作成日
:2024.10.04
2024.10.24 11:54
「カスタマイズ性や自動売買機能で選ぶならMT4」といったような売り文句でMT4(MetaTrader 4)が紹介されることがあります。たしかにチャート分析や自動売買にこだわる人の中には、MT4を選ぶ人も多いでしょう。
しかし、今からプラットフォームを選ぶなら、MT5(MetaTrader 5)の利用を検討しないという選択肢はないのではないでしょうか。なぜなら、MT5はMT4の後続版のプラットフォームで、MT4にはなかった機能も多数備えているからです。
この記事ではプラットフォーム選びをしている人向けに、MT5について解説します。
MT5(MetaTrader 5)は、MetaQuotes社が2010年にリリースした取引プラットフォームです。MT4(MetaTrader 4)の次世代バージョンとして開発され、動作速度の向上や、時間足の多様化をはじめとする機能が拡充がされています。
一方、前身のMT4は幅広いユーザー層から高い人気を得ているプラットフォームです。金融分野のニュースやリサーチ提供を行うFinance Magnatesによると、MT4は取引プラットフォーム市場で60%超のシェアを占めています(2022年の第2四半期終了時点)。
画像引用:Finance Magnates
このMT4をバージョンアップさせたプラットフォームがMT5です。MT4よりも多機能で優れた利便性を誇るMT5は、業界の中で新たなスタンダードとなる可能性があるでしょう。
PC版MT5(MetaTrader 5)の基本的な機能を、MT4(MetaTrader 4)と比較しながら紹介していきましょう。
MT5ではチャートの見た目を自在にカスタマイズできます。まず次の2枚の画像を見比べてみましょう。上部がMT5で新しく開いたチャートの画面で、下部がチャートウインドウの大きさやチャートの色に少し手を加えたものです。
チャートウインドウの数をもっと増やしたり、色を細かく設定したり、チャート上部のボタンのレイアウトを変更することも簡単にできます。
なお、MT4と比較して、MT5では以下の機能が追加・強化されています。これらの機能のどういった点に優位性がみられるのか見ていきましょう。
ミニチャートとは、通常のチャートウインドウ上に表示できる小さなチャートのことです。ミニチャートの銘柄や時間足も切替えが可能なので、長期足のチャートを小さく表示して相場の方向性を確認するといった使い方ができます。
なお、ミニチャートは、画面上部の「挿入」タブを開き、「オブジェクト」、「グラフィック」、「チャート」と順に選択していくと呼び出せます。
ドッキング機能を使うと、下図のようにチャート画面のみを分離することができます。分離元の画面と分離後の画面にそれぞれチャートを表示させれば、複数のモニターに同時にチャートを表示させることが可能です。
この機能を使うには、チャートを開き、チャート上で右クリックして「ドッキング」を選ぶだけです。
MT5では、対応する時間足が拡充されています。MT4とMT5が対応している時間足はそれぞれ以下の通りで、注釈のついている時間足がMT5になって追加されたものです。
MT4 | MT5 |
---|---|
1分足 | 1分足 |
- | 2分足(*1) |
- | 3分足(*1) |
- | 4分足(*1) |
5分足 | 5分足 |
- | 6分足(*1) |
- | 10分足(*1) |
- | 12分足(*1) |
15分足 | 15分足 |
- | 20分足(*1) |
30分足 | 30分足 |
1時間足 | 1時間足 |
- | 2時間足(*1) |
- | 3時間足(*1) |
4時間足 | 4時間足 |
- | 6時間足(*1) |
- | 8時間足(*1) |
- | 12時間足 |
日足 | 日足 |
週足 | 週足 |
月足 | 月足 |
(*1)MT5のみ利用可能
時間足を細かく調整できるMT5では、「もう少し早いタイミングを狙いたい」という場合や、「だましが多いのが気になる」という場合に対処しやすいかもしれません。
なおMT5では、画面上部の「ツールバー」という箇所でチャートの時間足を変更することができますが、選択したい時間足がツールバーに表示されていない場合があります。この場合、以下の記事の手順で時間足を追加することができます。
MT5ではラインやインディケータを用いたテクニカル分析ができます。水平線・トレンドラインなどの基本的なラインの描画機能も、移動平均線・RSIといった代表的なインディケータも一通り揃っています。
