作成日
:2019.05.10
2021.08.31 15:26
大手仮想通貨取引所のBinance【以下、バイナンスと称す】で先日発生したハッキング事件によって盗難された4,000万ドル相当の7,074BTCが、計7つのウォレットアドレスに送金されていることが明らかになった。
調査によると、犯人のハッカーは、バイナンスのホットウォレットから盗んだビットコインを44回に分けて2つのアドレスに送金しており、現在、それらのビットコインは、6つのウォレットにそれぞれ1,060.6BTCずつ保管され、残りの707.1BTCは、また別のウォレットの中にあるということが判明している。現在、バイナンスは、ハッカーが、API(Application Protocol Interface)キーや二段階認証コード、その他の情報を利用した可能性があるとして、システムやデータの検証を進めているという。
今回のバイナンスにおける大規模なハッキング被害は、歴代で6番目の被害規模となったが、同取引所は、事件の解決に向けて、仮想通貨コミュニティや他の取引所から、積極的な支援を受けているようだ。例えば、大手取引所のコインベースは、犯行に利用されたウォレットアドレスをブラックリストに登録し、犯人がビットコインを現金化できないよう処置を講じている。また、中国の起業家で仮想通貨トロン(Tron)の創設者でもあるJustin Sun氏は、7,000BTC相当のテザー(Tether)をバイナンスの口座に入金し、同社の事業を支援する意思があることを表明した。
ハッキングが発覚した数時間後、Twitter上では、バイナンスのCEOであるChangpeng Zhao氏とビットコイン開発者のJeremy Rubin氏が、この不正送金を無効にするために、ビットコインをロールバックすることを検討しているとの憶測が飛び交った。先日、Zhao氏は、ロールバックの可能性を否定しているが、引き続き、バイナンスの動向に期待しつつ見守って行きたい。
release date 2019.05.10
これまで、多くの仮想通貨取引所が、ハッキング被害に悩まされてきたが、トラッキングの難しさや匿名性、犯行の素早さなどが要因となり、完全に事件が解決することは、非常に稀な出来事だと言われている。過去には、ブルガリア警察が、約6億円相当の仮想通貨を盗んだ犯人を逮捕した例や、米国のカリフォルニア州でSIMスワップ(携帯電話番号を詐称して取得する手法)を用いたハッカーが捕まった例なども報告されているが、どれも個人的で小規模な案件ばかりだ。対照的に投資家の資金が集まる取引所やマイニング企業は、世界中のハッカーから標的とされており、その手口も巧妙化していることから、警察や捜査機関が犯人の手がかりを掴むことすら難しくなっているという。加えて、取引所の従業員や経営者など、内部の人間による犯行が原因となるケースも存在するため、被害者となる取引所側が、積極的な解決を望んでいない場合もある。その点、バイナンスは、盗難による損失を自己資金で補填することを決めており、解決に尽力することが予想されるが、どのようなアプローチで捜査を進めるのか、業界からの注目を集めていると言えよう。
作成日
:2019.05.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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