作成日
:2019.05.22
2021.08.31 15:26
ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)からハードフォークしたビットコインSV(BSV/USD)は、同コミュニティを率いるCraig Wright氏が、ビットコイン(Bitcoin)のホワイトペーパーおよびソフトウェアの著作権登録を行なったことを背景に67%の価格上昇を見せた。
ビットコインSVを主導するWright氏は、以前から自身をビットコインの考案者であるサトシ・ナカモトだと称しているが、今回、その主張をより明確なものとするためにビットコインの技術に対する著作権登録を行なった模様だ。このニュースが伝えられた後、ビットコインSVの価格は、前日の60.71ドルから最大120%の高騰を記録し、一時的に139.31ドルにまで達した。その後、落ち着きを見せたビットコインSVは、40ドルほど価格を下げ、現在1通貨あたり101ドル程度で取引されている。
しかしながら、仮想通貨の専門家の中には、否定的な見解を示す者も存在し、仮想通貨メディアのCoincenterでディレクターを務めるJerry Brito氏は、これがWright氏による単なるアピールに過ぎないと言及している。米著作権局(US Copyright Office)への著作権登録は誰でも実施することが可能だが、当局が著作権の付与を認めるかは全くの別問題であり、実際にビットコインSVの著作権登録が受付られても、Wright氏がサトシ・ナカモトであるという主張が立証された訳ではない。米最高裁判所(US Supreme Court)は、著作権局に受け付けた申請に対して、きちんと審査を行うよう求めているが、未だその権限は執行されていないようだ。
仮想通貨コミュニティは、これまでWright氏がビットコインの考案者である決定的な証拠を示せていないこともあり、皮肉を込めて「詐欺師」や「Faketoshi(偽サトシ)」といった蔑称で呼ぶなど、同氏の言動を冷ややかな態度で見守っていることが伺える。それでもWright氏は、自身がサトシ・ナカモトであることを主張し続けているが、そのことをどのように証明するのか、今後も同氏の動きには注目していきたい。
release date 2019.05.22
Wright氏は、ビットコインキャッシュのコミュニティに対する絶大な影響力を持っており、ビットコインキャッシュが分裂するきっかけとなった昨年のハッシュ戦争では、ビットコインSV陣営の中心的な存在として活躍した人物だ。しかしながら、一方では、オーストラリア政府の減税制度を不正に利用するために、ビットコイン信託を立ち上げたことを捏造し、当局に約500万ドルの罰金を支払うよう命じられるなど、信用問題に関わるような重大な事件も度々起こしているため、2017年ごろからその求心力を失いつつあるという。加えて、ブログ投稿や第三者が公開した論文を盗用したことも、幾度となく報告されており、これらの行動がサトシ・ナカモトであることを否定する議論を巻き起こす原因になっているようだ。直近ではビットコインのパニックセールが発生していた中で、今回のビットコインSVにおける価格高騰は、投資家にとっては喜ばしい出来事となったが、Wright氏の言動に左右される側面が多分にあり、今後も注視が必要だと言えるだろう。
作成日
:2019.05.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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