なお、標準搭載されているオブジェクト(ライン等)やインディケータの種類はMT5になって増えました。詳細は下記の通りで、この点でもMT5のほうが優れています。
ツール | インディケータ | オブジェクト |
MT4 | 30種 | 31種 |
MT5 | 38種 | 44種 |
ツール | インディケータ | オブジェクト |
---|---|---|
MT4 | 30種 | 31種 |
MT5 | 38種 | 44種 |
そのほか、MT4とMT5の両方で、後からインディケータを追加することができます。外部で配布・販売されているツールによって機能を補うことが可能で、この点はMetaTraderの大きな強みです。
インディケータの配布は、当サイトでも行っています。MT4/MT5上で日本時間を表示させるツールや約定時間を計測できるツールなど、さまざまな独自インディケータが無料でダウンロード可能です。
MT5では、経済指標の重要度(優先順位)や予想、結果、前回結果などを確認することができます。表示させる経済指標を優先度の高さや国名で絞り込むことも、過去の情報を表示させることも可能です。
これはMT5になって新規搭載された機能で、MT4で利用することはできません。
MT5では、さまざまな種類の注文を出すことができます。MT4も対応している成行注文や指値・逆指値注文に加えて、「ストップリミット(Stop Limit)」というやや特殊な注文も出せるようになりました。
「一括操作」が行えるのもMT5だけです。
一括操作は、注文が表示されているボックス内(ツールボックスの取引タブ)で右クリックすると選択可能となる機能で、保有ポジションの一括決済ができます。特定銘柄のポジションだけを決済することもできる使い勝手のよい機能です。
一括操作を使えば、予約注文を一括で削除することもできます。
そのほか、対応しているマーケット(銘柄)の数もMT5とMT4で異なります。対応銘柄数が多いのは基本的にMT5で、例えば海外のFX業者では、株式銘柄の取引はMT5でのみ可能というケースもよくあります。
為替銘柄や株価指数銘柄などについては、MT4とMT5で条件が変わらないケースも少なくないですが、銘柄数が多い傾向にある点はメリットです。
MT4と同様に、MT5でも自動売買を利用可能です。自動売買をするには、EAと呼ばれる自動売買プログラムをMT5にインストールし、取引したい銘柄のチャートに適用する必要があります。
EAは自由に開発可能で、MetaQuotes社が運営する「MQL5コミュニティ」をはじめとする数多くの外部サイトで配布・販売されています。ユーザーはその中から好きなEAを選んで稼働させることが可能で、これもうれしいポイントでしょう。
MT5では、過去のチャートを使ってEAのバックテスト(シミュレーション)をすることができます。
ここでは詳細は割愛しますが、下図のように銘柄や期間などを設定し「スタート」をクリックすれば検証を始められます。
設定にもよりますが、数年程度のシミュレーションなら数分もあれば終わることが多いでしょう。シミュレーションが終わると次のように結果が表示され、成績の確認ができます。
バックテストはMT4でも可能ですが、MT5では性能が向上していて精度の高い検証がしやすくなっています。
継続的にアップデートが行われているかどうかも、MT4とMT5の違いです。MT5ではアップデートが積極的に行われており、今後も機能が追加されていくと考えられます。
MT5は、板情報機能が標準搭載されています。
板情報機能では、ティックチャートと売買ボタンが表示されるため、スキャルピングツールとしても利用可能です。
ただし、FX銘柄の場合はそのブローカー内での取引数量が表示されるのみなので、板情報を実際のトレードの参考にすることは難しいでしょう。
ここまで見てきたように、MT5(MetaTrader 5)は、基本的にMT4(MetaTrader 4)よりも性能面で優れています。しかし、より普及しているのは実はMT4のほうです。再度、次のグラフを見てください。
画像引用:Finance Magnates
このグラフは、2022年の第2四半期終了時点での取引プラットフォームのシェアを示しています。調査がされたのはMT5のリリース(2010年)から10年以上経った時点ですが、MT5のシェアはMT4の半分にも満たない状況です。
なぜここまで差が開いているのでしょうか。その理由として考えられる次の3点について、それぞれ見ていきましょう。
