作成日
:2021.05.17
2021.06.08 12:19
米商品先物取引委員会(CFTC)は14日、11日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションに大幅な変動なし
円は対ドルで4万1,728枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比では236枚の減少となったが、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しが9週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス2.3%、売り建玉(円ショート)はマイナス0.7%となり、ショートポジションの取り崩し傾向が続いている。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 31,208 | 30,491 | -2.3% |
---|---|---|---|
ショート | 72,700 | 72,219 | -0.7% |
ネット | -41,492 | -41,728 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
31,208 | 30,491 | -2.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
72,700 | 72,219 | -0.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-41,492 | -41,728 | - |
前週末金曜日に発表された低調な米雇用統計や、米ドルの予想実質金利の低下に繋がる米国のブレーク・イーブン・インフレ率【以下、BEIと称す】の急上昇などが嫌気され、IMMポジション集計時の11日にかけて、ドル円は108円30銭台まで下落した。しかしながら、12日に発表された米4月の消費者物価指数(CPI)が、市場予想を上回る大きな伸びを示し、早期のテーパリング観測が再燃した。これを受け、米10年債利回りが1.7%台まで上昇したことに伴い、ドル円は約1ヶ月ぶりの高値水準となる109円79銭まで上昇した。但し、週末にかけて軟調な米経済指標の発表が相次ぎ、米10年債利回りの上昇が一服したことを受け、ドル円は109円40銭近辺で取引を終えている。
ユーロ、ネットポジションが10%超増加
ユーロは対ドルで9万3,907枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では9,078枚の増加となる。4月20日時点の建玉報告より、それまで取り崩しが続いていたロングポジションが反転増加傾向にあることに鑑みると、投機筋はユーロに対して強気の見通しに転換し始めているようだ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス8.2%、売り建玉(ショート)はプラス6.4%となり、ロング・ショートポジションともに増加した。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 206,472 | 223,387 | 8.2% |
---|---|---|---|
ショート | 121,643 | 129,480 | 6.4% |
ネット | 84,829 | 93,907 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
206,472 | 223,387 | 8.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
121,643 | 129,480 | 6.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
84,829 | 93,907 | - |
前週末からの米ドル売りやユーロ圏における新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン接種加速に伴う早期の景気回復期待などを背景に、ユーロドルはIMMポジション集計時の11日に、約2ヶ月半ぶりの高値水準となる1.2182ドルまで上昇した。しかしながら、その後はドイツ連立与党の支持率が過去最低に沈んだことが嫌気された他、ユーロ圏3月の鉱工業生産が軟調な結果に終わり、米国ではインフレ進行懸念を背景とした早期のテーパリング観測が再燃した。これらの市場イベントがユーロの重しとなり、13日にユーロドルは1.2051まで大幅下落したが、週末に値を持ち直す展開となった。
ポンド、ネットポジションが約42%急増
ポンドは対ドルで2万8,176枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では8,328枚の大幅な増加となる。英国の中央銀行であるイングランド銀行による金融政策委員会(MPC)の開催前にポジション調整の動きが出ていたと見られるが、同イベント通過後、投機筋のポジションは再び買いに傾いている状況だ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス24.3%、売り建玉(ショート)はプラス13.4%となった。ロングポジションがより多く上積みされたことで、ネットポジションは大きく増加する結果であった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 52,262 | 64,947 | 24.3% |
---|---|---|---|
ショート | 32,414 | 36,771 | 13.4% |
ネット | 19,848 | 28,176 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
52,262 | 64,947 | 24.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
32,414 | 36,771 | 13.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
19,848 | 28,176 | - |
英国では10日の週に発表された3月の各種経済指標が市場予想を上回った。また、新型コロナ禍における4段階のロックダウン緩和計画が進捗し、確実にその効果も確認されていることを背景に、投機筋はポンドの買いポジションを増やしている模様だ。ポンドドルは11日、約2ヶ月半ぶりとなる1.4167ドルまで上昇した。その後は、米CPIが2009年以来の大幅な伸びを示したことを受け、対ドルで心理的節目の1.4000ドル付近まで押し戻されたが、週末にやや値を戻す展開となった。
円とスイス以外でネットポジション増加
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、グローバル各国市場で景気回復期待が着実に高まる中、安全資産とされる円とスイスを除く5通貨でネットポジションが増加した。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 58,385 | 59,158 | 1.3% |
---|---|---|---|---|
ショート | 56,909 | 56,742 | -0.3% | |
ネット | 1,476 | 2,416 | - | |
CHF | ロング | 10,276 | 10,381 | 1.0% |
ショート | 10,220 | 13,232 | 29.5% | |
ネット | 56 | -2,851 | - | |
CAD | ロング | 74,280 | 79,329 | 6.8% |
ショート | 48,333 | 40,700 | -15.8% | |
ネット | 25,947 | 38,629 | - | |
NZD | ロング | 26,371 | 26,377 | 0.0% |
ショート | 17,783 | 17,033 | -4.2% | |
ネット | 8,588 | 9,344 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
58,385 | 59,158 | 1.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
56,909 | 56,742 | -0.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
1,476 | 2,416 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
10,276 | 10,381 | 1.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
10,220 | 13,232 | 29.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
56 | -2,851 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
74,280 | 79,329 | 6.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
48,333 | 40,700 | -15.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
25,947 | 38,629 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
26,371 | 26,377 | 0.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,783 | 17,033 | -4.2% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
8,588 | 9,344 | - |
release date 2021.05.17
米国でインフレ進行と金利上昇への警戒感が高まる中、多くの投資家がブレーク・イーブン・インフレ率【以下、BEIと称す】を注視している状況だ。BEIは市場参加者の期待インフレ率を示す指標の一つであり、物価連動国債の売買参加者が予測する年平均物価上昇率を指す。BEIは国債利回り(名目利回り)から物価連動国債利回り(実質利回り)を引いた数値であり、一般的な見方として、同指標がプラスであれば物価上昇を、マイナスであれば物価下落を予想していることになる。米国の5年物BEIが10日に2006年以来となる2.73%まで上昇していることに鑑みると、市場参加者の間で、物価上昇の先行き見通しが高まっているとうかがえる。新型コロナウイルスのワクチン接種進捗に伴う景気回復期待や大型経済対策に加え、堅調な商品市況などを背景に、期待インフレ率が高まっている状況だ。他方で、米連邦準備制度理事会(FRB)理事や連銀総裁は、「物価上昇は一時的」との見方を維持している。BEIの上昇の先にある早期のテーパリングの可能性を見据え、当局の発言や経済指標の良し悪しを注視する展開が続きそうだ。
作成日
:2021.05.17
最終更新
:2021.06.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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