作成日
:2019.06.19
2021.08.31 15:26
今月18日、日本の消費者庁(Consumer Affairs Agency, CAA)は、仮想通貨取引に関する問い合わせが著しく増加していることを年次報告書の中で明らかにした。
報告書によると、ここ1年間で消費者庁に寄せられた仮想通貨に関する問い合わせは3,657件に達し、前年の2,166件からおよそ70%も増加しているという。その問い合わせの多くは、仮想通貨関連企業に騙された、または不当な扱いを受けたと訴えるものであり、中には仮想通貨取引所が突然閉鎖され、資金が戻ってこなかった例も含まれている。また、仮想通貨に関する情報を知りたいとの問い合わせも多く、仮想通貨取引所や仮想通貨関連企業は信頼に値するかどうかなど、消費者庁の回答が求められているようだ。
消費者庁が発行した報告書の内容は、各国の消費者保護機関や金融当局が公表した調査結果に同調するものとなった。先月にはフランス金融市場庁(Autorité des marches financiers)【以下、AMFと称す】が国内での仮想通貨に関する問い合わせが急増していることを発表し、AMFが公表した2018年度年次報告書では、2018年の問い合わせ件数は2016年の18件から2,600件にまで伸びている事実が伝えられた。加えてAMFは、仮想通貨がバイナリーオプションや外国為替取引などに代わって、詐欺的行為に利用されつつあることも示唆している。
金融庁の努力もあって、日本の仮想通貨市場では仮想通貨交換業者のライセンス制度が徹底され始めているが、仮想通貨を利用した個人レベルでの詐欺や犯罪には十分に対応できていない。現状では、消費者や投資家のリテラシー向上がトラブル回避の解決策になると考えられているが、今後は政府機関や関連企業、自主規制団体の貢献に期待したい。
release date 2019.06.19
消費者庁は2017年ごろから仮想通貨に関するトラブルへの注意喚起を促しており、その後も実際に発生した被害のケーススタディを定期的に公開するなど、消費者保護の観点から国内市場の健全化に努めている。昨年8月にも消費者庁は、毎月30万円分のビットコイン(Bitcoin)を受け取ることができるとの触れ込みでオートビットチャージという名称のアプリケーションとタブレット端末を合計30万円で販売していた企業の例をウェブサイトで報告している。その前年には、Clover Coin(クローバーコイン)と呼ばれる仮想通貨を販売して違法な連鎖販売取引(いわゆるねずみ講)に抵触した企業に3か月の業務停止命令を下したことを発表した。顕著化する仮想通貨関連のトラブルに対して、消費者庁はホットラインを設置し、疑わしい勧誘などは消費生活センターや警察に相談するようアドバイスしているが、どれほどの効果があるのか、次回の報告まで当局の働きに期待しながら状況を見守りたい。
作成日
:2019.06.19
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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