作成日
:2022.08.30
2023.03.16 15:30
マウントゴックスは、かつて世界最大の仮想通貨(暗号資産)取引所として存在しました。しかし2014年、ビットコイン流出事件「マウントゴックス事件」を受けて営業を停止し、顧客資産のビットコインは返還されないままとなっています。現在、民事再生手続中であり、顧客への返金へ向けた手続きを進めています。
2022年8月27日、不正に流出したビットコイン(BTC)が顧客に返金されるとの噂が広がりました。これを受けて仮想通貨コミュニティはやや混乱し、ビットコイン価格が下落しました。多額のビットコインが顧客に返金されれば、換金需要が一気に高まると予想できます。
今回、仮想通貨コミュニティで返金の噂が広まったことで、マウントゴックスは再び注目を集めています。当記事では、マウントゴックス事件の概要から捜査状況、債権者への返金状況、ビットコイン価格の動向などについて解説していきます。
元々、マウントゴックスは、「Magic the Gathering」と呼ばれるトレーディングカードゲームの交換所として設立されました。企業名であるマウントゴックス(Mt.GOX)の由来は、「Magic the Gathering Online eXchange」から来ています。
そして、ビットコイン登場をきっかけに、2010年にビットコイン取引所として事業を開始しました。仮想通貨市場の草創期において、マウントゴックスは屈指の規模を誇る取引所にまで成長しました。
2013年には、マウントゴックスにおけるビットコインの総取引量が、仮想通貨市場全体の70%を占めていました。国内大手で先駆者的な立ち位置だったこともあり、日本人が多く利用する取引所となっていたのです(下の画像は、マウントゴックスのロゴ)。
画像引用:Wikipedia
マウントゴックスは、マルク・カルプレス氏に事業を売却しました。カルプレス氏は、フランス出身でエンジニアとしての経歴を持っています。経営権を得るとマウントゴックスのCEOに就任し、飛躍的な成長を遂げました。
そして、マウントゴックス事件に関与した疑いで逮捕されました。その事件のインパクトの大きさから、仮想通貨コミュニティだけでなく日本中で一躍時の人となりました。
また、逮捕されて勾留されていた時期が長かったこともあって、仮想通貨コミュニティでは「マウントゴックス社長が死亡した」との噂が広まりました。しかし、メディアなどのインタビューに応えていることなどから、その噂は間違いだと明らかになりました。
マウントゴックス事件とは、2014年に同取引所から大量のビットコインが不正に流出した事件を指します。被害総額は、顧客資金75万BTCと自社保有10万BTCで、合計85万BTCです。2014年当時のレートで、約470億円となっています。
事件が発生した当初、マウントゴックスはシステム障害を理由にビットコインの取引を全面的に停止しました。しかし、後日、秘密鍵(仮想通貨にアクセスするための情報)が盗まれてビットコインが流出したことが明らかになりました。
この事件をきっかけに、マウントゴックスは破産手続きを開始するに至りました。しかし、債権者の投票を経て民事再生手続に移行しています。現在も、マウントゴックスは民事再生に向けて動いています。民事再生を行えば、債権者はビットコインを取り戻せます。そして、現在の価格は当時よりも大幅に高騰しています。このため、85万BTCが市場に出てくると、巨大な売り圧力になると予想できます。
破産は法人を完全に清算して、債権者に財産を分配することを意味します。一方、民事再生とは、再生計画案に従って事業を継続する方法を模索することを指します。マウントゴックスが保有する仮想通貨は、当時よりも評価額が大きいこともあり、事業再開が可能だと考えられています。
マウントゴックス事件発生から約1年後、CEOのカルプレス氏は、システム不正操作の疑いと横領の疑いで逮捕されました。当初は純粋なハッキング被害としてみられていましたが、カルプレス氏の口座残高が不自然に増えていたことなどから、同氏がこの事件の犯人だとの容疑が浮上しました。
カルプレス氏は、自身の口座に30億円以上の資金が入金されたようにデータを改竄していました。しかし、これは「口座の残高を増やしたことは会社側の意思に沿っており、不正ではない」と、カルプレス氏は一貫して無実を訴えていました。
結果、第一審と第二審で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡されています。カルプレス氏の行動は、マウントゴックスの利用規約に違反する行為で、犯罪が成立すると判断されました。データを改竄した理由としては、隠蔽工作の一環で口座残高の水増しだと推測されています。
仮想通貨市場には、ハッキングを装った詐欺の事例がいくつか存在します。その中には、出口詐欺があります。すなわち、運営者や従業員などの関係者による、資金の持ち逃げです。このような背景から、ハッキングが発生した際には、関係者にも疑いの目が向くようになっています。
続く最高裁では、真犯人と見られるロシア人男性がギリシャで逮捕されたこともあり、カルプレス氏は横領について無罪となりました(システムの不正操作については、有罪)。
真犯人として逮捕されたのは、アレキサンダー・ヴィニックという人物です。ヴィニック氏は、仮想通貨取引所「BTC-e」に勤めていました。マウントゴックスから流出したビットコインは、BTC-eに送金されたことが確認されています。
ヴィニック氏は、巨額の資金洗浄(マネーロンダリング)に関与した疑いで実刑判決を受けており、フランスで服役しました。また、複数の国で訴追されており、アメリカやロシアからも身柄の引き渡しを要求されています。結果、服役後にアメリカ合衆国に送られたと報道されています。
