作成日
:2020.04.22
2022.01.13 13:43
欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は4月17日、シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)【以下、MASと称す】と、欧州域内におけるシンガポールのベンチマークの活用に係る覚書(MoU)を締結したことを発表した。
両局は、シンガポールが規制する金融ベンチマークに関する情報共有と監督業務を推進する意向だ。欧州委員会(European Commission, EC)がシンガポールの金融ベンチマークの規制フレームワークに関して、EU金融ベンチマーク規則(EU Benchmarks Regulation)【以下、BMRと称す】で求められる同等性評価基準を満たしているとの認識を示したことを受け、ESMAとMASが覚書を締結した。今回の覚書と同等性評価に基づき、欧州を拠点とする金融機関は、シンガポール当局が規制するシンガポール銀行間取引金利(Singapore Interbank Offered Rate, SIBOR)とSingapore Dollar Swap Offer Rate(SOR)を参照レートとして継続的に用いることができるようになるという。
覚書の締結に際し、ESMAの局長であるSteven Maijoor氏とMASの金融監督部門を司る副局長のOng Chong Tee氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
MASとベンチマーク活用に係る覚書の最終化に漕ぎつけたことは、第三国ベンチマーク規制の構築に向けた大きな前進を意味します。世界中の規制当局が主要なグローバルベンチマークの正確性と信頼性の確保にコミットしており、今回の覚書の締結はこれらの目的達成を推進するものになるでしょう。
Steven Maijoor, chair of ESMA - ESMAより引用
今回の覚書の締結は、我々と欧州当局が緊密な協調体制を構築している証しであります。欧州で適用される規制などとの同等性が認められたことは、シンガポールの金融ベンチマーク分野における規制フレームワークの頑健性を示すものであります。これにより、双方の金融市場間のクロスボーダー取引が活発となり、両市場にメリットをもたらすでしょう。
Ong Chong Tee, Deputy Managing Director(Financial Supervision)of MAS - ESMAより引用
尚、足元の新型コロナウイルス(COVID-19)の動向を巡り、ESMAは空売り規制策を支持したほか、MASが為替介入データ公表を前倒しするなど、グローバル各国当局による金融システムの安定化に向けた動きが活発化している。そして今回、両局が金融ベンチマークに係る覚書を交わしたことで、より健全性の高い市場が形成されることを期待したい。
release date 2020.04.22
BMRは、欧州域内で利用されるベンチマークの正確性と信頼性を確保するための共通フレームワークのことである。2012年に発覚したロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の金利ベンチマークの不正操作問題を端として、2015年に策定された。これにより、欧州域内の金融機関がヘッジなどを行う場合、同規則に適合したベンチマークの使用が求められることになる。BMRはベンチマークの重要度に応じてクリティカルベンチマーク、重要ベンチマーク、非重要ベンチマークの3つに分類されており、ESMAが2020年の監督業務計画を公表した際には、同局がクリティカルベンチマークの監督者として新たな役割を担うことを示していた。また、ESMAはオーストラリア証券投資委員会(ASIC)とも同様の覚書を締結し、同国のベンチマークの活用を試みている状況だ。尚、第三国ベンチマークの利用に係る移行期間に関しては、当初2020年1月1日であったが、同年2月に、2021年12月末へと延期されている。正確性と信頼性のあるベンチマークの運用を目指し、今後もESMAとグローバル各国の協調体制の強化が進むことが予想される。
作成日
:2020.04.22
最終更新
:2022.01.13
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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