作成日
:2019.06.14
2021.08.31 15:26
ドイツ取引所の発表によると、傘下にある世界有数のデリバティブ取引所Eurex(本社:Mergenthalerallee 61 65760 Exchborn
)【以下、ユーレックス】が店頭デリバティブ取引の中央清算サービスとして提供するユーレックスOTCクリアに、英国拠点のグローバル投資銀行Barclays(本社:1 Churchill Place London E14 5HP )【以下、バークレイズと称す】が清算会員として加わったことが明らかとなった。
ユーレックスは2019年1月に、同社初となる米国人顧客を対象としたスワップ取引の清算処理を成功裏に完了させ、米国で清算取引ネットワークの拡充を図っている状況だ。そのような中、バークレイズがユーレックスOTCクリアに加入したことは、ユーレックスの米国における拡大戦略を後押しする形になることを意味するであろう。一方でバークレイズは、米商品先物取引委員会(Commodities and Futures Trading Commission)【以下、CFTCと称す】登録下の先物取次業者(Futures Commission Merchant)【以下、FCMと称す】として、ユーレックスの店頭デリバティブ取引清算サービスを提供する初の欧州銀行であり、既に最初の清算取引を完了させたとのことだ。
今回の事案に関し、ユーレックスのアメリカ市場債券セールスヘッドを務めるTim Gits氏とバークレイズのアメリカADS部門ヘッドであるStephen Li氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
バークレイズがユーレックスOTCクリアに加入したことは、米国での事業拡大を図る我が社にとって大きな前進であると共に、米国においてデリバティブ関連の清算業務に対し関心が高まっている証しでもあります。我が社が2018年後半にCFTCより認可を取得して以来、多くのFCM及び顧客から店頭デリバティブ清算サービスに対する非常に強い需要を確認しております。
Tim Gits, Head of Fixed Income Sales Americas at Eurex - Eurex Exchangeより引用
我々は米国においてユーレックスOTCクリアに加入したことを喜ばしく思っております。このことは、お客様にユーロ建て金利スワップ取引の清算に関して新たな選択肢を提供し、お客様のニーズを満たすオルタナティブ関連のリクイディティ・プールサービスを提供するという我が社のコミットメントも示しております。
Stephen Li, Head of ADS Americas of Barclays - Eurex Exchangeより引用
なお、2019年第1四半期には米国を拠点とするFCMとしてシティグループ(Citigroup)が、ユーレックスを通じた清算サービスの提供を開始した。加えて、スワップ執行ファシリティ(Swap Execution Facilities,電子取引基盤)であるブルームバーグ(Bloomberg)やトレードウェブ(Tradeweb)もユーレックスOTCクリアと連携し、ユーレックスへダイレクトにスワップ注文を流す体制を構築しており、米国におけるデリバティブ清算サービスに対する高い需要がうかがえる。そして今回、世界有数の投資銀行であるバークレイズがユーレックスOTCクリアに加入したことで、ユーレックスは更なる顧客取引の拡大が期待できるであろう。
release date 2019.06.14
バークレイズは1728年に創業した英国発祥の総合金融機関であり、銀行事業をメインに、証券事業、カード事業、保険業など幅広い事業を手がけている。英国を基盤としながら世界40か国以上の国々でグローバルに活躍しており、日本においてもバークレイズ証券、バークレイズ銀行東京支店、バークレイズ投信投資顧問として事業を展開する。2008年の世界金融危機にて破綻したリーマン・ブラザーズの北米事業を買収して以来、特に米国での事業を拡大させており、この度のユーレックスOTCへの参加によって、米国で需要の高まりつつあるOTCクリアリング事業をさらに強化していく意向のようだ。バークレイズは投資会社と共同でブロックチェーンスタートアップ企業を設立し、6億円超を調達するなど、先駆的なテクノロジーの開発にも熱心なことで知られ、同社の動向は常に市場から注目を集めている。ユーレックスとしてもこれまで基盤としてきた欧州市場の次なる市場として米国市場にて業績拡大を行う上で、バークレイズとの提携で得られるメリットは大きく、両社にとって非常に合理的な判断だと言えるであろう。業界をリードする両社の協働による今後のさらなる発展に期待したい。
作成日
:2019.06.14
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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