています。
Twitter(ツイッター)上では、Binance.comを利用できなくなることへの不安が続出しています。
Binance(バイナンス)はおよそ400種類の仮想通貨を取り扱っていますが、日本市場向けの新サービスでは、銘柄数の大幅削減が見込まれています。サクラエクスチェンジビットコインの取扱銘柄を引き継いだ場合には、11種類となります。
国内取引所のレバレッジは最大2倍に制限されています。Binance.comで利用可能なレバレッジよりも遥かに低いため、取引の効率性が下がることへの不満が投稿されています。
その一方、シンボル(XYM)など日本での人気銘柄がBinance.comに未上場であり、上場の可能性について期待が高まっています。シンボルはBinanceの日本参入発表で価格が急騰し、4円台だった価格は一時的に5円台になりました。
画像引用:CoinMarketCap
過去には、海外取引所による日本国内参入事例が複数あります。それらの事例を知ると、Binance(バイナンス)がどのように動いていくのかを考えやすくなります。
2022年2月、FTXは国内取引所Liquid by Quoineの親会社であるLiquid Groupの買収を発表し、Liquid by FTXに名称変更して事業を継承しました。そして同年6月に新取引所FTX Japanを立ち上げ、Liquid by FTXを吸収してサービスを一本化しました。
FTX Japanが正式に立ち上がると、グローバル市場向けのサービス「FTX.com」では日本が利用制限対象国一覧に追加され、日本居住者の締め出しが行われました。
なお、FTX JapanはFTXの多様なサービスや銘柄を取り扱う予定でしたが、国内規制により大幅な変更を余儀なくされた模様です。その結果、ローンチ時の取扱銘柄数は現物取引で13種類、永久先物契約で5種類に留まっています。その他のサービスも、ステーキングサービスの「FTX Earn」などとなっています。
ちなみに、当記事執筆時点(2022年12月1日)で業務停止命令を受けており、全サービスを停止しています。
永久先物契約とは、現物のやり取りをせずに差金決済を目的とした取引です。レバレッジをかけられるので、短期トレードに向いています。
2018年9月、Huobiはビットトレードを買収して日本に進出しました。これに伴い、グローバル市場向けの「Huobi.com」は日本居住者へのサービスを段階的に停止しました。
その後、2019年1月に新ブランドで正式にサービスを開始し、当初の取扱銘柄はビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)などわずかな銘柄だけでした。
Coinbaseは日本法人を立ち上げて、2020年3月に日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の第二種会員として入会しました。日本国内の取引所はJVCEAへの入会が義務づけられており、第二種会員は準備期間中の企業の分類です。
その後、内部体制やセキュリティシステムなどを構築して2021年6月に金融庁に登録され、8月から日本国内でのサービスを開始しました。ただし、取扱銘柄やサービスは、日本の規制に沿ったもののみです。
FTX JapanやHuobi Japanは、金融庁登録業者を買収してから3か月程度で新ブランドのサービスを開始しています。
Binance(バイナンス)が買収したサクラエクスチェンジビットコインも金融庁に登録されており、FTX JapanやHuobi Japanと同様ならば、2023年春頃までに新ブランドでサービスを開始する可能性があります。
Binanceは、グローバル市場向けのBinance.comから日本居住者を締め出す可能性があります。
FTXやHuobiの場合、日本進出を契機にして日本居住者へのグローバルサービスを停止しています。日本市場へ正式にアクセスできるようになって海外からサービスを提供する必要がなくなったことや、日本法人が金融庁の圧力を受ける可能性があることが理由として挙げられます。
これらの理由はBinanceにも当てはまります。また、Binanceは米国市場向けの「Binance US」を立ち上げた際に、米国居住者によるBinance.comの利用を禁止した実績もあります。
よって、日本でも同様の措置が取られる可能性がありそうです。
Binanceは幅広いサービスを提供しているものの、規制に準拠する必要があるため、日本で提供されるサービスは限定的になると予想できます。FTX JapanやHuobi Japanの例を見ても、多様なサービス展開は難しそうです。
日本国内の取引所は、自由に銘柄を上場できません。安全性を確認するために、自主規制団体であるJVCEAの審査が必要となっており、ある程度の時間を要します。
Binanceは豊富な仮想通貨の取り扱いをひとつの売りにしていますが、日本国内で再現するには望み薄でしょう。
日本人ユーザーの中には、Binance.comの代わりになる海外取引所を探している人もいるようです。候補としては、以下のようなものが挙げられます。
Bybitはシンガポールを拠点にする大手取引所です。総合的なサービスを提供しており、日本語にも対応しているので日本の仮想通貨コミュニティで人気の海外取引所です。ローンチパッドやローンチプールを通じて新規銘柄に投資できるのも魅力的です。
FTXの経営破綻を受けて一部ユーザーから安全性を不安視されたため、ウォレットアドレスを公開したりAMAを開催したりして安全性をアピールしています。
FTXはハイリスクな経営を行っており、手持ち資金が枯渇して顧客資産を払い出せない状況に陥りました。競合のBinanceが買収による救済を模索しましたが、結局失敗に終わっています。この影響は仮想通貨市場全体に波及しており、CEXの信頼が揺らいでいます。
AMAとは、プロジェクト等の代表者がユーザーと直接意見交換する場です。ユーザーにとって、プロジェクト等の代表者に直接質問できる良い機会になり、プロジェクトにとっても、代表者がユーザーの声を直接聞くことができます。両者にとってメリットがあるため、各プロジェクトでしばしばAMAが実施されています。
Gate.ioは取扱銘柄数が多く、いわゆる草コインに投資するユーザーに重宝されています。FTXの経営破綻を受け、準備金に関して第三者機関の証明を示して安全性を強調しています。
草コインとは、主要な仮想通貨を除いた仮想通貨全般を指します。特徴としては、「知名度が低い」「時価総額が小さい」「上場している取引所が少ない(または存在しない)」などが挙げられます。価格が大きく変動する可能性があることから、草コインへの投資はハイリスク・ハイリターンだといえるでしょう。
DEXのシェアは徐々に増加しており、FTXの破綻騒動以降もその傾向に変わりはないようです。メタマスクなどの分散型ウォレットを持っていれば、透明性の問題を気にせず利用できます。DEXの例としては、dYdXやUniSwapなどがあります。
当記事執筆時点で、Binance(バイナンス)の日本でのサービス開始時期や内容、日本からのBinance.comの利用可能性などは明らかになっていません。今後もBinanceの発表に注目です。
作成日
:2022.12.02
最終更新
:2023.06.06
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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