作成日
:2021.05.24
2021.06.08 12:02
米商品先物取引委員会(CFTC)は21日、18日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが大幅減
円は対ドルで5万948枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比では9,220枚の大幅な減少となる。過去数週間にわたり、ネットショートポジションは縮小傾向にあったが、IMM集計後の19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控え、ポジション調整の動きが出た模様だ。また、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは10週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス18.1%、売り建玉(円ショート)はプラス5.1%となった。ロングポジションが減少する一方、ショートポジションが増加したことから、ネットポジションの大幅減少に繋がった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 30,491 | 24,965 | -18.1% |
---|---|---|---|
ショート | 72,219 | 75,913 | 5.1% |
ネット | -41,728 | -50,948 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
30,491 | 24,965 | -18.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
72,219 | 75,913 | 5.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-41,728 | -50,948 | - |
クラリダ米連邦準備理事会(FRB)副議長によるハト派的発言や軟調な米経済指標を受け、米10年債利回りが伸び悩んだ他、対欧州通貨でドル売り圧力が強まった。これらを受け、19日にドル円は108円57銭まで下落した。しかしながら、その後に発表されたタカ派的な米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨や各地区連銀総裁によるタカ派的な発言に加え、5月の購買担当者景気指数(PMI)が過去最高を更新したことがドル買いに繋がり、週末21日には108円95銭まで値を戻す展開となった。
ユーロ、ネットロングの増加基調が続く
ユーロは対ドルで9万9,858枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では5,951枚の増加となる。2021年4月中旬以降、ネットロングポジションが増加基調にあることに鑑みると、投機筋は再びユーロに対して強気に転じていると推察される。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス4.0%、売り建玉(ショート)はプラス2.3%となり、ロング・ショートポジションともに増加した。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 223,387 | 232,330 | 4.0% |
---|---|---|---|
ショート | 129,480 | 132,472 | 2.3% |
ネット | 93,907 | 99,858 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
223,387 | 232,330 | 4.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
129,480 | 132,472 | 2.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
93,907 | 99,858 | - |
フランスやイタリアなど、欧州各国で新型コロナウイルス(COVID-19)のロックダウンが緩和されたことによる経済回復期待が、ユーロのサポート要因となっている。また、欧州中央銀行(ECB)が債券購入を縮小するとの思惑が広がり、早期のテーパリング観測が浮上したことを受け、ユーロに買いが入った模様だ。19日にユーロは対ドルで、一時1ユーロ=1.2245ドルまで上昇し、約4カ月ぶりの高値を付けた。しかしながら、タカ派的なFOMC議事要旨を受けた米10年債利回りの上昇に加え、ECBによるユーロ高けん制への警戒感も広がり、ユーロは週末21日に1.2180ドル近辺まで値を下げて取引を終えている。
ポンド、ネットロングが継続
ポンドは対ドルで2万4,900枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では3,276枚の減少となる。イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)通過後に急増した投機筋によるポンド買いは、足元で一服している模様だ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス3.0%、売り建玉(ショート)はプラス3.7%となった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 64,947 | 63,027 | -3.0% |
---|---|---|---|
ショート | 36,771 | 38,127 | 3.7% |
ネット | 28,176 | 24,900 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
64,947 | 63,027 | -3.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
36,771 | 38,127 | 3.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
28,176 | 24,900 | - |
英国で17日に新型コロナウイルス対策のロックダウンが一段と緩和されたことが好感された他、英失業率の低下など景気回復を示す経済指標の発表も重なり、ポンド買いの動きが強まった。IMMポジション集計前の18日、ポンドは対ドルで一時約3ヶ月ぶりの高値となる1.4220ドルをつけた。その後は利益確定の売りに加え、米国で早期のテーパリング観測の再燃し、ドル買いが優勢となっていた。しかしながら、21日に発表された英国の4月小売売上高や5月PMIが共に良好なものとなり、ポンドは一時1.4234ドルまで値を伸ばす場面が見られ、上昇基調が続いている状況だ。
主要7通貨はまちまちの展開に
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、ネットポジションの増減が入り混じる、まちまちの展開となった。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 59,158 | 57,862 | -2.2% |
---|---|---|---|---|
ショート | 56,742 | 54,860 | -3.3% | |
ネット | 2,416 | 3,002 | - | |
CHF | ロング | 10,381 | 11,115 | 7.1% |
ショート | 13,232 | 15,380 | 16.2% | |
ネット | -2,851 | -4,265 | - | |
CAD | ロング | 79,329 | 82,026 | 3.4% |
ショート | 40,700 | 35,914 | -11.8% | |
ネット | 38,629 | 46,112 | - | |
NZD | ロング | 26,377 | 23,624 | -10.4% |
ショート | 17,033 | 15,174 | -10.9% | |
ネット | 9,344 | 8,450 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
59,158 | 57,862 | -2.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
56,742 | 54,860 | -3.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
2,416 | 3,002 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
10,381 | 11,115 | 7.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
13,232 | 15,380 | 16.2% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-2,851 | -4,265 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
79,329 | 82,026 | 3.4% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
40,700 | 35,914 | -11.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
38,629 | 46,112 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
26,377 | 23,624 | -10.4% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,033 | 15,174 | -10.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
9,344 | 8,450 | - |
release date 2021.05.24
FRBが19日に公開した4月のFOMC議事要旨では、今後テーパリングに関して議論するとの認識が示された。2021年に投票権を持つFOMCのメンバーの多くが、ハト派的な政策スタンスを持っていると見られているが、足元でFRBはテーパリングに向けた地ならしを始めた模様だ。FRBを含む世界各国の金融当局が政策の舵を取る上で注視しているCPIは、日本を除く主要国で上昇基調にある。米国では4月CPIが大きな伸びを示したことを受け、テーパリング観測が再燃している。CPIの内訳を見ると、中古車や航空運賃といった項目が過去最高の上昇率を記録しており、景気回復が進んでいることを示唆しているようだ。また、英国では4月CPIが前年同月比1.5%上昇しており、新型コロナウイルスのパンデミックが猛威を振るい始めた2020年3月以来の上昇幅となる。背景としては、エネルギー価格の上昇とロックダウンの段階的緩和の進捗が挙げられる。EUのCPIに関しても、2021年に入って上昇基調にある。これらの国々で物価上昇基調が鮮明となれば、早期の緩和縮小観測が強まるため、今後も各国の物価動向に市場の注目が集まりそうだ。
作成日
:2021.05.24
最終更新
:2021.06.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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