作成日
:2019.10.30
2021.08.31 15:29
大手仮想通貨取引所のBinance【以下、バイナンスと称す】は、最近ローンチした中国市場向けのP2P(ピア・トゥー・ピア)取引プラットフォームにおける通貨ペアに、同社の独自仮想通貨であるバイナンスコイン(Binance Coin)【以下、BNBと称す】を追加したことを発表した。
このP2P取引サービスはバイナンスのモバイルアプリケーションを介して提供され、これまで仮想通貨と人民元の通貨ペアのみ取り扱い対象となっていたが、今回、これに新しくBNBが加えられるという。バイナンスは人民元とビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)、テザー(Tether)の通貨ペアを対象にサービスを開始し、既にサポートする通貨数を増やす方向に動き出しているようだ。今の所、バイナンスのP2P取引サービスはAndroidユーザーだけに提供されているものの、同取引所はiOSデバイスとWebブラウザーを通じて同様のサービスを展開できるよう開発を進めている状況だ。
中国政府は2017年後半に国内での仮想通貨取引を禁止し、バイナンスを含む主要な中央集権型の仮想通貨取引所を国外に追放しているが、多くの仮想通貨トレーダーは店頭取引(OTC)サービスやP2Pを利用して監視を逃れる形で取引を続けてきたという。そこに目をつけたバイナンスは中国市場向けに人民元を基軸通貨としたP2P取引サービスを立ち上げ、トレーダーへのインセンティブや取引の柔軟性、同社の収益などを考慮してBNBのサポートを開始するに至った。バイナンスが発行するBNBはその時価総額が32億ドルを超え、市場全体でもトップ10に入る人気仮想通貨であると同時に、同取引所での取引手数料の支払いやICO(イニシャルコインオファリング)への参加にも利用できるユーティリティトークンとしての側面を持ち合わせている。
今月半ば、バイナンスはSIXにETPを上場し、世界の金融市場での影響力を高める動きに出ているが、それに懸念を示すものも多く、同社に国内市場を荒らされた中国政府も黙っていないだろう。先日、中国人民銀行が独自仮想通貨発行の可能性があるとの報道もあっただけに、中国政府が仮想通貨に対する態度を軟化させるとの期待もあるが、今後も当局の動向には注目していきたい。
release date 2019.10.30
仮想通貨取引が禁止される以前、中国はビットコイン取引量で世界1位を誇るなど、巨大な仮想通貨需要を抱える市場として認識されており、バイナンスやOKEx、Huobi(フォビ)、KuCoinをはじめとする大手取引所が国内で事業を展開していた。このような経緯もあってか、バイナンスのCEOであるChangpeng Zhao氏の報告によると、同社のP2P取引サービスは既に1日平均200万ドルから300万ドルの取引高を記録しているという。ビットコインを対象に店頭取引サービスを提供するLocalbitcoinsの日間取引量が180万ドルだということを考えると、バイナンスの新しいプラットフォームは順調なスタートを切ったと言えるだろう。最近では習近平国家主席の発言を受けてビットコイン価格が2,500ドルの急騰を見せるなど、中国内での仮想通貨に対する注目が高まっているだけに、今後も同国でのバイナンスの躍進に期待したい。
作成日
:2019.10.30
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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