作成日
:2021.08.16
2021.08.20 12:15
米商品先物取引委員会(CFTC)は8月13日、10日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが減少
円は対ドルで6万657枚の売り越し(ネットショート)であった。ネットポジションは先週比で5,467枚の減少となる。先週6日に発表された米7月雇用統計が市場予想を上回る力強い結果となったことを受け、米ドル買い・円売りが進んだ模様だ。尚、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは22週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比プラス20.6%、売り建玉(円ショート)はプラス13.7%となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 30,409 | 36,684 | 20.6% |
---|---|---|---|
ショート | 85,599 | 97,341 | 13.7% |
ネット | -55,190 | -60,657 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
30,409 | 36,684 | 20.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
85,599 | 97,341 | 13.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-55,190 | -60,657 | - |
9日の週初は、前週末の良好な米雇用統計を受けたドル買いの流れを引き継いだ。また、2021年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つアトランタ地区連銀のボスティック総裁など、複数のFOMCメンバーによるタカ派的な発言に加え、米上院でのインフラ投資法案可決などを手掛かり、ドル円は11日に約1ヶ月ぶりの高値水準となる110円81銭まで上昇した。しかしながら、その後は注目の米7月消費者物価指数(コアCPI)や米8月ミシガン大学消費者信頼感指数が市場予想を下回る冴えない結果となり、米10年債利回りの急低下に繋った。週末13日に、ドル円は週間安値となる109円54銭まで急落して取引を終えた。
ユーロ、ネットポジションが減少
ユーロは対ドルで3万3,857枚の買い越し(ネットロング)となった。ネットポジションは先週比で4,150枚の減少となる。買い越し幅は2020年3月以来の水準まで縮小している。欧米の金融政策スタンス格差が鮮明となる中、ユーロ売り・ドル買いが継続している状況だ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス6.9%、売り建玉(ショート)はプラス11.1%となった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 199,067 | 212,809 | 6.9% |
---|---|---|---|
ショート | 161,060 | 178,952 | 11.1% |
ネット | 38,007 | 33,857 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
199,067 | 212,809 | 6.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
161,060 | 178,952 | 11.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
38,007 | 33,857 | - |
良好な米雇用統計やFOMCメンバーによる相次ぐタカ派的な発言に加え、ドイツ8月ZEW景況感指数の大幅低下などにより、ユーロ売り・ドル買い圧力が高まった。週央にかけて、ユーロドルは約4ヶ月ぶりの安値水準となる1.1704ドルまで下落した。しかしながら、年初来安値となる1.1702ドルをバックに下げ渋ると、その後は軟調な米経済指標を受けたドル売りが優勢の展開となり、週末13日に1.1795ドル近辺まで値を戻して取引を終えた。
ポンド、再び買い越しに転じる
ポンドは対ドルで7,070枚の買い越し(ネットロング)となり、3週間ぶりに買い越しに転じた。ネットポジションは先週比で7,162枚の大幅増加となる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がプラス3.8%、売り建玉(ショート)はマイナス12.8%となった。ロングポジションが増加する一方、ショートポジションが2桁の減少となったことが、ネットポジションの大幅増加に繋がった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 43,119 | 44,750 | 3.8% |
---|---|---|---|
ショート | 43,205 | 37,680 | -12.8% |
ネット | -86 | 7,070 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
43,119 | 44,750 | 3.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
43,205 | 37,680 | -12.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-86 | 7,070 | - |
先週末6日の市場予想を上回る米7月雇用統計を受け、米早期テーパリング観測が再燃し、ポンドは9日の週初から売り優勢の展開となった。しかしながら、その後は11日に発表された米7月コアCPIなどの米経済指標が冴えない結果となり、ポンド買い・ドル売りに転じた。また、英国では新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックからの経済再開が進み、英イングランド銀行(中央銀行)が大規模な金融緩和の早期縮小を視野に入れていることが、ポンドの下支え要因となっている模様だ。週末13日に、ポンドドルは1.3863ドル近辺で取引を終えている。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となった。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 57,742 | 57,323 | -0.7% |
---|---|---|---|---|
ショート | 99,025 | 106,636 | 7.7% | |
ネット | -41,283 | -49,313 | - | |
CHF | ロング | 16,522 | 18,537 | 12.2% |
ショート | 8,979 | 8,859 | -1.3% | |
ネット | 7,543 | 9,678 | - | |
CAD | ロング | 46,064 | 45,445 | -1.3% |
ショート | 38,604 | 38,980 | 1.0% | |
ネット | 7,460 | 6,465 | - | |
NZD | ロング | 16,959 | 17,295 | 2.0% |
ショート | 17,284 | 18,327 | 6.0% | |
ネット | -325 | -1,032 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
57,742 | 57,323 | -0.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
99,025 | 106,636 | 7.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-41,283 | -49,313 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
16,522 | 18,537 | 12.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
8,979 | 8,859 | -1.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
7,543 | 9,678 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
46,064 | 45,445 | -1.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
38,604 | 38,980 | 1.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
7,460 | 6,465 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
16,959 | 17,295 | 2.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,284 | 18,327 | 6.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-325 | -1,032 | - |
release date 2021.08.16
多くの市場関係者が、米国の早期テーパリング観測を巡るFOMCメンバーの発言を注視している。2021年に投票権を持つFOMCメンバーを確認すると、常に投票権を持つ常任メンバーは、議長と副議長を含む理事7名とニューヨーク地区連銀総裁の計8名で構成されている。また、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの各地区連銀総裁が今年のFOMCで投票権を持ち、合計12名で構成されている。この内、クラリダ副議長とウォーラー理事、アトランタ地区連銀のボスティック総裁、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁がタカ派的な見解を示している。元々、2021年のFOMCで投票権を持つメンバーは、ハト派が大多数を占めると見られていたが、最近では半分近くのメンバーがタカ派にシフトしているようだ。今週発表されたCPIと米7月卸売物価指数(PPI)は高水準で推移している他、雇用環境は順調に改善している。FOMCメンバー内で政策スタンスに温度差が見られる中、ハト派的な姿勢を維持するパウエル議長の発言に変化がみられるか注目したい。
作成日
:2021.08.16
最終更新
:2021.08.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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