前提として、カスタムインディケータ・EAはMT4でもMT5でも利用できます。しかし、MT4で使うならMT4用のものを、MT5で使うならMT5用のものを使う必要があります。なぜなら、両者には互換性がないからです。
MT5用のカスタムインディケータ・EAの数は、MT4用のものより少ない点に注意が必要です。MQL5コミュニティ内のマーケットを確認したところ、2024年5月26日時点で提供・販売されているツールの数は以下の通りでした。
種別 | カスタムインディケータ | EA |
MT4 | 9,626種 | 7,771種 |
MT5 | 5,474種 | 4,685種 |
種別 | カスタムインディケータ | EA |
---|---|---|
MT4 | 9,626種 | 7,771種 |
MT5 | 5,474種 | 4,685種 |
好きな外部ツールを利用できる点はMT4/MT5の大きな強みです。対応ツールが多く、この強みを活かしやすいという理由でMT4を使っている人は少なくないと考えられます。
「MT4でも十分」と感じる人も多そうです。MT5になって全体的に性能が向上したものの、チャート分析や注文、自動売買などの主要な機能はMT4でも問題なく利用できます。
MT5の性能アップによるメリットが、カスタムインディケータ・EAの少なさ等のデメリットを明確に上回れていないという状況といえるでしょう。
下の表は2024年9月9日時点でMT4/MT5に対応している主要な海外FX業者をまとめたものです。MT4のみに対応している業者もあるものの、多くの海外FX業者では、MT4・MT5の両方に対応しています。
業者名 | MT4 | MT5 |
---|---|---|
(エックスエムトレーディング) |
〇 |
〇 |
(タイタンエフエックス) |
〇 |
〇 |
(エイチエフエム) |
〇 |
〇 |
(エクスネス) |
〇 |
〇 |
(エフエックスジーティー) |
〇 |
〇 |
(スリートレーダー) |
〇 |
〇(*1) |
(ミルトンマーケッツ) |
〇 |
× |
XMTrading(エックスエムトレーディング)
MT4 | MT5 |
〇 | 〇 |
Titan FX(タイタンエフエックス)
MT4 | MT5 |
〇 | 〇 |
HFM(エイチエフエム)
MT4 | MT5 |
〇 | 〇 |
Exness(エクスネス)
MT4 | MT5 |
〇 | 〇 |
FXGT(エフエックスジーティー)
MT4 | MT5 |
〇 | 〇 |
ThreeTrader(スリートレーダー)
MT4 | MT5 |
〇(*1) | 〇 |
Milton Markets(ミルトンマーケッツ)
MT4 | MT5 |
〇 | × |
(*1)それまではMT4のみ対応でしたが、2024年9月よりMT5に対応
一方、国内FXではMT5に対応している会社はそれほど多くありません。FXTFやFOREX.comのようにMT4には対応しているものの、MT5には対応していないFX業者もあります。国内FX業者を利用する場合、海外FXよりも選択肢が少なくなってしまう点に注意しましょう。
大手海外FX業者はすでにMT5(MetaTrader 5)を導入しており、海外FX業界全体でこれを追従する流れが来ています。例えば、2024年9月9日には、狭いスプレッドで知られるThreeTraderがMT5対応を開始しました。
MT5での取引に慣れたトレーダーが他の海外FX業者に乗り換えるとなった場合、MT5に非対応ですと顧客を逃してしまう可能性が高まります。また、仮にMT4のサポートが打ち切りとなれば、大きな損失になり、これもMT5を導入する潮流になっている理由でしょう。
開発元であるMetaQuotes社は、2018年以降にライセンスをとったFX業者がMT4を取り扱えないようにしたり、公式ページからユーザー向けのMT4アプリがダウンロードできないようにするなどして、MT4からMT5への移行が進むよう促しています。
MT5は多くのユーザーから好評を受けています。MT4(MetaTrader 4)と比較してカスタムインディケータやエキスパートアドバイザ(EA)の恩恵は受けづらいですが、基本的な性能が向上した快適さにメリットを感じているようです。
今後も人気が高まりMT5が主流になれば、インディケータやエキスパートアドバイザ(EA)が少ないというデメリットが改善されると考えられます。ユーザーの増加によって売り上げの目途が立てば、徐々に開発も増えていくと予想されるためです。