マウントゴックス事件に関して、ヴィニック氏の関与は不明です。同氏がハッキングを働いて資金を盗み出したと考えられていますが、真相は明らかではありません。資金流出の経緯を特定するのは、難しいのが現状です。各国の警察当局は捜査を継続していますが、難航している模様です。
仮想通貨は法定通貨と同じく、資金洗浄が可能です。ハッキングして流出した仮想通貨も、資金洗浄を行うことで現金化して引き出せるようになります。匿名送金が可能なサービスを利用すれば、送金履歴の追跡が困難になります。
当記事執筆時点(2022年8月末)で、マウントゴックスは4,000億円近い資産を保有しています。資産の内訳は、約14万BTCのビットコインとビットコインキャッシュ(BCH)、そして現金です。債権者の投票によって、これらの資産は民事再生のプロセスを通じて返金されることが決定しています。
これまで、返金の時期や方法、支払い総額などの詳細が明言されていませんでした。従って、仮想通貨コミュニティでは、いつ返金されるのかなどに注目が高まっていました。
2022年7月になってから、マウントゴックスの管財人となっている小林信明氏は、債権者に返金手続きを案内する旨のメールを送付しています。
その内容は返金を早期に一括で受け取るか、または、複数にわたって受け取るか、ビットコインとビットコインキャッシュで受け取るか、または、現金で受け取るかを選択できることを伝えるものでした。また、小林氏は早ければ、2022年8月末頃から返金が開始される可能性があると報告しています。
下の画像は、マウントゴックスの公式サイトです。ここで、各種通知が公開されます。
画像引用:Mt.Gox
マウントゴックスのビットコイン返金は、仮想通貨市場にとって良いニュースだといえるでしょう。しかし、仮想通貨コミュニティでは、これがFUD(Fear, Uncertainty, Doubt)となってビットコインの売り圧力を高めました。
FUDは、恐怖や不確実性、疑念を示す言葉です。仮想通貨市場では、出所不明な情報や悪意を持った噂が広がることが多々あります。こういったFUDは、ネガティブキャンペーンのような形で大衆心理を煽って、影響を及ぼします。
マウントゴックス事件が発生した時期には、1BTCあたり500ドル未満でした。現在のビットコイン価格は、当時の40倍ほどになっています。このため、返金を受けた債権者による利益確定売りが予想されています。
8月末から、最大約14万BTCものビットコインが仮想通貨市場に放出される可能性があります。この事実が、仮想通貨市場でFUDを呼んでいるのです。
この騒動を受けて、ビットコイン価格はわずかに下落しました。現時点で280万円前後を推移しています。
画像引用:CoinMarketCap
ビットコイン価格は、2021年11月に史上最高値となる750万円の高値をつけました。それ以降、米ドルの金利上昇や株式市場の下落などの悪材料を背景に、大幅下落の展開が続いています。
直近では、260万円付近のラインがちょうど支持線となっています。そこを完全に割ってしまえば、下支えする主要な支持線はなく、さらに下落する可能性もあるでしょう。
Twitter(ツイッター)上では、マウントゴックスの返金に関する情報が飛び交っています。
ビットコインに関するFUDは、仮想通貨関連のニュースを配信するThe Altcoin Hubのツイートがきっかけです。そのツイートは、「マウントゴックスは14万BTCを明日リリースする模様」としていました。
このツイートは返信や引用が殺到して、多くのユーザーに拡散されています。その中には、既に悪い状況にある仮想通貨市場の動向を心配する声や、ビットコイン価格の売り圧力が高まることを懸念する声などが含まれています。
一方、多数のユーザーは、これがフェイクニュースだと反論しています。マウントゴックスの債権者のひとりであるエリック・ウォール氏は、「返金システムが有効化されていない」事実を伝えた上で、マウントゴックスが直ぐに返金できる状態にないと論じています。
加えて、仮想通貨アナリストのダニー・デバン氏は、「マウントゴックスは13万7,000BTCの全てを明日リリースするわけではない」と語っています。また、デバン氏は債権者の全てが一括で仮想通貨を受け取って、直ぐに売却するという選択肢を取るわけではないことを説明しています。
日本の仮想通貨コミュニティでも、数多くのツイートが投稿されています。その中には、マウントゴックスのウォレットを追跡するWebサイトの情報を示しながら、少なくとも返金が2か月かかると予想されることや、仮想通貨が出回る前に十分な警告がある予定であるといった内容が含まれます。
今回のビットコインに関するFUDは、誤った情報がTwitter上で拡散されたことが原因と考えられます。このようなことは、仮想通貨市場ではよくある典型的な出来事であり、DYOR(自身でリサーチする)することの重要さを際立たせる結果となりました。
マウントゴックスの民事再生や返金に関する情報は、管財人によって公式Webサイト「mtgox.com」を通じて発表されます。また、債権者に対しては、メールでのアップデートも行われています。
マウントゴックスが14万BTCを一気に放出すれば、ビットコイン価格に多大な影響を及ぼすことになるでしょう。その可能性も完全には否定できませんので、マウントゴックスの動向に関心がある方は、最新情報にアクセスして一次ソースを取得することをお勧めします。
作成日
:2022.08.30
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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