作成日
:2019.09.30
2021.08.31 15:29
世界最大のデリバティブ取引所であるシカゴ・マーカンタイル取引所を運営するCME Group Inc.(本社:20 South Wacker Drive Chicago, Illinois 60606 USA
)【以下、CMEと称す】は、来年の第1四半期から新たに仮想通貨オプションの取引サービスを開始することを今月20日に発表した。今年3月、競合のCboeが仮想通貨デリバティブ市場から撤退したのを機に、CMEはこの市場を独占し始めており、今回、仮想通貨オプションをローンチすることでそれがより確定的なものになりつつあるという。今年初めから続くビットコイン(Bitcoin)価格の上昇と共に、活発な動きを見せている仮想通貨デリバティブ市場では、BitMEXおよびCMEが提供する無期限のスワップや現金決済の先物が過去最高の取引高を記録したようだ。現在、OKExやBitMEX、Cryptofacilities、Bitfinex(ビットフィネックス)、バイナンスが仮想通貨先物を提供し、最近ではインターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)が手がける仮想通貨取引プラットフォームのBakktがビットコイン先物の提供を開始するなど、各社がCMEを追従する構えを見せている。
仮想通貨オプションに限って言えば、オランダのDeribitが取引高の95%を占め、絶対的なマーケットリーダーとしての優位性を保っている。しかしながら、CMEの仮想通貨オプションはDeribitが提供するビットコインおよびイーサリアム(Ethereum)の現物資産に連動した商品とは異なり、ビットコイン先物を原資産とするため、市場の需要が分散する可能性がある。これまでCMEは様々な市場に向けて先物オプションを提供しており、その日間取引量は上位10銘柄の合計だけでも10万件を超えるという。2017年にビットコイン先物の取り扱いを開始して以来、CMEはこの分野で前年比250%の成長を達成し、仮想通貨オプションでも同様の成功を収めることに期待が高まっている状況だ。
eribitのCOO(Chief Operating Officer)であるMarius Jansen氏は、CMEが仮想通貨オプションをローンチすることに対して次のようにコメントしている。
仮想通貨オプション市場に参入するというCMEの決定は、仮想通貨デリバティブ市場全体にとっても進歩であると同時に、様々なタイプの仮想通貨に対する金融商品の需要が高まっている証拠だとも言えるでしょう。既存の金融市場のように仮想通貨市場でも幅広い商品が利用可能となれば、流動性が高まり、更なる成長を促す要因となり得ます。我社は仮想通貨オプションの潜在的な需要が存在することを認識していましたが、CMEの発表がその正当性を物語っているようです。
Marius Jansen, COO of Deribit - Cryptoslateより引用
先日、ビットコイン価格が暴落し、8,000ドル付近の安値をつけるなど、仮想通貨市場はここ数ヶ月間で最大の転落に見舞われた。今のところ、ビットコインは1通貨あたり7,796ドルの安値で取引されているが、この弱気なトレンドが継続すれば61.8%および65%のフィボナッチ比率線を割って6,500ドルラインにまで下落する可能性もあるようだ。9月末にはBakktがビットコイン先物を提供するも価格は下落するなど期待外れの結果に終わったが、CMEの仮想通貨オプションの立ち上げは仮想通貨市場にどのような影響をもたらすのか、今後もその展開に注目していきたい。
release date 2019.09.30
CMEが提供するビットコイン先物と現物市場の間には相関性が確認されており、Arcane ResearchのアナリストであるBendik Norheim Schei氏は、月次の先物契約における決済日が近づくとビットコイン価格が一時的に下落する傾向があることを指摘している。また、これに関してFundstrat Global AdvisorsのThomas Lee氏も、1年以上前に決済日近くに大きな価格変動が発生する可能性が高いと言及した。実際に今回のSchei氏による報告でも、CMEのビットコイン先物が決済日を迎える直前までに、75%の確率でビットコイン価格が平均2.2%下落することが明らかになっているようだ。一部ではこれが、CMEが提供するビットコイン先物の決済日を狙った価格操作だと言われているが、この不透明な状況下で同社は仮想通貨オプションをローンチできるのか、今後も仮想通貨デリバティブ市場の動向を見守っていきたい。
作成日
:2019.09.30
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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