作成日
:2019.06.05
2022.01.27 13:26
オーストラリア証券投資委員会(本社:Level 5, 100 Market Street, Sydney, NSW 2000 Australia
)【以下、ASICと称す】の委員長を務めるCathie Armour氏は4日に行われた講演内で、同国のリテール金融業界向けの規制策に関する見解を示し、店頭デリバティブ取引市場を規制する模様であることが明らかになった。Armour氏は、欧州当局と同様にオーストラリアの個人投資家の損失割合を示し、同国のブローカーが提供するサービスを利用した35万人の個人投資家の内、バイナリーオプションとCFD、FX取引でそれぞれ80%、72%、63%が損失を計上したと指摘した。また、欧州や日本、北米、中国といった多くの規制当局が、個人投資家を対象とする、一定のOTCデリバティブ取引サービスの提供を禁止もしくは規制しているが、オーストラリアには同様の規制策がないことから、同国で規制上の裁定(regulatory arbitrage、規制逃れ)が生じるリスクも指摘している。更にArmour氏は、オーストラリアの金融サービスライセンスを保有するブローカーが海外顧客にサービスを提供する際、金融サービスライセンスの適用範囲や効果などに関して、顧客に誤解を与え、もしくは欺くような行為をしているとして懸念を示している。
ASICは従来から、特定の問題や課題を指摘した際には、その後厳格な規制を導入していることから、今回Armour氏が懸念を示した店頭デリバティブ取引に関しても、厳しい規制策を採用する可能性があるとみられている。なお、ASICはブローカーに取引データの提出を要請した他、国外在住の顧客に対するサービスを規制する意向である。これを受け既にIFGMが海外顧客口座を閉鎖し、Vantage FXも海外顧客へのサービスを停止するなど、ASICの規制動向がブローカー各社の経営に影響を及ぼし始めていることから、引き続きオーストラリア当局の今後の動向に注目が集まりそうだ。
release date 2019.06.05
ASICは伝統的に他の先進国の規制当局と比べ緩やかな規制ポリシーを布いており、ハイレバレッジ取引を求めるブローカーはASICライセンスの取得を選好してきた。店頭デリバティブ取引に関しても、これまで特段の規制策を設けておらず、ASICの緩やかな規制ポリシーの姿が見て取れる。最近では、2年ぶりにASICがFortradeにライセンスを発行したり、CySECが個人投資家向け新規制策の導入を検討していることが判明するなど、各規制当局の規制緩和への動きが見られ、緩やかな規制方針が継続されるとの楽観的な見方が行われてきた。しかしながら、今回の発表によると、今後ASICは店頭デリバティブ取引へ厳格な規制を採用する可能性が高いと見られており、統制下のブローカー各社は苦戦を強いられることとなりそうだ。各国の規制当局は規制内容を共有していく動きがあるが、今月に入り韓国FSCが店頭デリバティブ取引規制を緩和することを発表しており、今後各国規制当局の動きに注視していく必要があるだろう。
作成日
:2019.06.05
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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