作成日
:2019.11.01
2021.08.31 15:29
大手仮想通貨取引所のBinance【以下、バイナンスと称す】は、中国市場向けのP2P取引でBNBをサポート開始したことに加え、同国での事業拡大を図るために、上海に続き北京に新しくオフィスを開設することが報道により明らかになった。
この新しいオフィスが正確にどのような機能を持って、いつ頃オープンするのかは明示されていないが、今回のバイナンスによる決定は習近平国家主席がブロックチェーンの採用を促す発言を行ったことに関係があるという。最近、バイナンスと中国政府の距離は急速に縮まっており、同社のCEOであるChangpeng Zhao氏はTwitter(ツイッター)上で中国人民銀行の仮想通貨分野での取り組みが仮想通貨市場全体に好影響を与えていると言及した。中国政府は国内での仮想通貨取引を禁止した際に、バイナンスのWebサイトへのアクセスをブロックしたが、その関係性は変化しつつあるようだ。
バイナンスは各国政府と協力し、ビーナス(Venus)と呼ばれるステーブルコインの立ち上げを試みていることを公言しており、同社の共同創設者兼CMO(Chief Marketing Officer)であるYi He氏は、この仮想通貨が政府の監視能力を強化するとアピールしている。昨年9月にバイナンスは中国の仮想通貨関連企業であるMars Financeに投資するなど、同国とのつながりを強めているが、中国政府がビーナスの採用に関して合意しているわけではない。その他にもバイナンスが中国市場向けにスタートしたP2P取引サービスの日間取引量が数百万ドルを超えたことが報告されているものの、Zhao氏は正式に発表されている以上の情報はないと、中国政府の関与を否定している状況だ。
先日、習近平国家主席がブロックチェーンに関する声明を出した直後、中国政府はそれを支持する新しい法律を可決し、いよいよ本格的に同技術の開発を加速させる動きを見せている。実際に元中国共産党の高官で金融経済委員会のディレクター代理を務めたHuang Qifan氏が、中国人民銀行が独自仮想通貨を発行する可能性を示唆した。また、民間では国内最大の自動車メーカーであるWanxiangが300億ドルを投じてブロックチェーンを基礎としたスマートシティ分野のソリューション開発に着手したことがわかっているという。既に中国では評価額が10億ドルを超える、いわゆるユニコーン企業と呼ばれる仮想通貨関連企業が多数存在するが、トップのBitmainは120億ドル以上の価値があるとされる。
現在、仮想通貨市場では中国政府とFacebook(フェイスブック)による覇権争いに注目が集まっているが、同国でのバイナンスの事業拡大がどのような影響を及ぼすのか、今後もその展開を見守っていきたい。
release date 2019.11.01
これまで仮想通貨市場に対する締め付けが続いていた中国だが、依然として業界での強い影響力を保持しており、例えばビットコイン(Bitcoin)におけるノードの約74%が同国内に集中しているという。それだけでなく、今でも多くの仮想通貨関連企業が研究開発に継続的に投資し、現在、225件ものブロックチェーンに関する特許が出願されている状況だ。更に中国人民銀行によるステーブルコイン開発が加速しつつあり、同行は分散型アプリケーション(dApp)向けのプラットフォームを構築するために、Nervosのブロックチェーンネットワークを活用することを決定した。この動きに欧米諸国は危機感を感じているようだが、Facebookのリブラ(Libra)を受け入れることもできずに足踏みする事態が続いている。FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏はこの世界中で激化するステーブルコインの開発競争で後手を取ることを案じているようだが、各国政府はこれをどのように見ているのか、今後も仮想通貨市場の動向に注目していきたい。
作成日
:2019.11.01
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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