作成日
:2019.11.13
2021.08.31 15:29
インターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)【以下、ICEと称す】が手がける仮想通貨取引プラットフォームのBakktが、ビットコイン先物を提供開始したのに続き、2019年末までに現金決済のビットコイン(Bitcoin)先物のローンチを計画していることが明らかになった。
先日開催されたNYCカンファレンスで、BakktのCOOであるAdam White氏は同社が現金決済のビットコイン先物を提供するための準備を進めていることを公表した。ある情報筋によると、Bakktの新しいビットコイン先物はシンガポールのクリアリングハウスであるICE Clear Singaporeがクリアリング業務を担当し、ICE Futures Singaporeを通じて取引されるという。また、この商品はICE Clear U.S.を介しても取引可能なため、他の先物商品と変わらず、世界中のトレーダーが市場にアクセスできるようになるとのことだ。
現金決済のビットコイン先物に対する需要の高まりを受け、Bakktはこの商品のローンチに取り組んでおり、現在、シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore, MAS)の審議を待つ状況にあるという。現物決済のビットコイン先物を立ち上げるまでに、Bakktが1年以上の歳月を費やしたことを考えると、年内のローンチに間に合わない可能性もあるが、これが現実のものとなれば、競合のCMEと同じ決済方法の商品をラインナップに加えることになる。更にBakktはビットコインオプションを提供開始へ推し進めており、仮想通貨を対象としたデリバティブ商品の拡充を図っている。
これに加えてBakktはニューヨーク州金融サービス局(The New York State Department of Financial Services)の承認を得たことで、Bakkt Warehouseと呼ばれるカストディサービスを展開するに至っている。今までBakkt Warehouseの提供は同社のビットコイン先物を取引する顧客に限定されていたが、今回、全ての企業を対象とすることが可能になり、既にPantera CapitalやGalaxy Digital、Tagomiなどの企業がこのサービスを採用している状況だ。この機関投資家向けの試みとは別に、Bakktは仮想通貨決済アプリの立ち上げを計画し、個人投資家の仮想通貨利用を促進する動きに出ている。White氏は個人投資家の需要が仮想通貨市場を牽引していると言及し、このアプリが事業戦略的に重要であることを強調した。
今年9月末にBakktはビットコイン先物をリリースしたが、初日の取引量が28BTC相当に留まるなど、期待とは裏腹に低調なスタートを切った。ビットコイン価格のボラティリティ拡大による状況の変化もあり、Bakktは徐々に投資家の需要を取り込みつつあるが、これらの施策がどのように働くのか、今後も同社の動向に注目していきたい。
release date 2019.11.13
機関投資家の本格的な参入と共に、仮想通貨デリバティブ市場は拡大しており、先物やオプションなどの商品を取り扱う取引所も年々増加しているようだ。仮想通貨市場向けの情報サイトであるCoinGeckoによると、仮想通貨デリバティブの取引サービスを提供する取引所は2019年初旬時点で7社だけだったものの、9月末にはその数が17社まで増加したという。日本国内でもbitFlyerがビットコイン先物を展開しており、2020年の法改正で市場環境が整えば、更に多くの取引所が同様の取引サービスを開始する可能性がある。これに対して金融庁(Financial Services Agency)および自主規制団体である日本仮想通貨交換業協会(Japan Virtual Currency Exchange Association)は投資家を保護するためにレバレッジ規制を行うことを明示しているが、国内市場はどのような反応を見せるのか、今後もその展開を見守っていきたい。
作成日
:2019.11.13
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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