前提として、MT4(MetaTrader 4)やMT5(MetaTrader 5)の利用はカスタムインディケータを使いたい人、EAを使った自動売買をしたい人、チャートのレイアウトや配色などを好みに合わせて変更したい人などにおすすめです。
ここではMT4とMT5で迷っている人向けに、MT5をおすすめできる人の特徴について解説します。次の3つのポイントを順に見ていきましょう。
始めに取引プラットフォームを使って何をやりたいのか、どんな機能を利用しそうなのかを整理してみましょう。例えば、チャート分析や注文、ポジション管理、過去の振り返りなど、思い当たるものを書き出してみてください。
その結果、MT5のみに備わっている次のような機能を利用しそうなら、MT5を選択できます。
また、利用しそうな機能がMT4とMT5の両方に備わっている場合でも、より高性能なMT5を選ぶのが合理的だろうと判断することができます。
利用したい外部ツール(インディケータ・EA)がある場合、その外部ツールがMT5に対応しているかを確認しましょう。対応しているなら、MT5の利用を検討します。
インディケータやEAが、MT4とMT5の両方に対応しているケースでもMT5の利用を積極的に検討してよいでしょう。その理由は、性能が優れたMT5を選ぶほうが、ストレスなく取引できる可能性が高いからです。
MT4を使ってみて動作の遅さやフリーズが気になる人にも、MT5をおすすめします。
MT4は32bit版のアプリですが、MT5は64bit版のアプリです。64bit版では一度に処理できる情報の量が、32bit版と比べて多くなります。したがってPCのスペックが十分な場合は、64bit版アプリであるMT5を使うほうが動作が軽くなるのです。
もちろん例外はありますが、基本的には「MT5のほうがサクサク動く」と考えて問題ないでしょう。
MT5(MetaTrader 5)を利用していくなら、MT5に対応しているFX業者を選ぶ必要があります。MT5を使える業者は国内にはまだ多くありませんが、海外には多数あります。そこで、MT5対応の海外FX業者(2024年8月2日時点)とその特徴を確認してみましょう。
(エックスエムトレーディング) | 国内で最も知名度が高い海外FX業者で、出金やサポート対応の実績から信頼を獲得しています。豪華なボーナスでも知られています。 |
---|---|
(タイタンエフエックス) | スプレッドや約定力などの取引環境を重視しているFX業者。日本語サポートが24時間365日体制と非常に手厚いことも特徴です。 |
(エクスネス) | 多数のハイスペック口座を提供する老舗ブローカー。2,000倍以上のハイレバレッジを利用することができます。 |
(エックスエス) | 2023年から日本向けのサービスを始めた業者。銘柄数やレバレッジの高さ、狭いスプレッド、補償制度など、数々のニーズに対応しています。 |
(エフエックスジーティー) | 仮想通貨(暗号資産)取引に力を入れている海外FX業者で、豪華なボーナスの提供でも知られています。 |
(エイチエフエム) | 銘柄数・口座タイプ数が多く、幅広いニーズに対応しているFX業者。グループ全体で6つの金融ライセンスを取得しています。 |
海外FXの利用も検討している場合、まずは国内業者と海外業者の違いを知りましょう。その上でそれぞれの業者の特徴を調べていくのがおすすめです。
海外FX業者については当サイトでも詳しく解説しています。海外FXにも興味がある場合、以下のページから確認してみましょう。
「MT5とMT4のどちらがいいのか」「どのFX業者を利用しようか」迷った場合は、それぞれのデモ版を試しに使ってみてはいかがでしょうか。デモ版では無料で一通りの操作が行えるので、実際に手を動かして使い勝手を確かめることができます。
操作性を体感することが、自分に合う取引ツールを判断するためのヒントとなるでしょう。デモ版を体験してみて、MT4とMT5のどっちが良いか分かったら、FX業者を選びましょう。特に海外FXであれば、MT4・MT5に対応している業者が多くあります。
MT5を利用するのであれば、選択肢が豊富な海外FX業者を検討してみると良いでしょう。
作成日
:2024.10.04
最終更新
:2024.10.24
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
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